#4 腕時計は指し示す

「ふうん。また面倒な事件に巻き込まれてんのね、あんた」

「僕が巻き込まれたわけじゃないがな」

 バレンタインイベントの事件があって、偶然会った帳と事件のことを話して、その日の夜。僕はショッピングモールで保護者の悲哀と待ち合わせていた。

 悲哀。木野悲哀は決して僕の母親ではない。こいつは僕の母親面するけれど、全然、母親ではない。血は繋がっていないし、苗字から分かる通り僕はこいつの戸籍に入ってもいない。まあ、別に母親と呼んだところで問題があるわけでもないのだが……。と思おうとしたが、ショッピングモールで待ち合わせたこいつの姿を見てやっぱりやめにした。

 悲哀はグレーのパンツスーツに黒のコートを合わせ、黒いサングラスというなんかばっちり決まった格好で待っていた。このどことなくカタギに見えない四十二歳を親と呼ぶのはいろいろ面倒そうだ。

 事件のごたごたがあって、僕は予定の待ち合わせ時刻から少し遅れて到着した。遅れる旨は既にLINEで連絡をしていた。まあ、僕が事件に巻き込まれるのは日常茶飯事で、僕が四歳の頃から一緒にいる悲哀は慣れっこになっているから気にしないだろう。

 とはいえ会ってすぐに溜息を吐かれるくらいには、呆れられたらしいが。

「ともかく、大した事件じゃない。チョコアレルギーの子がいたもんで大ごとにはなったけどな」

「それはそれで大変でしょうに。で、首突っ込む気?」

「いや。今回は傍観だよ。そうそう上等高校で起きた事件に関わっていられない」

 それで話は打ち切って、僕たちは目的を果たすべく動いた。目的、と言ってしまうと大げさだな。なにせ僕たちが今からしようとしているのは、ただの夕食だ。

 我が(と表現するのも変だが)木野家は家事を僕と悲哀、それから妹の哀歌でローテーションしている。昨日は哀歌が食事当番だったが、今日は悲哀の当番である。そして各々が当番を満たすための手段は特に詮議されない。だから悲哀は大人の財力を駆使して、金銭で物事を解決しがちだ。食事当番になれば出前か外食で済ませ、掃除当番になればロボット掃除機を買ってくる、それが悲哀だ。

 ゆえに今日の食事当番も、木野家としてはいつも通りの日常として悲哀が外食で済ませようとしているという流れなのだ。

 ただ、今日の目的はそれだけではない。夕食の前に、済ませないといけないことがあった。だからショッピングモールなのだ。

「しかし寒いよねえ」

 悲哀は肩をすぼめる。モール内で寒いも何もあったものじゃないが、確かにここに来るまでの道中は寒かった。

 ショッピングモールまでは上等高校最寄りの弓矢橋駅から電車に乗って二駅移動し東岡崎駅に向かい、そこからさらに歩く必要があった。電車に乗っている間は良かったが、歩いている間は寒くて仕方がなかった。

「明日か明後日には雪が降るかもだってさ」

「そいつは嫌だな。そういえば」

 僕はこの場にいないもう一人に思いをはせた。

「哀歌は来なかったんだな」

「あの子、ちょっとここ最近忙しいみたいね。学校に遅くまで残るからご飯は自分で食べるって」

「そうか」

 雑に悲哀の言葉に応じていると、夕食前の目的地に到着する。それはモールの一角にある時計屋である。

 『村瀬時計店』と看板を掲げたその店は、壁一面に時計が掛けられている。ショーケースの中には高級そうな腕時計がピカピカに輝いて並んでいた。

「すみません」

 カウンターの向こうで腕時計を磨いていた店員に話しかける。

「電話で話した猫目石ですけど」

「猫目石さん? ああはい。少々お待ちを」

 名前を名乗っただけで用件は伝わった。すぐに店員は奥の方に引っ込んでいく。

 店員が戻ってくるまでの間、暇だったので僕は店内をぐるりと見渡した。時間はもう夜も遅くなっているので、わざわざ時計を見に来る客はいないだろう。店には誰も……。

 と、思ったら、一人いた。

 小さい女の子である。黒いダッフルコートに身を包んだ、おかっぱの女の子。誰かを待っているのか、それとも別の目的があるのか分からないが。時計屋の片隅でじっとしている。目線は壁の時計に向けられており、そこからまったく身じろぎしない。

 妙な雰囲気の子だ。

 目に生気や活力があまり感じられない。では死んでいるのかといえばそういう風でもない。生き死にとは別の領域に存在しているかのような、超然としたところがある。

 コートの裾から緋色のプリーツスカートが覗いている。緋色の制服……というと、哀歌も通っている朱雀女学院の赤いセーラー服だろうかあれは。

 あの学校、変な子が多いからな。なんなら帳も笹原もあそこの中等部出身だし。朱雀の生徒だと思うと、途端に彼女の纏う奇妙な雰囲気もしっくりくるような気がした。

「お待たせしました」

 奥から店員が戻ってくる。そちらを一度見て、また女の子の方を見ると、彼女は時計屋の外に誰かを見つけたのか、目線を動かして、それから歩いて出ていく。

「すみません、修理に時間がかかってしまいまして」

「いえ、直してもらっただけ助かります」

 店員がトレイに載せて持ってきたのは、コーラルピンクのバンドが特徴的な女性ものの腕時計である。文字盤には緑の蔦がアラベスク模様を描いている。長針と短針はそれぞれ黒と白の柱を模している。

