小説においてミステリの立ち位置はかなり特殊で、ミステリの根幹は何よりもその事件もしくはトリック――つまりは読者に提示する謎の部分にあると思う。
通常の短編小説であれば文章や話の作りやキャラクタの心情の機微などフォーカスして作ることができるが、殊、ミステリに関してはそれ以前に謎を作り上げてそれがメインにならなければならない。
そして謎の提示とヒントの提示、そしてそれらの解決編までをすべて行うとなると、短編小説だとかなり難しいことになるのは想像に難くない。
出題が短くなれば自然と大事な謎の部分が薄くなってしまう。なので短編小説だと難問なのに気づけば短手数で解けてしまう魔法のような読者への詐欺行為が必要なのである。
本作は文章も話の雰囲気もしっかりとミステリをしているので長編、もしくは魔法のような詐欺短編を期待しています。