59 新たな勉強法
ガリガリ、とペンを動かしている。
「光一、またエッチな図とか描いてないわよね?」
「描いてねえよ」
俺は不機嫌に答える。
「私たちは受験の年なんだから、ちゃんと勉強しないとダメよ? 出来ることなら、一緒の大学に行きたいけど……」
「それはやめておくよ。お互いにあまり依存し合う関係は何かキモいし」
「そうかしら……」
「それに、俺とお前の絆はそんなヤワじゃないだろ? 四六時中一緒にいなくたって、心は繋がっている」
「光一……嬉しい」
「そう。だから、例え俺が受験に失敗して浪人して自暴自棄になて挙句の果てにはニートになったとしても、問題はない」
「ちょっと、さり気にクズ発言してない? 将来、私のヒモになるつもり?」
「ダメかな?」
「ぐっ……こんなクズ男は捨ててやりたいのに……何だか可愛くて無理ぃ~!」
「お前も重症だな」
「ぶっころ」
「安心しろ、そんな風にヒモになるつもりはないよ。ちゃんと働くさ」
「本当に?」
「ああ。そうしないと、お前の両親に結婚を認めてもらえないからな」
「光一……♡ じゃあ、ちゃんと勉強をしましょう」
「そうなんだけど……イマイチ、頭に入って来ないんだよなぁ」
「もう、本当にエロ以外のことはからきしね」
「だって、パラメーターが極振りだから」
「う~ん、困ったわね。このままだと、本当に浪人だわ。まあ最悪、私が養ってあげても良いんだけどね。両親は何とか説得するから」
「苦労をかけるな」
「おじいさんみたいなこと言わないで」
そう言った桜子は、何やらハッと閃いた顔になる。
「そうだわ、エロよ」
「え、エッチしたいのか? 勉強中にダメな女だな」
「違うわよ! そうじゃなくて、エロと絡めて勉強するの。ほら、前にもあなたは私のおっぱいと円周率をダブらせていたでしょ? あんな感じよ」
「けど、ムラムラして逆に集中出来ないかも」
「とりあえず、試してみなさい」
「分かった」
「ほら、例えばこの点の問題よ」
「これをどうすれば良いんだ?」
「だから、その……突起と思えば」
「突起? もっとハッキリ言えよ」
俺はついニヤリとしてしまう。
「だ、だから……」
桜子は赤面しながら俺の耳元で言う。
「……全く、エロい女だな。そんなことばかり考えていて、受験は大丈夫なのか? レベルの高い国立を受けるんだろ?」
「お黙りなさい。良いから、早く言った通りに問題を解け!」
「お~、怖い」
俺はやれやれと肩をすくめつつ、その点をじっと見つめた。
これは、例の突起……桜子の……
瞬間、俺の脳内で何やらスパークのような現象が生じた。
それまで、まるで興味の湧かなかった問題の内容がぶわっと頭の中に流れ込んで来る。
「えっ、嘘……」
桜子は目を丸くしている。
それまで鈍かった俺のペン先が、尋常じゃないスピードで動くのだ。
「ここをこうしてこう……さらにはここを攻めれば……」
「ちょ、ちょっと、光一……」
「桜子は昇る」
「あっ……」
瞬間、目の前で桜子はビクンとし、
「これでどうだ!」
ビシッ!
「うあああああああああああぁん!」
桜子は仰け反ってビクビクとした。
「……はぁ、はぁ……何よ、今の。別に触られてもいないのに……まさか、光一の気に押されたの?」
「ありがとう、桜子。おかげで問題が解けたよ」
俺は礼を言う。
「いえ、そんな……あなたって、やっぱり凄いのね」
「いや、お前の方が凄いよ。おかげで、勉強がはかどりそうだ」
「そ、それは良いことね。けど、ちょっとくらい息抜きを……」
「いや、この感覚を維持したいんだ。続けて行こう」
「そ、そうなの……」
桜子は少し残念そうに顔を俯ける。
「このA点から伸びた棒がB点へ鋭角に侵入し……」
「え、鋭角に侵入……はッ、あッ!」
俺が真剣に問題を解いているそばで、なぜか桜子さんはビクビクしているけど。
とりあえず、放っておくことにした。
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