あなたが隠そうとした心を暴いてもいいですか

　稀に成長途中で心が結晶化する『晶心病』。その患者であるため外出できないリノン姫の代役――『影』として、アーシェは生きていた。本物のリノン姫のように振る舞い、公務をこなす日々。彼女を演じることにも、すっかり慣れ切っていた。
　ある日の晩、アーシェが暮らす城の地下室に、一人の少女がやって来る。「地下室には、悪い魔女の血を引く幽霊がいる」という噂話を真に受け、忍んで真相を確かめに来た新入りの侍女・フィアだった。教育係と世話役以外の人間の来訪に、アーシェは驚くが、幽霊のふりをして彼女の話し相手となる。互いに名乗らず、顔も見えない中、二人は徐々に打ち解けていく。一夜どころか、その後も何度も足を運ぶフィアの健気さに、アーシェは『影』であることを一時忘れて安穏と幸福を見出すのだった。
　やがて、アーシェ…続きを読む