集団で異世界に飛ばされた人々の設定にはなっているが、そこからは互いに助け合い日々を必死に生きようとする古き良き日本の姿が浮かび上がる。
時代劇の得意なこの作者が表現したかったものは、現代人から失われてしまった思いやりのある世界ではなかったか。ちらし寿司をその象徴として、誰もが皆、自分の得意な分野で活躍し、足らない部分を他の誰かが補い合う。こんな理想の社会は今や異世界に求めるしかないのが歯痒い。
本作は前回のブリ大根に続く傑作だが、もしかして、誕生祭をずっとこのシリーズで行くつもりなのだろうか? なるべくなら晩ご飯前に読んでおきたい小説である。