第22話 冒険はまだ、はじまったばかり
蔵馬は赤羽の雷の術の前に破れた。『ペガサス』のビル内で10人を殺害した彼は8月中に残り5人始末する必要があった。
赤羽は冥界で手に入れたゲーム、『resuscitation』で遊んだ。ゲームのタイトルは日本語に訳すと『蘇生』だ。このゲームはファミコンに対応してる。
クラマ・ケイゾウってキャラを操ることにした。時間をかなり費やし、ボスキャラと戦うことになった。🐳
パイロキネシスでクジラを倒し、ゲームをクリアすると蔵馬敬三が蘇ってしまった。
📱♪♪♪
赤羽はスマホに出た。
MUGENに潜伏してる派遣社員、小曽根桜からだった。
《『ネメシス』が完成したよん♪》
『ネメシス』はタイムマシンだ。輸送用ヘリコプター、チヌークを原型に開発された。
8月25日、赤羽は部下を連れてつくば学園都市にやって来た。『ネメシス』はヘリポートに停泊していた。諸岡久蔵って博士は生かしておくことにした。他の研究員は手榴弾や拳銃で次々に殺した。
社長の長良も血まみれになって死んだ。
諸岡はヘリの動かし方を教えてくれた。
「アンタのことはモロキューって呼ぶことにしよう」
赤羽がジョークを飛ばすと、小曽根桜は「ビールが飲みたくなってきた」とコミカルに笑った。コックピットに乗り込んだ赤羽は、パネルに《15820825》と入力し、レバーを動かして『ネメシス』を動かした。ジャイロ音がバララララ!としてる。離陸するとともに時空の彼方へと消えた。
1582年8月25日
坂本城下を散策していた僕と七瀬杏は、貫禄のある男に遭遇した。
「貴様、光秀の手下の者だな!?」
この感じからすると羽柴秀吉の配下か?
男は何やら呪文を唱えた。🔥
火の玉が出現し、やがてそいつは怪物に変化した。
妖怪に詳しい僕はそいつが箕火ではないか?と直感的に思った。
旧暦五月の梅雨の夜などに、琵琶湖を人の乗った舟が渡ると、その者が雨具として身に着けている蓑に点々と、まるでホタルの光のように火の玉が現れる。蓑をすみやかに脱ぎ捨てれば蓑火も消えてしまうが、うかつに手で払いのけようとすれば、どんどん数を増し、星のまたたきのようにキラキラと光る。
琵琶湖で水死した人間の怨霊が姿を変えたものともいわれる。
「キャッ!松本君、助けて!」
巨大化って異術を仕えるのに杏はガタガタ震えてる?
僕は呪文を唱えて吹雪を起こした。
「なっ、何奴!?」
吹雪によって箕火は消えてしまった。
「お主こそ、何者だ!?」
僕は吠えた。
「儂は太田牛一、長秀殿がどこにおるか知らないか?」
丹羽長秀のことらしい。豪快な柴田勝家とは相対する、怜悧な策士だ。
「さぁな?神隠しにでもあったのか?」
「くだらぬことを抜かすな!」
今にも斬りかかってきそうな気迫に僕は気圧された。
バララララ!ヘリの羽音が聞こえた。僕は一瞬、空耳かと思った。この時代には存在しないものだ。琵琶湖の上空に黒い機体が現れ、牛一は腰を抜かした。
「なっ、なんじゃ!?ありゃあ!」
坂本城の天守閣から光秀は異形のものを眺めていた。
「殿、窓からお離れなさいませ!」
斎藤利三が叫んだ。
「利三、確かめて参れ!」
「ハハァッ!」
438年前にやって来た赤羽は興奮のあまりに発狂しそうだった。
「五藤さん、我らの力見せつけてやりましょう!」
派遣仲間の須賀陽一が腹の底から声を出した。彼の正体は羽柴秀吉だ。
『ネメシス』の中には他に、小曽根桜や諸岡久蔵、さらに派遣社員の岡田健太郎や渡部友人が同乗していた。岡田の正体は丹羽長秀、渡部の正体は前田利家だ。さらに、自衛隊OBが数人乗っていた。
黒い機体が小高い丘へと着陸した。
井村大志は海老原涼子に銃口を向けていた。可憐な彼女は、この国の主・黒木剛志の娘だ。黒木は派遣社員をまるで殺戮兵器みたいに変えたが、黒木は井村に操られていた。
『俺たちに歯向かえば娘の命はない』
悲惨過ぎるビデオメッセージを見た黒木は、悪魔へと変貌した。
政界には他にも身近な人間を人質に取られてる者がたくさんいた。日本は滅亡へのカウントダウンを刻み始めていた。
