82 桜子ちゃんのクレームタイム

「桜子、どうした? そんなに不機嫌そうな顔をして」


「ねえ、光一。この作品が三葉空の第2世代っていうのは知っているわよね?」


「今日はお前がメタいんかい」


「ここ最近、新作を増やしまくったあの作者は、『第2世代はまあ区切りが良い所なんで、しばらく更新しません』みたいなことを言ったの。


でもね……昨日、2020年6月9日(火)において、第2世代の作品たちが更新されたの。『三拍子』『同居』『地味子』『家出中』……そう、その黄金世代たちが」


「はぁ」


「けど、なぜか……この『毒舌』だけは更新されなかったのよ」


「つまり、ハブられたってことか」


「あーもう、この作者ぶっ◯してやろうかしら」


「桜子、そこはいつものように可愛らしい表現にしておけ」


「三葉空、ぶっころ」


「はい。で、お前は自分たちの作品だけがハブられて更新されなかったから、怒っていると」


「そうよ。だって、更新してくれないと……光一とイチャつけないし」


「大丈夫だよ、桜子」


「えっ?」


「俺とお前はいつも心がつながっているから」


「こ、光一が、いつになく心がきれいだわ……」


「バカ野郎。俺はいつだって心がきれいだよ」


「薄汚れまくっていると思っていたわ」


「へぇ~? そんなこと言っちゃうんだ」


 ギュピン!


「んはああああああああああああああぁん!」


 ビクビクン!


 桜子はベッドに沈んだ。


「ひ、久しぶりのギュピン……やばい」


「よし、追撃するぞ」


「えっ、ちょっ、まっ……」


 ギュピンギュピンギュピン!


「うあああああああああああああああああああああああああぁん!?」


 桜子は大絶叫をして、


「……チーン」


 お亡くなりになった。


「おーい、桜子。久しぶりの更新なのに、死んでいる場合じゃないぞ?」


 俺はツンツン、と桜子をつつく。


「かはッ、あはッ……」


「水を失った魚みたいに跳ねやがって」


「ちょ、ちょっと……光一ってば、ドSすぎ……」


「けど、ドMのお前にはご褒美だろ?」


「バカ……」


「そういえば、作者は数ある作品の中でも、お前が一番お気に入りのヒロインだって言っていたぞ?」


「ふん、だから何よ? 私は光一しか興味がないから」


「ドンマイ、作者」


「ていうか、お気に入りなら毎日更新しなさいよ、ボケナスが」


「口が悪いな~。まあ、この作品もそこそこ長いからなぁ」


「書籍化しないかしら?」


「う~ん……どうだろうね? けど、書籍化すると色々と改変されるんじゃない?」


「例えば?」


「そうだな……ヒロインがお前じゃなくて萌葱になるとか」


「それもう物語の根底を覆すでしょうが! タイトルだって変わるし!」


「まあ、書籍化する時は大抵、タイトルが変わるからなぁ」


「そういうことじゃなくて……そ、それなら、主人公だって光一以外に交代よ!」


「まあ、それはそれで楽チンだけど。俺、実はちょっと疲れていたんだよね」


「えっ?」


「ほら、俺って元々はボッチの日陰者だったからさ。裏方気質な訳よ。それが何か主人公に祭り上げられちゃってさ」


「ラノベとかみんなそんなものでしょ?」


「まあ、そうだけど。そろそろ、主人公から降りるのもありかなって思って」


「降りてどうするの?」


「う~ん……隠居?」


「おじいさんじゃない。まだ若いでしょうが、あなたは」


「つってもな~……何か、俺に活力を与えてくれるものが……あっ」


「どうしたの?」


「桜子、ちょっと胸を張ってみて」


「え? こ、こう?」


 バイーン!


「デカッ」


「え、それだけ?」


「え、揉んで欲しいの?」


「いや、そんなことは……あります」


「じゃあ、遠慮なく」


 モミモミ。


「あんあんッ」


 モミュモミュモミュ。


「んッ、あんあッ」


 モミュルルルルルルルルルル!


「うはああああああああああああああああぁん!」


 また桜子はビクン!ビクン!と震えた。


「……ま、また新しい技を編み出したのね?」


「別に、ただの即興だよ」


「ちょっと、効果音だけじゃ分かりづらいから、今のどうやったか教えてよ」


「まあ、ひねりを加えたんだよな。揉みつつ捻って行って、最後にポーンと解放すると……」


「何か最近、別の作品でそのネタを見たような……」


「勇者ハ◯カさんからいただきました」


「おのれ、あのおっぱいオバケ女め……光一をたぶらかして……」


「いや、別にたぶらかされてないから」


「でも、光一はあの超爆乳が本当は欲しいんでしょ? おっぱい作者の描くヒロインの中でも今のところダントツにデカい、というかもはや異次元なあのおっぱいが欲しいんでしょ?」


「だから、俺は桜子にしか興味がないって」


「本当に?」


「どうやったら信じてくれるんだよ?」


「……キスして」


「ああ、そういえばしてなかったな」


 ちゅっ。


「はい、これで良いか?」


「……何よ、そんなそっけないキスをして」


「いや、たまには良いかなって」


「もっといつもみたいなベロチューしなさいよ」


「あー、はいはい」


 俺は桜子の顎を掴むと、キスをした。


 それから、ご要望に応えて激しめのベロチューをする。


「んッ、はッ、あッ……!」


 桜子の体が小さくビクビクしている。


 そこに、俺はまた先ほどの技を……


 モミキュルルルルルルルルルルルルルルルン!


「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんぅ!?」


 桜子の痙攣がベロ、そして、唇を通して俺にもダイレクトに伝わった。


 あ、これ新たなマッサージ法を編み出しちゃったかも。


 と、呑気に考えている間に。


「……チーン」


 また、桜子がお亡くなりになった。


「おーい、死ぬな」


 ぺちぺち、と俺は桜子の頬を叩く。


「はぁ、はぁ……や、やっぱり、毎日更新はしなくて良いわ」


「え?」


「だって、毎日こんな風にいじめられたら……おかしくなっちゃう」


「桜子、安心しろ」


「え?」


「お前は最初からおかしかったから」


「ぶっころ」


「でも、それがメチャ可愛い」


「ズキュン」


 その後、俺と桜子はもうしばらく、イチャイチャしていた。







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