YOUターン

ベームズ

帰り道

「あっ忘れ物した」




「……あ、あはは、なかなか面白い冗談だな‼︎カナメちゃん‼︎」




「……あっ忘れ物した」

「……冗談だよな?」



「忘れ物、しました」

「……はい、戻りましょう」


「これぞまさしくUターン‼︎華麗なるとんぼ返り‼︎」

「もう黙れ腹立つだけだから‼︎開き直って騒ぐな鬱陶しい‼︎」




「だってしょうがないじゃん‼︎やらかしすぎてじっとしてたらおかしくなりそうだもん‼︎」

「だからっておかしなことしてたら何にもならないだろ‼︎」



「……たしかに」

「ほら、手握ってやるから少し落ち着け?」


「……ありがと、でも今不安だから手汗やばいよ?」

「……ああ、大丈夫だ」

「なんで今少しためらった?」


「……ためらってない」

「ためらった」



「……うわー、マジで手汗やばいぞ?」

「我慢してよ‼︎さすがに恥ずいから‼︎」

「……今まで散々奇行を繰り返してたやつがそこは恥ずかしいのか?」


「…………」

「痛い痛い痛い‼︎わかったから‼︎無言で握力入れるな‼︎マジで痛いから‼︎」


「なら潤もなんか恥ずかしいことやって」

「理不尽な振り⁉︎」

「……はやく」


「じゃあ……カナメちゃん、今日の服、似合ってるね、可愛いよ‼︎」


「――――っ⁉︎」



「……って、なんで私を褒めるのが恥ずかしいのよ⁉︎」

「いや恥ずかしいだろ‼︎」

「せっかくオシャレしてきたのに全然反応ないしちょっと傷ついてたのよ!?」

「だからそんなのいちいち口に出すなんて恥ずかしいんだよ」


「でも言ってくれなきゃわからないじゃん?そりゃ、『カナメちゃんは可愛い』は言わずと知れた一般常識だよ?でも……」

「どこから来るんだその自信……でもたしかに、いちいち口に出す必要がないくらい、カナメちゃんは可愛いと思うよ?」

「えへへ、だよねー?」

「うん、だからそんな当たり前のこと、いちいち口に出す方が恥ずかしいんだよ、わかってくれた?」

「えへへ、えへへへへへ〜仕方ないな〜今回は許してあげるよ‼︎」




「さて、戻ってまいりましたショッピングモール‼︎約10分ぶり‼︎」

「……ところで何忘れてたんだ?大事なものか?」


「うん、すっごく大事なもの。普通なら忘れるわけないのに、はしゃぎすぎて忘れた」

「……そうか、心当たりはあるか?どこに忘れたか、何時ごろとか」

「多分レストランだと思う。ほら、お昼の時入ったあのお店。潤に年代別、私の宝物(潤にもらったもの)披露会したでしょ?あの時にしまい忘れたみたいで」


「……ああ、あのめちゃ恥ずかしい謎の儀式な。ヤバかったわ、周りの視線とか、注文持って来た店員さんの優しい目とか、突き刺さるようだった」


「一眼で貴重品だと分かるものだから預かってくれてるといいけど……」

「だな、あの中で貴重品っぽいものって、手袋か?それとも交換日記?」

「歯」


「……は?」


「うんそう、潤の歯。生え変わりの時に最初に抜けた歯。くれたでしょ?覚えてるよね?」

「えっ?ごめんそんな記憶ない……」

「またまた〜、ほら?二人とも同じ時期に歯がグラグラし始めた頃、あの時わたしめちゃ不安で怖くて、そしたら潤が先に自分の歯を抜いて見せて、全然大丈夫って言って渡してくれたでしょ?あの時の血だらけの口元今でもはっきりと覚えてるよ?」

「怖いわ‼︎歯って、大体そんなもんとっくに捨てられてるわ‼︎気持ち悪い‼︎」


「あったって‼︎」

「あったの!?」

「うん‼︎店員さん、私が見せびらかしてたの覚えてくれてたみたい。ホラ‼︎」

「……マジだ」

「えへへー、よかった〜代わりの歯、抜いてもらわなきゃいけないところだったし〜」

「……うん、よかったな…………なんか複雑な気持ち」


「さて、改めて潤の家に帰りますか‼︎」

「Oー」


(無事に帰ってまいりました)

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YOUターン ベームズ @kanntory

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