勇者償還に、巻き込まれた真面目でラッキーだけが取り柄の少年。
与えられたスキルは平凡な「収納師」のみ。
しかし、最難関のダンジョンで、ラッキーと気楽に使ったスキルで偶 然にもダンジョンマスターとなってしまった翔太。
そこから、ダンジョン.コアの守護者マキナドール「アスカ」と冒険の旅へと急展開を見せる。
日常で、起こる何気ない楽しさを回りの人々と分かち合い、共に楽しんでいる。
溺愛するシャーリーちゃんの笑顔を見ることが、ドラゴンの盗伐、エリクシールの開発、王宮や人々の賛辞勲章よりも遥かに高い価値があることを知っている。
物語の冒頭では、転移ものファンタジーによくある派手な戦闘描写や血なまぐさい情景などが適度に省かれているのも特徴的だ。
極端な胸躍る「シーン」、激しさを横において物語は淡々と進んでいく。
後半、しかし楽しかった二人を取り巻く環境にも戦争の影が。
大切な人々を守る為、ショウタも立ち上がる。
収納師の技でキテレツな闘いもひろうしてくれる。
収納師が「無敵」今までにいなかった新しいヒーローの誕生だ。
ところどころに隠されたような 「お笑いポイント」 これを見つけた時に読者は、ダンジョンの中で隠された、「宝箱」にでも出会ったような気持ちでクスリと密やかな笑いを得られるだろう。
マキナドール「アスカ」もだんだんと人間的「味」を見せてくる。
スローに展開していく物語も主人公と共に周りも成長と変化を見せてくる。
読者の「シャーリーちゃん」押しのこの物語がハッピーな展開で進んでいくことを楽しみで目が離せない。
一般的に異世界転生物の主人公の周りには、沢山の女性キャラクターが
登場する。それは決して悪い事ではないのだが、やたら主人公を盲目的に
愛するキャラ達、俺TUEEE!!する主人公に対して過剰に賛美しベタベタ
するキャラ達で満ちる、いわゆる「チーレム」になる作品が多い。
それらは、リアルの人間の感情や異性関係の構築プロセスを無視するかの
様な、それこそありえないような展開が多く、そんな作品に当たると読者
として「もうお腹一杯」で読む気持ちが徐々に萎えてゆき、途中で
作品フォローを外す事がままある。
そんな中、この作品は、主人公ショウタに寄りそう女性をアスカ一人に絞り、
尚且つ、安易な恋愛感情やベタベタをさせる事なく、「主従」としての関係
を維持させており、話が進むにつれて増えてゆく女性との出会いや絡みも
安易なラブコメ展開にしてはいない。
あくまでもリアルな人間関係をベースにしたやり取りや絡みにしており、
逆にそれが多くの作品群の中で新鮮に映る。そこがこの作品のオリジナリティ
であり、レビューを書きたくなった理由だ。