第6話涙


「どうして死んじゃったの!! 私の心の支えだったのに! 」

「美人薄命でもひどすぎるよ!! 」

「可哀そう!!! 」


大勢のファンが葬儀場の前から離れなかった。

ダイエットの美女の急死は連日のニュースになり、死因はダイエットのため、過密なスケジュール等いろいろと言われたが、最終的には


「一年での急激な体重減少、そして急な芸能界入り、そこから下済みなく売れっ子ですから、精神的にも休むことができなかったのでしょう、過労死に近いです」

という見解になった。


「安らかに!!! 」

「ありがとう!! 」

出棺の時の若い子たちの涙と優しい言葉を聞きながら、それを遠くで二人の警官が見ていた。



「真実は明かさない方が良いとは、まあ半分以上は賛成だね」

「そうですね、でもまあ、覚せい剤に近いものと彼女はどこで気が付いたんでしょうか? 」

「あの体重計の会社には監視カメラもあろうはずもないからね、彼らの証言をそのまま信じるとすれば「あの体重計には小さな針があるのは気が付いていた、それが禁止薬物なのだとも。もちろん絶対に口外などはしない、あなた方が私の将来に投資してくだされば」と言ったそうだ」


「まあ・・・賢い子ですかね・・・」


「麻薬はダイエット効果や、覚醒の効果もあるからね。頭の回転が良くなったんだろう」


「中毒まではいっていないようですね」


「ああ、それは違うようだ。血液内には麻薬はもう残っていない。だが否定もできない、突然死の引き金にも麻薬はなるのだから。

確かにすべてが急すぎたんだよ。楽な道を選び、悪い人間に自分を支えてもらった人生は、どのみち長くは続かなかったさ。美人薄命、この事はケネディ暗殺事件のように公表に時間をかけた方が利口だ」


「体重計の会社の家宅捜索は終わっているんでしょ」


「ああ、しかしこれからが本番だ、さあ行こうか。まあ彼女の死で悪いが多くの人の命が救えたのも確かだ。モンローでもそうできなかったのかもしれないな」


「映画に救われた人はいるかもしれませんね」


「それはそうだ、我々も冥福を祈ろうか」


頭を下げ警官たちは仕事に向かった。




霊柩車には、棺の中美しく化粧された彼女が、花とともに乗っている。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

小恐怖 レンタル体重計 @nakamichiko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