ハイロードアウト

アリエッティ

事故ればその先。

 高速道路はブレーキ厳禁、いかなるときもそれは同じ。しかし突発的に事故は生じる、厳禁なのは変わらずに..


「あっぶね!」

タヌキが突然横切った。

その日は冬で道路が凍っていた為ブレーキを踏めばスリップし、車は逆の方向を向く。その後だ、馬鹿なのは。

「ふぅ...あれ?」

スリップした逆の向きのまま、直進してしまったのだ。

「嘘」

 死んだと思った

だけどそうはならなかった。

 目の前におかしなジッパーが出てきてオレはファスナーみたいに開けた穴の中に車ごと入れられた。


「ようこそ!」「...何?」

二頭身半くらいのヘルメットを被った小人だった。敬礼なんかしてニコニコしてやがるんだコレが。

「ここはどこだ?」

「事故現場です。」「事故現場?」

「そうです、事故を起こし死の直前に突入した者が訪れる。

謂わば〝走馬灯〟ってヤツですね!」

「ヤツですね、じゃないよ..。」

死の直前って事はまだ死んでないって事か。..にしても何でこんなとこ、まさか天国ってここの事か?


「え〜っとアナタの仮死因はですね..

〝Uターン〟です。」

「え、いやいや!

スリップしてミスったんだよ」

「コッチではそういう扱いです。

来た道を戻る事はUターンといいます

他にもありますよ、左折禁止(衝突)停車(転落)、燃料不足(車破損)、

アイシテルのサイン(激突)。」

「なんで少しずつ変えるんだよ」

どうやらオレはその中のUターンをしちまったらしい。


「で?

オレは何でここに呼ばれたんだ」

「生き返る為です。

幸いアナタは被害者を出しておりません。一人でUターンしたので、生き返るチャンスが御座います。」

「..それを断ったら?」

「ワタシと同じ見た目になります。」

「絶対やる!」

コイツらもしかして、よく聞く死神ってやつか。死者をどうにかするっていうあの連中なのかもな。

「先に言っておきますが、ワタシたちは死神では御座いません。」

「なんだ、違うのか」

「はい。

アナタたちの世界の言葉で言いますと

〝ぴきがみ☆〟です。」

「...いや、聞いた事ないけど?」

「ですから〝ぴきがみ☆〟です。」

「聞こえなかったとかじゃなくて、存在しないのよ。その言葉が」

ヤツらはカリスマギャルモデルかなんからしい、確かに映えそうな見た目だ


「わかったから、何するか教えてくれそれしなきゃ戻れないんだろ?」

「これを。」

手渡したのは石ころの山

「なんだよこれ?」

「これを積んで下さい、ひたすらに」

「地獄みたいな作業だな」

鬼がいれば横から蹴られるのだろうか

どちらにせよつまらん作業だ。

「それをやりながらお待ちください。

今準備をしてきます」


「これじゃないのか、やる事って?」

「何を言ってるんですか。

それだけでは終わりませんよ、アナタはこの空間に8年は居続ける事になるんですから。」

 話を聞けば書類受理に4年、承諾に4年かかるらしい。5Gになり通信速度が100になると言われる時代にこの連中は、3GでEメールを打っていた。


「効〜率悪っ!!」

思わずそりゃ言っちゃいますわな。

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