46 2日目の夜も、思い出を振り返りながらチャhる

 初日の夜に悪さをしていた連中も、先生にこってり絞られたことが原因で大人しくしていた。


「あ~、女とヤリて~!」


 同じ部屋の連中はさっきからそればかり連呼している。


「つーか、マジでシコりてーんだけど」


「おい、誰かオカズ持ってねーか?」


「はい、実はこっそりエロ本を持って来ました~」


「おーし、今晩は鑑賞会だ~!」


 アホな男子たちが盛り上がる一方で、俺は部屋のドアノブに手を掛ける。


「おい、春日。どこに行くんだ?」


「一緒にエロ本を読もうぜ?」


「お前も溜まってんだろ?」


「割と修学旅行あるあるだよな~」


 奴らはゲラゲラと笑う。


「悪い、これからちょっと用事があるんだ」


「え、用事って? ジュース買いに行くなら、俺らの分も頼む」


「ちげーよ。彼女とエッチしに行くんだ」


「あー、はいはい。彼女とエッチをしに……」


 連中が一斉に白く固まった。


「「「ええええええええええええええええええぇ!?」」」


 そして、絶叫する。


「おい、静かにしろ。また先生に怒られるぞ」


「いやいや、お前! 何を言っているの!?」


「お前こそ先生に怒られるぞ?」


「ていうか、今この場で俺らが処刑するぞ?」


 連中が一気に殺気立つ。


「分かった、口止め料を払う。だから、許してくれ」


「はん、いくら金を積まれようが俺らの受けた傷は癒えない……」


 ぴら、と俺は一枚の写真を連中の中心に落とす。


「「「こ、これは……」」」


 そこに写っていたのは、舞妓さん姿の桜子だ。


 しかも、ちょっと肩とか胸元をはだけたエロい感じのシーンである。


「「「ゴハッ……!?」」」


 アホ男子どもは一斉に吐血した。


「お、おまっ……」


「修学旅行中に何てプレイをしとるんだ……」


「け、けしからん……」


「あっそ。じゃあ、その写真はいらないな」


 俺がひょいと取り上げようとすると、


「「「いります!」」」


 奴らは一斉に引き留めた。


「おい、春日! これ焼き増ししてくれよ!」


「嫌だよ」


「頼む! 俺の全財産を捧げるから! 2万5千円!」


「バーカ。例え1億積まれてもやらねーよ。その一枚を芯までしゃぶりつくしてな」


「か、春日大明神……」


「パねぇ」


「ていうか、東条さんは怒らないのか? 俺らに写真を渡して」


「まあ、大丈夫なんじゃないか?」


「軽いなぁ。じゃあ、焼き増しをくれても……」


「やらねーよ」


「お前の頑固の基準は何だ?」


 半ば男子たちに呆れたように言われるのが屈辱だ。


「じゃあ、俺は桜子とエッチして来るから」


「「「後で詳細よろしく!」」」


「言わねーよ、バカ」


 俺はムサい男どもの部屋を後にした。




      ◇




『お前のエロい舞妓さん姿の写真を男子の連中にくれてやったけど良いよな?』


『は? ちょっ、まっ……バカなの? ねえ、バカなの?』


『落ち着けって。口止め料が必要だったんだよ。お前とエッチするためのな』


『エッチって……またチャhじゃない。ていうか、今どこに居るの? そこに押しかけて本当にエッチがしたい』


『男子トイレだよ。ちなみに、ちょっと前まで一人でしていたから』


『えっ』


『来るなら来れば?』


『……最低ね』


『じゃあ、やめるか? チャh』


『お願いします、やめないで下さい』


『あはは、欲しがりさんめ』


『う、うるさい』


『で、今日はどうだった? 舞妓さんになってみて』


『そうね……最初は恥ずかしかったけど、途中から楽しくなったわ』


『確かに、ノリノリだったな。肩とか胸とかはだけて、エッチかったよ』


『あ、あなたの命令でしょうが』


『命令なんて人聞きの悪い。ちなみに、その写真をアホ男子どもにあげたから』


『ぶっ殺すわよ?』


『まあまあ、落ち着けって。お前は俺の彼女だけど、元々は学園の星、引いてはアイドルみたいなもんだろ? だからさ、たまにはこういったサービスもありだろ?』


『また最もらしいことで言いくるめようとして……変態』


『うっ……』


『ど、どうしたの?』


『……いや、出たから』


『なっ……何を言っているの!?』


『おしっこだよ。何か最近、少しキレが悪くてな』


『ふざけんじゃないわよ、このエロ彼氏が!』


『じゃあ、別れようか』


『絶対に別れないから! 離婚届なんて書いてやるもんですか!』


『いや、まだ結婚してねーし』


『ふん……あ、今まだって言ったわよね? と言うことは、将来的には結婚してくれるのかしら?』


『だって、元からお前にそう脅されて付き合い始めたんじゃないか』


『べ、別に脅してなんかいないわよ』


『鉛筆で肩とか刺されて、あれ痛かったなぁ。最近はやらないけど』


『何よ、やって欲しいの?』


『別に。ていうか、お前はドMだから、本当は攻められる方が好きだろ?』


『ドMとか言うな。このドS彼氏』


『安心しろ。俺がドSなのはお前に対してだけだよ』


『ドズキュン!……って、そんな甘い言葉に騙されないんだからね!』


『好きだよ、桜子。マジで愛している。今すぐエッチしたい。お前を昇らせまくりたい』


『ちょっ、まっ……ハァハァ……し、死ぬ……呼吸困難になる』


『落ち着け。そういえば、大丈夫か?』


『な、何が?』


『いや、また同じ部屋の女子に痴態を見られたんじゃないかなって』


『安心してちょうだい。今、私はトイレに籠っているから』


『……まさか、お前と同じ思考回路だったなんて。一生の恥だ』


『ちょっと、どういう意味よ? ここはむしろ「わぁ、カップルで同じことをしていたなんて、嬉しい~♡」……ってなる所でしょうが』


『いや、メチャ萎えるわ。アホな桜子さんと同じ思考回路か~』


『も、もう~! 自分の彼女にアホアホ言うな!』


『アホ可愛い』


『全然嬉しくないわよ!』


 そんな下らないやり取りがあと10分くらい続いた。







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