僕は斎藤利三の隊に編成され、小高い丘に向かった。櫓が組まれている。
ヘリコプターがホバリングしてる。
自衛隊OBの北村拓哉、中西正広、草山剛の3人がラペリングを開始する。他のメンバーはそんな神業出来ない。
『上空にいた方が安全だ』
それが須賀(秀吉)の見解だ。
『ネメシス』を破壊されたら向こうの世界に戻れない。赤羽にも大切な人たちがいる。鉄砲とライフルじゃ勝ち目はない。
ダダダダダッ!ライフルが火を吹いた。
光秀の重臣、溝尾茂朝が絶命した。
「溝尾ッ!」
斎藤利三が絶叫した。
溝尾茂朝は、『細川家記』の永禄11年(1568年)7月10日条に、明智光秀が足利義昭と織田信長を仲介する際の光秀の家人「溝尾庄兵衛」として史料に初めて登場する。
天正元年(1573年)、朝倉氏滅亡後の8月から9月まで明智光秀と羽柴秀吉と滝川一益が越前国の占領行政を担当していたが、9月末から「三沢小兵衛秀次」、羽柴家臣・木下祐久、滝川家臣・津田元嘉の3人がそれぞれ代官として引き継ぎ、越前国北ノ庄の朝倉土佐守の旧館で業務をして「北庄ノ奉行信長殿御内三人衆」(『朝倉始末記』)と呼ばれ、10月1日には称名寺に領地の安堵状を出している(称名寺文書)。当時、越前の守護代には桂田長俊が任じられていたが、越前の政務の実態は信長の朱印状に基づいて北ノ庄の3人の代官が政務を執行しており、寺領の安堵や年貢・諸公事を収納する事の認可を3代官の連署で許可していたりと、越前支配の実権は3代官が掌握していた。
天正2年(1574年)1月19日に富田長繁率いる越前一向一揆が起こり守護代・桂田長俊を殺し、次に一揆勢は21日に3人衆を攻めたが、安居景健と朝倉景胤の仲裁で、逃れて京都へ戻る。
天正3年(1575年)からの光秀の丹波攻めに従軍する。天正4年(1576年)2月に丹波攻めの途中で国人の中台、曽根の2名に重臣「三沢惣兵衛尉秀儀」として「万雑公事」を免除している。天正7年(1579年)4月の光秀書状には「小兵衛」を「明智」としており明智の名字を使用していた(和田弥十郎宛光秀書状「下条文書」)。 天正10年(1582年)5月には、接待役となった光秀に従って徳川家康の接待の指揮に参加したと言われる。
以上のように朝倉氏滅亡後に越前の代官となった「三沢秀次」や、丹波統治時代に光秀書状に添え状を出している「三沢秀儀」は溝尾と同一人物と推測され、明智家中の政務に大きく関与していたと思われる。
天正10年(1582年)、池田家本『信長公記』において本能寺の変前の重臣合議の場に明智秀満、明智光忠、斎藤利三、藤田行政と共に参加しており信長を討つことを賛成した。なお、他の自筆『信長公記』では他4重臣のみで池田家本では太田牛一の自筆で「三沢昌兵衛」が加筆挿入されている。
本能寺の変後の山崎の戦いに参加したが、敗れて光秀と坂本城へ落ち延びようする。しかし、光秀が落ち武者狩りの百姓によって致命傷を負わされると、光秀の命令で介錯を務めた。そして光秀の首を持ち帰ろうとしたが、再び落ち武者狩りに見つかり首を竹藪の溝に隠すと坂本城へ落ち城で自害した。またその場で自害して果てたとも言われる。享年45歳。
また、歴史が変わってしまった。僕はこのまま、この時代から出られないんじゃないのか!?あのヘリは単なるヘリじゃない!?タイムマシン!?あれを奪うことが出来れば!?故郷に帰りたかった。みんなに会いたい!
僕は天変地異を起こした。暗雲が立ち込めて、稲妻が落ちてきた。視界がメチャクチャ悪くなり、ヘリはどこかへ消えてしまった。
「五藤の奴!あとで覚えていやがれ!」
草山が怒りに震えた。
雨がザッザッ!と降ってくる。
『ネメシス』の中で羽柴秀吉は桶狭間の戦いを思い出していた。あのときも凄い雨だった。あれが信長殿の家臣としての最初の戦いだった。
まさか、あの光秀が信長殿を殺すなんてな?ん?コイツで本能寺の変の前に戻れないのか!?イヤ!コレはチャンスだ!チャンスって言葉をアッチの世界の人間はよく使っていたな?光秀を討てば、信長殿の後釜はこの儂じゃ!
