第4話

 魔法騎士団レクツェイア支部の執務室に月明かりが差し込んでいた。

 そこで執務に耽っているのは軍服姿の男――グラエムだ。すでに陽が落ちて、夜も更けているというのに筆を走らせる勢いは昼間と全く変わっていない。歳を老いても衰えない体力と精神こそが彼が魔法騎士団レクツェイア支部の騎士団長を務めることができている所以だ。

――コンコン。

 扉が二回ノックされる。

「入れ」

 無愛想にそう言ってグラエムは入室を許可する。

 扉を開けて入ってきたのはグラエムの部下のひとりだ。

「例の物は順調か?」

 もはや説明不要というように端的に求める答えだけを訊く。

 部下はこくりとうなずいた。

「あの若僧では少々心もとないからな。いざというときのために開発を続けておけ」

 部下はもう一度だけうなずいて、執務室を出ていった。

 グラエムは不意に立ち上がって窓際へ寄る。

「私にあれを使わせないよう、くれぐれも頼むよ……レオルス」

 窓越しに月を見ながら、グラエムは不敵に笑った。

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