第14話
門に手をかけたあと、しばらく不自然に止まっていたレオルスをグラエムはデスク傍の窓から訝しむように見ていた。
「こちらが先日分の報告書です」
グラエムの部下のひとりである魔法騎士がレオルスが提出した報告書を差し出す。それらを受け取ってグラエムは目を通す。徐々に不機嫌になっていくのが見て取れた。その様に部下は戦々恐々とする。
「やはり、あいつではダメだな。こっちは一日でも早く潰したいというのに」
報告書を乱暴に机の上に放り出す。数枚が机の縁のぎりぎりで止まった。不機嫌そうにしきりに人差し指で机を小突く。
「やはり潰すというのには無理があるのでは……」
恐る恐る部下は進言する。
「そんなもの、適当にでっち上げればいいだけだろう。後ろ盾もなにもない店だ。所詮は小さいコミュニティによって成り立っているにすぎん。ほんの少しの綻びさえあれば、あっという間に瓦解するというのに、なにを悠長に……」
思いどおりにいかないことへグラエムは苛立ちを募らせる。王都の魔法騎士団からの対応も最近は思わしくない。事実、目立った成果を上げられていない。ここままいけば、今の地位も危うくなる。斯くなる上は――。
「例の物の開発は順調のはずだったな?」
「は、はい……。完成間近かと」
凄みを利かせながら問うグラエムに部下は小さい声で答える。
「ならば完成次第、街に散布できるよう準備しておけ」
こともなげに言うグラエムに部下は瞠目した。
「さ、散布というのは」
「言葉どおりの意味だ。本当はこちらの手を汚したくはなかったのだがな。致し方あるまい」
部下の懸念を無視してグラエムは執務室を出ていく。
「し、しかしそれでは市民に危険が!」
部下の市民を思った必死の問いかけにグラエムは答えなかった。部下を置き去りにしてグラエムは進む。
「なにを迷っているのか知らんが、あの娘を庇い立てするというのなら、その関係を利用させてもらうぞ」
わずかに口角を上げる。そこには市民を気遣う気持ちはまるでなく、ただ己の保身に走る男の姿があった。
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