第22話

 息を切らしながらレオルスは走り続ける。

 錬金工房から魔法騎士団の本部までの道。もう何度も通ったことがある道だ。最初、この道を歩くときは足取りも気持ちも重かった。これから自分が行うことへの拒否感と罪悪感。それらに苛まれながら進むこの道はとても苦痛だった。だが、今は違うと断言できる。

「待ってろ、リアナ」

 やっと己の目指すべき正義を見つけることができたような気分だった。吹っ切れて足取りも軽い。

 これから自分が行うことは正真正銘の背反行為だ。魔法騎士でありながら魔法騎士団に背くということの意味は重々理解している。士官学校を首席で卒業した功績も亡き両親に魔法騎士になると誓ったことも無意味なものになってしまうかもしれない。そうなるとしても、護るべき『正義』をやっと見つけたのだ。リアナを救うことができるのなら、どのような結果になろうとも後悔はない。

 ふと腰に携えた剣の鞘に触れる。その鞘に収まっているのは偉大な魔法騎士だった父親から譲り受けた形見の剣。この剣だってきっと己の正義を曲げるような奴に使われたくはないはずだ。

「今行くからな!」

 陽が沈んで徐々に夜の帳が街に降りてくる。静けさを帯び始めた夜の街をレオルスは疾走していく。

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