「みんな死んでしまえー!」
中西は人を殺したいと子供の頃から思っていた。自衛官になったのはその為だ。だが、現実は上官から殴られ、泥にまみれゴミみたいな生活だった。だから逃げ出して派遣社員になった。
五藤たちとは食品会社『レッドクロウ』で知り合った。五藤は正社員の知久から毎回怒鳴られていた。工業用水で深緑に変色した人造湖から知久のバラバラ死体が浮かび上がったとき、『知久の鬼畜め、やっと死んだか!キャハハハッ!』と笑っていたが、あれをやったのは間違いなく五藤だ。
中西は新式小銃『HOWA5.56』を、北村は新式拳銃『SFP9』で明智勢を次々に蹴散らしていった。
藤田行政が死んだ。明智五宿老の1人だ。通称は伝五郎または伝五。
「戦国時代の奴らって大したことねぇな?ヒャハハハッ!」
中西は高らかに笑った。
「お市の方って美人なのかな!?」
北村が言った。
「勝家の奥さんだよな?そして信長の妹」
中西はお市を人質に取ることを考えていた。そーすりゃ、柴田勝家を攻略できるかもしれない。
「お市ってオッパイでけーのかな?どう思う?」
北村は鼻血をビュッ!と出した。
マンガみたいなキャラだな?と、中西は苦笑した。
僕は最近、夢の中でナナセがゾンビに食い殺される夢を見た。七瀬は喜多嶋ほどではなかったが、美人だ。彼女が坂本城を巨大化すれば、未来から来たあの3人衆など赤子をひねるようなものだ。
バババババッ!!バスンッ!バスンッ!
銃声が響き渡る。
そろそろ無限銃を使うか?メチャクチャ怖かった。今までの敵が虫ケラに思えるほどだ。
こっちの世界にやって来た頃、内藤が言っていたな?
『おまえ、戦国の時代の人間じゃないもんな?こっちの世界の人間なら誰を殺してもいいらしいぜ?』
あの3人衆を倒すことは出来ない!?
だが、奴らは確実にこっちに近づいている。
朧雲から日の光が差し込んでいた。
魔法が溶けてしまう。麻酔銃とかないのかな!?だが、探しているような時間はない。
「こんなところにいたのか?」
茂みの奥から聞き覚えのある声がした。
牛一!?泣きっ面に蜂とはまさにこのことだ。
「今はアンタの相手なんかしてらんねー」
🔥火の玉が現れた!火の玉は美女に姿を変えた。その美しさは到底この世の者とは思えないほどだ。美女はどことなく七瀬に似ていた。絹の布で包まれた箱を差し出して「橋の袂にいる女の人にこれを渡して」と頼んできた。あの夢は正夢になってしまった。
僕が箱を受け取ると「絶対に中を見ないで」と美女は念を押してきた。
僕は銃声に怯えながらも橋を渡って行くと、その言葉通りに橋の袂に別の女性がいた。頼まれた通り箱を渡し、何事も起きずに済むのだが、言いつけに背いてある者が渡された箱の中を覗いてみたところ、その中には人間からえぐり取られた目玉が大量に入っていたという。
箱を開けた者は高熱を出すなど原因不明の病気にかかり、やがては命を落としてしまう。そしてその死体からは、なぜか目玉が消えているという。
「ふん、運のいい奴じゃ」
牛一はニヒルに笑った。
ヘリの中では須賀たちが正体を明かし、赤羽は肝を抜かした。
秀吉が🐵、利家は幼名は犬千代なので🐶、丹羽は鶏🐔……まるで桃太郎だ。
🌈
琵琶湖の水面に美しい虹が出ていた。
僕は思わず見とれていた。何かいいことが起きそうな予感がする。
「おい……」
背後に牛一が立っていた。
「また、邪魔するのか?」
「儂と手を組まんか?」
「僕を嵌める気か?」
「お主とならどんな困難も乗り越えていける気がする」
秀吉を倒して、喜多嶋杏を取り戻す。そしたら彼女と結婚して、幸せな人生を送るんだ。その為には多少の犠牲はやむを得ない。
「信じていいんだな?」
「あぁ、松本一……儂たちの時代を築こうではないか?」
太陽が赤赤と燃えていた。
杏、待ってろよ?僕が、君を暗闇から解放してやる!
インソムニアキル〜電脳編〜 鷹山トシキ @1982
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