3 五階と503
俺の聞き間違いか?とりあえず聞き直してみよう。
「え、その。名前って楓さんって呼んで欲しいってことですか?」
神崎さんは、俯いたままで一言だけ言葉を発した。
「…呼び捨てで。」
「楓って呼んでってこと?」
俺は再確認した。
「うん。」変わらず俯いたままいった。
俺は何を言ってるんだと頭をフル回転させた。まだ会って数時間の人を呼び捨てしていいのか?いや、でも頼まれてるしな。。。そう考えてるうちに神崎さんが手を握ってきた。
さすがに驚いた俺は
「神崎さん!?」と大声を出してしまった。
「ダ、ダメですか?」
そんなこと言われたら断れるわけもなく承諾した。すると嬉しいそうに
「ありがとうございます!」と初めて笑った顔を見た気がする。
「じゃ、じゃあ、楓。またな。」
そういって帰りの帰路に早足で行った。
しかし、おかしい。後ろに楓がついてきているのだ。なんでだろうか。帰り道がこっちなのか。と思いきって聞いてみた。
「楓さん?帰り道こっちだったりするの?」
無難に聞いたと思っていたが、何故か返事が返ってこない。しかも、俺の目をじっーと見つめてくる。あ、まさかと思い聞き直す。
「か、楓って帰り道こっちなの?」
そう言うと「はい。そうです!」と返答した。呼び捨てじゃなきゃ反応しないのかこいつは。と思いながら一緒に帰り始めた。
「楓はどこに住んでるんだ?」無言が続いていたので聞いてみた。
「んー、そうですねー。5階に住んでますよ?」
「そうかーって、それで理解できると思うか?」
「坂井くんはどこに住んでるんです?」
「ん?俺も5階だな。というか俺も呼び捨てでいいぞ。」
俺が呼び捨てしてるのに相手は君付け何が変だと思いそういった。
「さ、さすがにそれは厳しいものがあるので進くんで大丈夫ですか?」
呼び方は特になんでも良かったため
「うん、いいぞ」と返事をした。
「進くんも5階なんですね。奇遇ですね。」
「確かにそうだな」
ん?待てよ。こっちの方で5階まであるマンションって2つくらいだよな?1つは遠いし。まさか。な。そう思いながら一応聞いてみた。
「な、なぁ、楓。何号室?」
ちなみに俺は503号室。
「え?んー、503室だよ」
あ、なんだ。遠い方行くのか大変だな。と心では一瞬緊張したが落ち着きを取り戻した。
「ここからマンション遠いけど大丈夫か?」
「え?あ、大丈夫ですよ?歩くの慣れてますし」
「そっか。じゃあいいか。」と思い帰宅した。
アパートにつき。楓と分かれようとしたが何故か後をついてエレベーターに乗ってくる。さすがにおかしいと思い、きいた。
「楓の住むマンションってどこ?」
「ここですよ?」
おかしい。同じマンションで同じ503。
エレベーターが開くと大家さんがいた。
「坂井くん。楓さん。ごめんね。私の手違いで一緒の部屋になっちゃった。」
「「え?」」
楓と俺は声が重なった。
君に惚れるまでの時間は長いようで短い。 招き猫 @noue2
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