異世界で頭脳派やっていこうと思います

似屋

刹那の救い

日も傾き始めた夕刻、某ウイルスにより一月近い自


宅待機を食らった俺はコンビニから家へと歩いてい


た。一人暮らしだったことや料理が苦手なことから


よくお世話になっていたのだが……


「ホントに人見かけなくなったなー、なんだかさみ


しいな」


少し前にウチの県にも感染した人出たから仕方ない


んだろうけどさ


「━━俺もいい加減飯作れるようになんないとな」


ふと気づくと信号付近まで来ていて、点滅しだした


信号機をみて足を止めたとき、後ろからてくてくと


歩いてきた男の子が傍で止まった。


お使い、だろうか大きなカエルの財布を大事そうに


抱えながら手には五百円玉を持っていた。━━手に


持ってたら財布持ってる意味がないのではと少し微


笑んで思ってしまったが、その事は置いておき、今


一人で外に出るのは危ないのではと、考えていたそ


の時だった


「あっ━━━」


五百円玉が路上へと転がっていった、落としてしま


ったのだろうと眺めることしかしていなかった。考


えるべきだった、そんなとき子供がどうしようとす


るのか


待って…


男の子は踏み出していた、向かってくる車に気づか


ず。









知らない場所だった、奥行きの掴めない白一色の空


間に横たわっていた


「━━━━ここは、どこだ…」


身体が妙に軽く、熱を持っていた━━


「━━っそうだ、あの子は!?」


そこまで思い出したところで視界が歪んだ、キンと


不快な耳鳴りが頭の中で木霊した。だんだんと強く


激しくなる不快感の中━━━声が聞こえた。


「助かりましたよ、貴方のおかげですよ」


凛とした透き通った声だった、ふっと気が楽になっ


た、悪いものが抜け落ちたようだった。


「本当にか…!よかった━━━」


刹那の刻だった、伸ばした手は届いていたのだ


伝えてくれた声の主を探そうと周りを見渡すが、誰


もいない。だが、声は続いた


「その勇気、賞賛に値します。そんな貴方を見込


み、私の頼み事を引き受けてはいただけないでしょ


うか」


声は出なかった。一時の間に多くのことがあり、ま


だ整理できていなかったから。


俺はただひとつ頷いていた。理由なんて、なかった


「世界を、救っていただきたいのです」








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異世界で頭脳派やっていこうと思います 似屋 @Niya7021

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