71 続・ステイホームでひたすら彼女をいじめる

 今日も今日とて、俺は桜子と家にいた。


「ねえ、光一」


「どうした?」


「確かに、今の私は受験生で、あなたも仕事が忙しい。けど、たまの息抜きに外出とかしても良いんじゃないかしら? 最近、ずっと家に籠りっぱなしでしょ?」


「まあ、気持ちは分からないでもないけど。外部からすごい圧力がかかって来るんだ」


「外部って何の話よ?」


「知らん」


「はぁ?」


「何だよ、そんなに不満があるのか」


「そういう訳じゃないけど……」


「俺はむしろ、幸せだぞ。桜子とずっと二人で一緒に居られて」


「本当に?」


「うん」


 俺は椅子から降りて、桜子のそばに寄った。


「勉強する時、長い髪が邪魔じゃないか?」


「まあ、少しだけ」


「そっか。じゃあ……」


 俺はブラシを手に取った。


 サッ、サッ、と桜子のきれいな黒髪のロングを梳かす。


「こ、光一?」


「今から、髪をポニテにしてあげるから。桜子は気にせず、勉強を続けて」


「そ、そんなこと言われても」


「ほら、美容室でも髪をセットしてもらいながら、本を読んだりするだろ?」


「まあ、言われてみればそうだけど……」


「大丈夫、優しく丁寧にするから」


「じゃ、じゃあ……お願いします」


 桜子は言う。


「了解」


 俺は再びブラシを動かす。


 初めは少し抵抗がある、というか慣れない様子だった桜子だけど。


 徐々にこの状況に馴染んだようで。


「光一、あなたブラッシング上手なのね」


「まあな」


「器用よね、あなた」


「まあな」


「だから、その、エッチの時も……テクがヤバいもん」


「どうヤバいの?」


「そ、それは……」


「ほら、具体的に説明してみて」


「ぜ、全部の指が、それぞれ違う動きをして……私の大事な所を攻めまくるの」


「それで、お前はどうなっちゃうの?」


「わ、私は……昇っちゃいます」


「そっか……エッチな女の子だな、桜子は」


「や、やめてちょうだい……」


 そうこう話している内に、桜子の髪をポニテにし終えた。


「ほら、出来たよ」


「ありがとう。確かに、こっちの方がスッキリして勉強しやすいかも」


「そうか、良かったな」


「じゃあ、光一もお仕事に戻って……ひゃんっ!?」


 俺が首筋を甘噛みすると、桜子は可愛い声を出した。


「こ、光一!?」


「……こんなきれいなうなじを見せられたら、食わずにはいられないよ。据え膳なんちゃら、って言葉もあるしな」


「な、何を言って……」


 かぷっ。


「あふうううぅん!」


「桜子の白くてきれいなうなじ、美味しいな」


「バ、バカぁ……」


「桜子、これも一つの訓練だよ」


「な、何がよ?」


「ほら、お前は豆腐メンタルだからさ。受験本番できちんと本来の実力を発揮できるように、今から鍛えておかないと」


「そ、それにしても、もっとやり方が……はああああああああああぁん!」


「桜子、俺の親が居ないからって、少し声が大きすぎるぞ」


「だ、だって~……光一が私のうなじを遠慮なしにパクってするから……」


「もっといじめて良いか?」


「い、いじめ? あなた、やっぱり……」


 あむっ。


「きゅうううううううううううううぅん!」


 ぺろぺろ。


「はあああああああああああああああああぁん!」


 桜子は叫んだ後に、クタッとなってしまう。


「昇っちゃった?」


「はぁ、はぁ……バカ」


「ヤバい、そんなお前を見ていると、何かゾクゾクするよ」


「変態、ドS男」


「じゃあ、別れるか?」


「……意地でも別れてやるもんですか」


「しつこい女だな」


「またそんなイジワルを……んっ」


 俺は桜子の肩を抱き寄せて振り向かせ、キスをした。


 お互いの舌を激し目に絡め合う。


「……ぷはっ」


「間近で見ると、やっぱりお前って可愛いな」


「そ、そう?」


「自覚しているんだろ?」


「そ、そんなことは……」


「胸も大きいしな」


「あんっ」


「お前の欠点を探したんだけど、見つからないよ」


「そ、そんな……いっぱいあるよ?」


「だとしても、俺には見えないよ」


「も、もうやめて……死ぬ……死ぬから」


「桜子、本当に愛している。お前さえいれば、俺は何もいらない。結婚しよう」


「あっ……あああああああああああああああああぁん!」


 桜子は天井を仰いでヒクヒクと痙攣する。


「……こ、言葉攻め……すごい……」


「とうとう、お前の開発がここまで進んだよ。一年かかったな」


「バ、バカぁ……本当にバカぁ」


「桜子、可愛いよ」


「あっ……あっ……」


「ほら、また嬉しそうにビクビクしてる」


「う、嬉しくなんてないもん」


「桜子って、鼻もきれいだよな」


 俺はスッ、と指先で彼女の鼻をなぞる。


「ふううううぅん……もう、ダメ……本当にダメなのぉ……あっ、あっ……」


「別に、本番エッチをしている訳でもないのに。感じすぎだろ」


「じ、自分で開発したくせに……」


「そうだな。けど、俺は桜子をもっと開発したいよ」


「もう十分でしょ?」


「お前という最高の女を、骨の髄までしゃぶりつくしたいんだ」


「へ、変態……」


「別れても良いぞ」


「……結婚して下さい」


「意味不明だな」


「何でよ!」


「冗談だよ。じゃあ、結婚しようか」


「ほ、本当?」


「元から、そういう約束だし。まだ正式に籍を入れるのは先の話だろうけど……もう、夫婦ってことで良いんじゃないかな?」


「じゃ、じゃあ……あなた」


 そう言って、桜子は俺の胸に寄り添う。


「何だい、ハニー?」


「ふざけているの?」


「俺は本気だよ、ハニー」


「照れているのね?」


「…………ちゅっ」


「んっ……はっ……あっ……ちょ、ちょっと、そのキスやば……あっ!」


 俺はしばらく、桜子を離してやらなかった。







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