40 誰も居ない教室で、彼女を弄ぶ

 文化祭が終わると、学園の雰囲気はまた落ち着いた。


「ふわぁ、ねみ」


 昼休み。


 桜子の弁当を食べた俺はあくびをした。


「そんな風に気を抜いている場合じゃないわよ。次は修学旅行があるんだから」


「ああ、そうだったな。俺ら学級委員が、そのまま修学旅行の委員も務めるんだっけ? 全く、面倒な役職に引き入れてくれたよな」


「何よ、私に対する嫌味?」


 桜子が睨む。


「けどまあ、お前とずっと二人きりだから良いか」


「ズキュン」


 ちなみに、俺と桜子は適当な空き教室にいた。


 そろそろ外の気温も寒くなって来る頃合いだから。


「とは言え、教室の中も寒いな」


「そうね」


 頷く桜子が、何やらモジモジとする。


「どうした?」


「いえ、その……くっつきたいなって」


「俺と?」


「他に誰がいるのよ」


 桜子が軽く睨む。


「良いよ、くっついても」


「もう、簡単に言ってくれちゃって。ムカつく男ね」


 ブツブツ文句を垂れつつも、桜子は俺にくっつく。


「……柔らかいな、おっぱいが」


「変態」


「けど、桜子のおっぱいは散々味わったからなぁ」


「スケベ野郎」


「今日は、別の所を味わって良いか?」


 俺が桜子の目を見て言うと、


「な、何をするつもり?」


 桜子は動揺しながら聞き返す。


 俺は視線を桜子の顔から耳に移す。


 ほんのり赤く染まったいじらしいそのお耳を、パクっとした。


「ひゃう!?」


「しっ、声が大きいぞ。誰かが通ったら、気付かれちまう」


「あ、あなたがいきなり私の耳を噛むからでしょうが」


「けど、美味しいな、お前の耳。もっと食べても良い?」


「このド変態……良いわよ」


「何だ、結局は欲しがりさんかよ」


「ぶっ殺すわよ」


 桜子さんの暴言に力はない。


 ふにゃふにゃとしている。


「じゃあ、改めて、いただきます」


 俺はまた桜子の耳を軽く噛む。


「あっ……」


 桜子はか細い声を漏らす。


「……ダ、ダメ」


「今さら遅いよ」


「バ、バカぁ……」


 すでに桜子はタジタジ状態だけど。


 俺は止まらずに、じっくりと桜子の耳を味わう。


「きれいな女は、耳もきれいなんだな」


「し、死ぬ……お願いだから、そんな風に甘い言葉を囁かないで」


「好きだよ、桜子」


「ドズキュウン!」


 桜子がビクンと震える。


「こら、大人しくしてろ。間違って耳を噛みちぎっちゃうだろうが」


「こ、光一しゃん……らめ」


「もう黙ってろ」


 俺は指先で桜子の口を塞ぎつつ、可愛らしいお耳を甘噛みする。


「お、お願い……ちょっとらけ、休憩させて……」


「じゃあ、ちょっとだけな」


 俺は桜子の耳からパッと口を離す。


「ハァ、ハァ……」


「はい、再スタート」


「ちょっ、はやっ……んにゃあああああぁん!」


「お、その鳴き声。ちょっと要石みたいだな。にゃ~んって」


「わ、私を弄んでおきながらあのクソ猫女の名前を出すなんて……本当に最低のクズ野郎ね」


「今さらだろ。じゃあ、別れるか?」


「しょんなの無理ぃ~!」


 桜子は軽く泣きべそをかく。


「冗談だよ。俺も、お前なしじゃもう生きられないよ。死ぬ時は一緒な?」


「こ、光一しゃん……うん、ずっと一緒だよ?」


「こんな甘えん坊な姿、他の奴らには見せられないな」


「うん……光一しゃんにだけ」


「良い子だな」


「あんっ……これも上手……」


「桜子の体のことは何でも知り尽しておきたいんだ。ごめんな、ワガママな彼氏で」


「ううん、好き……もっと私のことを知り尽して?」


「言ったな? 手加減しないぞ?」


「ドズキュキュキュン!」


「何だその鳴き声は? 可愛い女だな」


「も、もう死ぬ……」


 それから昼休みが終わるまで、ずっと二人でくっついていた。







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