第2話 遭遇
私達はそれぞれの自宅へと一度戻り、再び学校へとやって来た。
「意外と残ってる生徒多いね...」
メイの呟きに頷く。
多分部活の人達だろう。目的の生徒は部活に入っていないので関係ないが...確か大会が近い部が多かったはずだ。
「えっと...その生徒って、私達と同学年だったよね?」
「確かそうだよ?」
取り敢えず私達は自身達の学年の階へと向かった。
「...流石に居ない、ね」
「うーん...誰かいると思ったんだけどなぁ...」
空振り。教室という教室全てに生徒はおろか教師も居なかった。
「今度は図書室!何か手がかりあるかも知れないし...」
「最近できた噂じゃ、本や新聞には無いかもよ?」
気を取り直して図書室へと向かう。最近できた新しい都市伝説のような噂は資料がなくとも、何かしら似たような事件があるかも知れない、と思ったからだ。
結果惨敗。似たような噂も事件も何も無かった...
「ダメだったね...」
哀れむように私を見て、メイは心配そうに呟く。だが私はへこたれない!
「こうなったら...メイ!街の怪しいところ探してみよっ!!」
「
「さっすが私の親友っ!」
図書室を出て、街へ繰り出す。
いつもの通学路も、こうして探していると違って見えるなぁ...
「この辺りはいつも通りだね...」
「そうだねぇ。行った事ないのはあとこっちの路地とかかなぁ?」
あまり踏み入らない路地の入口。薄暗いしなんだか出そうだ...
「なんかここ...」
「お化けが出そうだね」
「うわ!?なんで言っちゃうの!?怖くないの、メイ?」
「うん?だって普通に
いやいやいや...人間はそういうの、怖がるんだって...
「じゃ、じゃあ、行ってみようか...?」
「そろそろ日が暮れるし、さっと行っちゃおうか?」
「そ、そうしよう!」
メイってばそういうところは男前なのになぁ...
私はおっかなびっくり、メイは平然と路地裏に足を踏み入れた...が。
しばらく歩いても何もない...
「も、戻ろうか...?」
そんな提案をした時だった。
グチャッと何かの潰れるような、潰したような音...
「...綟華。聞こえた?」
「う、うん。私にも聞こえたから、ち、近いよね...?」
エルフの聴力は人間よりも優れている。そのメイと同じ音が聞こえたという事は、音源が近い。
慎重に路地の角を覗く、と...
「「!?」」
2人して息を呑んだ。
私達が見たのは暗がりで何かを食べている、人間の成人男性のような何者かの背中だった。
薄暗くてよく分からないが、
私達はお互いを見て頷き合い、そーっと
カラン...
無情にも側にあった空き缶が倒れた。
それと同時に、何者かはバッとこちらを振り返った。
今にも消えそうな電灯に照らされて見えたのは、口中に赤を付けた顔。目には何も映らず、虚ろ。
咥えているのは、肉片...後ろには明かに人型の死体...
私達は悲鳴も上げられず、その場に凍りついた。
その何者かは、警戒しながらもこちらに寄ってくる...その距離、およそ3m。
「め、メイ...」
「綟華、これ、どうしよう...」
2人は動けぬまま、近づく恐怖。残り2.5m...
鼻をひくひくさせて、2人を感知したようだ。舌舐めずり...く、喰われる!?
「あぁ!もうっ!!どうにでもなれ!」
「!?ら、綟華っ!?」
喰われるかもと思った瞬間、思い切りメイの手を引いて来た道を走った。
あれは、反射的に追いかけて来る...
ひたすら走る。
追う者も速度が上がる...
逃げきれない!?そう思った瞬間。
〔こっちだ!〕
「「!?」」
声。慌ててそちらへ曲がると
「え?ファ、ファミレス、の店員、さん...?」
〔説明は後。俺の後ろにいて〕
混乱する頭。路地に来たら変なモノに追いかけられて、ファミレスの店員さんが助けてくれた??
何がなんだか分からないけど、とにかく指示に従い2人で店員さんの後ろへ隠れる。
迫る何か。こちらの人数が増えた事に気付いたのだろうか?警戒しながら一歩一歩近付く...
〔また成り損ないか...今、楽にしてやるからな〕
「なり、そこない...??」
私達は首を傾げる。なんだ?何かになろうとしたのか?そもそもこれは一体なんなの??
〔2人共。さっきも言ったけど、説明は後で。そこから動かないでね?〕
「「はい!」」
〔よし!じゃ、やりますかっ!〕
私達の返事を聞いて、安心させるように笑った店員さんは、成り損ないと呼んだそれへ向かって行った。
成り損ないは店員さんを敵と認識したっぽい...唸り声を上げ、
まるで、抱きしめてやると言わんばかりに。
店員さんは出された両腕を見てジャンプ!そのまま背後へ。成り損ないは視界から消えた店員さんを一瞬見失う...
その一瞬の隙をみて、店員さんの強烈な上段回し蹴り!!見事成り損ないの首を直撃し、ぐにゃりとおかしな角度に曲がった。
「「......」」
私達2人はそれをじっと見守った。声なんて出せないくらいの速さで店員さんは動いていた...何者??
そのまま倒れた成り損ない。勝負決まったと思ったんだけど、起き上がった!?
ぐにゃりとおかしな方向に曲がった首をそのままに、跳ね上がるようにして立った...
〔ありゃりゃ...こりゃ、思った以上に強かったか...〕
少し困ったように首を傾げた店員さん。私達の方を見、成り損ないを見て
〔君達!!ごめん、頼まれてくれるかな?やっぱここで足止めしか出来なそうだわ...〕
「え!?それって、つまり...」
〔そ。俺には手に負えないって事で...その〝黒名刺〟に浮かび上がった通りにその先に進んで、助けを呼んできて欲しい〕
言われて〝黒名刺〟を見た。
私のにもメイのにも、そこに地図らしきものが浮かび、現在地で小さな丸が点滅していた。
〔行きたいと願って。そうすれば〈
「店員さん!?」
私達に指示出ししている間に、成り損ないが店員さん目掛けて何かを投げていた。
「綟華!行こう?」
「う、うん...」
メイに促されて、走り出す。
一度だけちらっと振り返ったが、薄暗くてよく分からなかった...
黒い名刺を見ながら、ただひたすらに店員さんの無事とお店へ行きたいという事だけを願って走った......
Phantom redemption〜暁ノ希望〜 夜季星 鬽影 @Micage
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