五 嵐の前の静けさ
傭推の後をトコトコとついていく。
地下へと続く折り返し階段を歩いた。この階段どこまで続くんだろう?
もうずいぶんと歩いているんだけど。
「この階段どこまで続くんですか?」
「もう少しだよ」
もう少しってどれくらいなのか?さっぱりわからない。
階段もそうだが、傭推の先ほど言った独り言?にも不安を感じる。
手加減を知らない云々、綺麗な人だったけど怖い人なのかな?
うぅっ、何か思い出そうとすると鼻血が出そうになる。何でだろ?
「白馬君、こっちだよ」
手招きされて、案内通りに階段を降りた先にある通路を抜ける。
そこには横に動くエレベーターが設置されており、誰が作ったんだ!とか、費用はどうなっているんだと?驚きを隠せない。
「ちょっと失礼」
傭推は立ち止まると通信機器を取り出して、誰かと会話をする。
連絡を取り終わった傭推は、通信機器を仕舞う。
「会場に着くまでの間、白馬君がわからないことがあれば、答えられる範囲で話すけど。何かある?」
この際、聞けることは聞いておこうと思い、白馬は質問をする。
『あの化け物のこと』『神の子とは?』『鍵について?』『自分の能力の突然の発現?』『称号とは?』『傭推の能力の正体?』
「たくさんあるね。そうだね、まず一つずつ話そう。話の中で、分からないところがあれば言ってくれ」
「はい、ありがとうございます」
『あの化け物はThree faces bearと言って、栄光の橋と呼ばれる宗教団体の動物兵器だ』
『研究員である
「でも、どうして僕が標的に?」
『動物兵器が、なぜ白馬君を襲ってきたのか?これは推測だけど。テストとして、運の強い人間を襲うように設定され放たれたのだと思う』
「テスト?」
「うん、あの団体はそういったことを繰り返しているんだ」
つまりこの実験は一度や二度ではなく、何度も行われたということ。
つまり傭推さんがあの場にいたのも、偶然ではなかったと考えるのが妥当である。
『次に、神の子と呼ばれる存在は、百年に一度生まれる八人で、運が異常に強いのが特徴だ』
『神の子は、神にすら届きうる程の強力な能力を持つと言われています』
『そして鍵とは、神の十字架。神の庭より、神のもとにたどり着くための鍵となる存在です』
『神の庭には、他の神の子の七人も集まらないと、神の十字架として機能しないそうですが』
『神の庭についても話しておきましょう。神の庭は沖縄県の久高島のとある遺跡の最深部を指しています』
『運命力鑑定機も、久高島の遺跡より発掘したモノです』
『白馬君の能力については調べた所、君は無能と呼ばれていたそうですね。しかし無能では無かった?』
『推測の域を出ませんが、あのThree faces bearの能力を調べた所 剛力 嗅覚 並行思考 疾走 脱兎 は、Three faces bearの持つ能力のようです』
『白馬君は、殺した生物の能力を奪うという能力ではないかと推測しています。それは追々実験してみるしかないですね』
『次は、称号についてだね。称号とは、達成や成長により、発現する特殊な力である』
『ゲームで言えばバフ効果と言えば良いかな。身体能力を上げたり、能力の効果を底上げすることができるんだ』
『それと、能力についても重要なことがあって。能力は努力することで、発現する場合がある』
『努力により、能力を得た代表例はボスだよ。ボスは元々何の能力も無かった』
『しかし血が滲む努力を繰り返し、世界最強の剣豪といわれる称号や能力を得たんだ」
『最後に、私の能力についてですが、私の能力は、影神』
『影を操ったり、一度会った人物の影ならどこからでも入りこむことが出来るんだ。称号は、暗殺者』
「他にも能力はあるのですが。それは、またの機会に。さてさて、会場に到着しましたね」
会場はとても広く、東京ドーム四個分あるそうだ。広い客席に中央の開けた空間。
あそこで戦うんだろうな。もう後には引けない。
「白馬君、頑張って下さい……死なないでね」
「大丈夫ですよね?」
不安な表情で、白馬は傭推に問いかけた。
傭推は死に逝く友人を見る目で優しく微笑んだ。
僕は死ぬのだろうか……。
「さあ、行こう」
そう言って、傭推は白馬の背中を優しく押した。
神に愛された子供たち 七星北斗(化物) @sitiseihokuto
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