第3話

竜王国ドラグナルクの北西部緑の領。

自然豊かで、野生の竜たちが多く飛び交う。

しかしそこには、ドラグナルク最大の森アローンがあり、ドラグナルクにおける最も危険な森である。その森の中で、ソニアは横たわっていた。


『キュー!』

私はその声がしたとたん、目を覚まし、体を起こした。

「…こ、ここは…。」

知らないところ。周りを見回すと、どうやら森の中。

そういえば、船から落ちたのにどうやって森のこんな中まで来たんだろう。

すると、すぐ近くの茂みで音がする。

ガサガサ

「だ、だれ!?」

ぴょこっと出てきたのは、二匹の小さな竜だった。

ちょっと待った。竜!?ここは人間の国ではないの!?

人間の国には愚か、竜王国以外の国には絶対竜はいないはず…。じゃあ、ここって!

「竜王国ドラグナルクだというの!?」

竜王国には竜魔法で張られた結界により、鎖国状態のため他国のものはむやみに入国できない。

本当にどうやってこんなところまで来たんだろう。

「はぁ。」

わたしは大きなため息をつく。

そんなことを考えているうちに、二匹の子竜が私の方に寄って来ていた。

「ガゥ!」

「ガゥ!ガゥ!」

なんかよくわからないけど、私を見て喜ばれている…気がする?

二匹の子竜は顔の周りに花を咲かせているかのように喜んでいる、ように見えた。そして、私にすり寄ってきた。

「ちょっ!」

なんだか、色々ありすぎて、何にも驚かない.。

「まさかわたしが竜に好かれるだなんて、思ってもみなかったよ。子竜ちゃん。」

私は二匹の頭をなでる。

なんか、皮膚は蛇みたいだけど、蛇よりしっかりしていて、かわいい。

うん。かわいい。なんだか、姫様みたいな…あっ!

私は重大なことに気づいたのだ。もしかしたら、向こうでは私は死人扱いになっているかもしれないことを。

(姫様も、侍女長様も陛下も王妃様もみんな心配しているかも。)

けれど、連絡を取ろうにも、鎖国状態だし、他国へ行くなんてもってのほか、人間の国に手紙なんて出せることはない。連絡魔法に至っても、竜魔法の結界によってさえぎられる。つまり、情報手段がない。…いや、中央なら手紙が出せるかもしれない!そうだ、中央への連絡手段くらいはあるかもしれない!けど、どうやって行こうか。

私は、どうにかして連絡を取ろうとするも、どこへ行けばいいのかわからない。

「はぁ。とりあえず、生きる努力でもしようか。」

私は幼いころ、住んでいた村が焼かれ、そこで親も親しかった人たちもみんな死んだ。それから私は途方に暮れながらも生きようとした。そんなときに姫様たちが助けてくれたのだった。だから、一応は最低限の生活は送れるだろう。

その前に、

「この子たちの親を探さないとね。」

「「ガゥ!」」

ま、息ぴったり!


さて、それから私と二匹は森の中をさまよっていた。

あれからだいぶたつけど、どこもかしこも木、木、木。まるでらちが明かない。

「ガゥ?」

「あぁ、ごめんね、心配かけちゃって。でも、君たちのお母さんとお父さんはいったいどこに行ったんだろうね。」

「ガゥ~」

よくわかんないか。あれ、さっきから一匹としか話していないような気が…。

「あっ!どこいった!」

「ガゥ!」

迷子か…。私もよくわからない土地で迷子となると、さすがに見つけるのも困難だ。

「おーい!どこ行ったの~!」

「ガゥ!」

見つかんない。

「あ、そうだ。君!えっと、」

(名前つけちゃってもいいよね…。)

