桜
微睡
桜
「ぐるっと回って」
そう言ってくれたあなたは……
春、入学式には桜だなんだというけれど、僕は入学式に桜が咲いているのを見たことがない。
入学式を終えて教員にひきつられて出ていく新入生を見ながら、そんなことを思う。
「なーにやってるのかね、君は」
「何って、見学。」
そう答えると彼女は一つ溜め息をつく。
「仮にも、生徒会役員の君が途中抜け出しはアリかね?」
「いーんじゃないです?途中まではいましたし」
「会長が、お冠だったぞ?」
「そりゃこわいこわい。」
そういって、初々しい行進から目線を切る。
「でも、やることないでしょ?うちら」
「まーねー。」
「じゃあいいじゃないですか。副会長の方がよっぽどここにいたらダメじゃないです?」
「別にいいのよ。どうせやることないし?」
そういってニヤッて笑う。
「ところでさー副会長ー」
横によってきた副会長に体を向けていう。
「いつまで、あの人と付き合うんです?」
「あー、バレてた?」
「そりゃーねー」
「まぁ、惚れた弱みってやつ?って、別に誰と付き合ってもいいじゃない」
「そりゃあ好きにしたらいいんですけどねぇ」
そっと別な方を向いて歯噛みする。
この想いはバレてはいけない。
「なに?私のこと好きだった?」
「なーに自惚れてるんです?」
クスクスと笑う。笑ってやる。
「そっかー、違うかー。」
そういってクスクスと笑う。
バァン!!
と、大きな音を立てて背後のドアが開かれる。
「やぁやぁ、書記くん?なーにサボっているのかね?
副会長といちゃつきたいだけかね?ねぇ!?」
「やぁ、会長。お元気そうで」
昇降口の高さは2階、跳べる。いける。
「君はたーだいるだけでいいはずだがねー?どーしてそれができないのやらー?」
「いやはや、それがむずかしんですよぉぉ!!」
そういって、飛び出る。後ろから「あ、こら!待て!危ない」とかいう声が聞こえたが気にしない。
そっと後ろを見ると叫んでる会長と、耳を押さえてる副会長が見えた。
勝った。
まぁ、荷物を生徒会室に置いてたので、結局捕まったわけなんですが。
「ねぇ、副会長。」
校門の桜が咲いたその日。
「私はもう、副会長じゃないっていってるはずだけど」
そういってクスクス笑う。
「うちの桜って、卒業式に咲くんですよね。」
「そうなんだよね、入学式に咲けばいいのにね。」
違う、それじゃない。
「寂しくなりますね。」
「そうね、会長。楽しかったものね。」
そうじゃない。
「副会長、僕は……「私じゃないわ。後ろを見て。」」
そういって後ろを振り替える。
「会長……」
泣きそうな顔をしながらこちらを見ていた。
「ぐるっと回って」
「そんな顔をしながら……」
「いいから!」
そういわれ、Uターンする。
副会長が困った顔をしている。
後ろから寄ってきた気配を感じる。
「あんたには色々いいたい……けど……けど……」
声がかすれている。
「気にしないで」
とても小さな声が聞こえた。
振り返りかけたら、小さく、振り向いたら殺すとか聞こえた。
「副会長、僕は、ずっとあなたが好きでした。」
正面から副会長に向けて伝える。
副会長はまた困ったように笑いながら
「ーーー」
と。
桜 微睡 @dosooh
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