第211話 リバーシ再戦?
「お待たせしました」
木製のティーカップと皿を人数分
上甲板のキャビンスペースは、下の第二甲板のキャビンスペースと比べだいぶ狭いので、キッチンは下の第二甲板のキャビンスペースに作ったのだが、物を持っての階段の上り下りは少し危険だ。俺が収納で運ぶのなら何も問題ないが、なにか出前用の箱のような物か、台所からそういったものを直接上げ下げできる仕組みがあれば便利だ。あとでアスカに検討してもらおう。
みんなにお茶が回ったところで、ソフィアがアスカのいるブリッジにお茶を1セット運ぼうとしたので、それをとめて、俺がアスカのところに持っていくことにした。まあ、お茶の入ったカップと受け皿を収納してしまうだけなので、大した手間ではない。みんなもいつも見慣れている光景なので驚きはしない。
階段を上ってブリッジに入り、
「はい、アスカ。お茶を持ってきた」
そういって、手のひらに取り出したお茶の入ったティーカップを受け皿ごとアスカに渡した。
「ありがとうございます」
アスカに先ほどのキッチンの件を伝えたら、
「そうですね、上甲板の居間にしているキャビンの床をくり抜いて、キッチンに繋げてしまいましょう。そこに木で作ったレールを上から下に固定して、
「さすがはアスカだな。それでどう? 雨の具合は?」
「なかなか
「しかたないな。最悪、4、5時間
「みんなは、リバーシを始めたようですが、マスターはリバーシはしなくていいんですか?」
「誰かさんのせいで、軽いトラウマがあるからな」
「トラウマを
「勝つといっても、アスカには勝てないだろ」
「それは、当然です」
さいですか。きっぱり、ばっさり言われちゃったよ。そうさ、俺はパーフェクト負けの男だよ。
「それじゃあ、トラウマが克服できないじゃないか」
「とりあえず、前回トーナメントに参加していなくて実力の分からないソフィアと対戦してみてはどうです? おそらく姉のミラよりは弱そうですから」
「弱いところから少しず上を目指していくわけだな。うーん、ちょっと
「強きにおもねり、弱きを攻める。これぞ、
「基本かどうかは分からないが、
「マスターがリバーシで勝とうが負けようが誰も気にしませんから大丈夫です。リバーシが弱いのは、もはやマスターのアイデンティーですから」
えらい言われようだ。しかしこれも、アスカの愛のムチに違いない。とでも思っておこう。
確かに、前回アスカとリバーシで対戦した時、相手の実力など何も考えず、
俺はアスカのいるブリッジを後にして、みんなのいる上甲板のキャビンに
キャビンの窓の外は相変わらずの雨で
アスカの言っていた『ソフィア弱い?説』を確かめるべく、姉のミラと対戦中のソフィアの後ろに回り、ゲームを観察してみる。
おっ。アスカのいう通り、ソフィアはあまり強くないのかもしれない。これなら俺でもいけるか?
ソフィア、そこに打っちゃだめだ! あ、やっちゃった。……あれ? 結局そこでよかったのか?
またっ! あれれ、なかなかいい手だな。
……、あー。30対34か。ぎりぎり惜しい。
全然ソフィア弱くないじゃないか。ちょっと、ソフィアとの対戦は厳しそうだ。
「ショウタさま、ソフィアと対戦しませんか?」。ミラに勧められてしまった。
「いや、俺はいいから、みんなで楽しんでくれ」。フー。
今はまだ勝てそうにない。今はな!
俺の対戦候補はやはり
どれどれ、ラッティーは前回優勝者のヨシュアと対戦中だな。
あれ、いい線行ってるんじゃないか? まあ、最後には大きくヨシュアが勝ってしまうんだろうが、ヨシュアが
ラッティー、そこ置いちゃダメだ。ほらな。今度はそこ?
……、あれ? ヨシュアが打てる場所が無くなっちゃった? ラッティーが前回優勝者のヨシュアに勝っちゃったよ。それも大差で。
やっぱり俺は、アスカと
「マスター、試合をしなかったようですがいかがしました?」
「誰が相手でも勝てる気がしない。こっちに転進して来た」
「そうでしたか。まあ、リバーシがどれほど
普通は、どれほど
「もちろん弱いことが悪いわけではありませんから」
悪くはなかったようだ。
[あとがき]
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