「君はラドンね!」

「ガゥ!(やったぁ!ありがとう!)」

あれ?心なしか、この子の気持ちがわかったような。

そんなことより、

「ラドンはあっちの方探して!あんまり遠くの方へは行かないでね。」

「ガゥ!(わかった!)」

そして、私とラドンは二手に分かれてもう一匹の子竜を探すことになった。

私の向かった方にはどこにもなかったため、戻ってラドンが探してくれている方に向かった。

「ラドン!どこ!」

「(ここだよ!見つけたよ!)」

「えっ!?すぐそっちに行くよ!」

ラドンの向かった方にもう一匹が見つかったようだったのだが。

「(急いで急いで!)」

「どうしたの!?」

「ガゥ~」

見ると、そこには滝に落っこちそうなおびえている子竜の姿があった。

「今助けるよ!ちょっと待ってて!」

わたしはを使った。

「ふっ!」

金色の光が子竜を包み込むように覆った。そして、ゆっくりと浮き上がり、私の方に向かってくる。

そして、安全にこちらに着くことができた。

「は~!よかった。ケガはない?」

「ガゥガゥ!」

「(けがはないって)」

「そう。よかった。」

一安心すると、何だか助けた子竜の様子がおかしい。おかしいというか、ラドンに怒っているような。

「ガゥ?ガゥガゥ。」

「(えっ!いや、お前を探しているうちにね。)」

「ガゥ!ガゥガゥ!!」

「(ごめんて!)」

これは、兄弟げんかか?まじか。どうしたんだろう。

「ラドン、どうしたの?」

「(あのね、この子が君だけ名前を付けてもらうなんてずるい!って)」

「あぁ、そういうこと。」

やっぱり、名前を付けると言っていることが分かるようになるのか。

「ガゥ!」

「んーとね、じゃぁ君はリドンね!」

「(やった!姉ちゃんありがと!すっごく嬉しい!)」

言葉が理解できるようになれば、ひとまずはここから動きやすいね。

「んじゃあ、君たちに相談したいことがあるんだけどいい?」

「(いいよ!)」

「(何でも言っていいいぞ!)」

「ここって、竜王国ドラグナルクでいいのよね?」

「(うん!でも、僕ら生まれたばかりだから、ここら辺のことしかわかんない。)」

「じゃ、ここは、ドラグナルクのどのあたり?」

「(ここはアローンっていう森なんだぜ。たしか、母ちゃんが言うには、ドラグナルクのほくせいぶってところだったかな。)」

「お母さんの方が詳しい?」

「(うん!母さんに聞いた方が早いと思うから、まずは僕らのうちに来てもらおうよ!リドン!)」

「(迷子だけど、いいのか?俺ら岩竜だから、空飛べねえし、ここがどこだかわかんないんだぜ?)」

「(お姉さんの力を使えばいいじゃんって話!)」

「(そうか!)」

「どういうこと?」

「(つまり、お姉さんの浮かばせるやつ使って、空に浮かばせて、僕らがどこにいるか確認すればいいんだよ!)」

「そっか!」

ラドン頭いい、とちょっと見直した私であった。二匹の様子を見てみると、ラドンのほうがお兄さんで、リドンはやんちゃな男の子て感じかな。

ということで、私はラドンを浮かばせた。

「どうかな?」

「(いい感じだよ!)」

「(俺も…俺も空飛びたかった…。)」

「(さっき飛んだでしょ!)」

「(それとこれとは違うだろ!うぅ~。)」

話し合いの結果、ラドンが飛ぶことになったんだけれど、…リドンはどうしても飛びたいらしい。岩竜は竜の中でもパワーが強い種であるがその代わりに羽が退化して

、空が飛べなくなったらしい。

(…リドンが可愛い。うるうるの瞳を適度にこちらに向けるのは反則ではないか!)

そうして、私は最終手段に出た。そこまで飛びたかったのだろうリドンに、我慢したご褒美をやろう。

「リドン。」

「(ん?)」

「後でね。」

「(いいのか?やったー!!!)」


「ラドン、どう?」

「(見えた見えた!思ったより、おうちが近いよ!)」

ラドンをゆっくりと下す。

「(次!俺の番!)」

「はいよ~。」

「(ごめんね、お姉ちゃん。)」

「いいのよ。我慢してくれたんだからね。」

リドンを浮かばせる。そういえば、リドンを助けてから、なんとなくだけど力加減がわかった気がする。お礼もかねて、ちょっと長めに飛ばせてあげようか。

ラドンはほんとにお兄ちゃんだなぁ。

「そういえば、二匹とも、何で迷子になったの?」

「(ギクッ!)」

「リドン!危ないよ、あんまり激しく動かないで…って、リドン?」

「(それはね、僕からも怒らないといけないんだけどね、これについては母さんと面と向かって話した方が早くお話が終わるから、ね?リドン。)」

黒ーい空気がラドンをまとう。そして、笑顔が逆に怖い。

「(ひぃっ!)」

この二匹に何があったんだろうか。ま、とにかく私たちは足を進めた。




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デレスティナ物語 @tanukinoko0000

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