 ウェイト版タロット大アルカナ三番目のカード、女教皇をモチーフに造られた腕時計。これは中学時代、僕が帳にプレゼントしたもので。

 『堕ちる帳』事件の時、体育館の屋上から彼女が落下したとき壊れてしまっていたものだった。

 回収して修理に出していた。ただ、パーツが中々手に入らなかったとかで、つい先日になってようやく修理ができたという連絡が来たのだった。

 腕時計が、僕の手に戻る。

 これでなんか、ようやくすべてが元に戻った気がした。帳が意識を取り戻しても、健康状態を回復してもこの腕時計が戻るまではなかなか全部が解決したような気分にはならなかった。

「いやあ、なにぶん貴重な時計なので修理に苦労しました」

 本当に苦労したのだろう。店員がそんなことを言う。

「そんなに貴重なの?」

 悲哀が相槌を打つ。

「ええ。世界的にも有名な時計職人の造った時計ですよ、これ。タロットの大アルカナをモチーフに造られた世界に一本しかない時計です。まさかご存じなかったんですか?」

「どうなの買った人」

「僕も知らなかった」

 アンティークショップで買ったからな。中学生の僕にとっては高値だったけれど、そんなに貴重な時計だとは思わないくらいの値段だったぞ。

「帳はひょっとしたら知ってたかもな。こういうの詳しそうだし」

「そう? あの子、時計とかアクセサリーには興味なさそうじゃない?」

 僕と悲哀で見解が分かれる。悲哀は悲哀で帳のことを長年見ているから、決して的を外した推測というわけでもないだろう。

「ではこの書類にサインを」

「はい」

 渡された書類に、その場でサインをする。すぐにサインした書類を店員が回収する。腕時計のショーケースになっているカウンターの上で書いていたので、書類が回収されるときらきらと眩しい腕時計たちが顔を覗かせた。

「……………………ん?」

 その中に、一本。

 気になるものがあった。

「どうしたの?」

 悲哀が聞いてくる。

 僕はその声に応えず、じっと時計を見た。

「……これは」

 どこかで見たことがある。

 その腕時計は、文字盤に紫色の雪の結晶があしらわれている。おそらく紫色のガラスの粒を繋ぎ合わせて作られているのだろう、キラキラと結晶は光を反射させている。

「この腕時計、どこかで見たことがあるんだよな」

「ふうん」

 悲哀は興味なさげに呟く。悲哀はあまり覚えがなさそうだ。悲哀が見たことなくて、僕が見たことのある時計。どこかで…………。

 ちらりと、自分の腕時計を見る。黒い、オーバースペックな黒いダイバーウォッチ。なんだろう、この時計と関係があったような。

 なんだっけ?

 確か僕の今身に着けている時計は、夏休みに起きた『ミステリアスラグーン』事件で手に入れたものだ。あの事件は、そもそもの発端が蒲郡にあるリゾート施設ミステリアスラグーンでミステリーラリーが開催されたことで……。そのラリーの一等賞の景品がこの腕時計なのである。

 そういえば、僕が巻き込まれたのって扇さんのせいなんだよな。扇さんがこの腕時計をいたく欲しがったのだ。でもなんでだっけ? 扇さんのことだから、この腕時計がどうしても欲しければ雪垣のやつを頼るはずだ。蛇蝎のごとく嫌っている僕を頼ったのは、どうしてか雪垣のやつに頼れなかったんじゃなかったっけ……。

「ああ」

 思い出した。

 扇さん、雪垣に腕時計をプレゼントしたくて欲しがっていたのだ。結局、自分の力で手に入れてない、どころか嫌っている僕の力を借りたのがやはり後ろ暗かったのかプレゼントは諦めて、行き場のなくなった時計は僕に贈られることになった。

 そう考えると扇さん、義理チョコどころじゃないもの僕にくれているな。この分だと、チョコ入れ替え事件も少しは解決に協力しないと僕の方が彼女に貸しを作りそうだ。

 で、今ショーケースにある腕時計の話だ。

 なんで扇さんが雪垣のやつに腕時計を上げたがっていたのかというと、当の雪垣が腕時計を一本持っていたのだ。やつの想い人である、葡萄ヶ崎伊利亜という人から送ってもらった腕時計。そりゃあ、雪垣のことを想っている扇さんにしてみれば面白くないので、自分も時計をプレゼントしてイーブンに立ちたかったというわけだ。

 雪垣がしていたというその腕時計が、扇さんの話だと紫の雪の結晶が文字盤にあるというやつだったな。僕とやつは高校の三年間同じクラスだったので、その腕時計を見たこともある。だから見覚えがあったのだ。

 でも確か、『堕ちる帳』事件のとき、やつの腕時計も壊れたんじゃなかったか。というか僕が壊したのか。

 雪垣と殺し合いしたときに。

「なるほどなあ」

「なに一人で納得してんの?」

「いや、記憶の端に引っかかってたのを思い出してスッキリしたんだよ」

 でも…………。

 この腕時計、少し違う気がするな。

「この腕時計、こんなに紫色だったか?」

 腕時計全体が、メタリックパープルで構成されている。これはちょっとやりすぎというか目立ち過ぎだ。こんなに派手なら僕の記憶にももう少し鮮明に残っていそうなものだが。

「それ、店員の私が言うのもあれですが少しデザインが奇抜ですよねえ」

 と、店員すら言ってしまう始末だ。

「実は冬期モデルとして数年前に出したものの改修モデルなんですが、前回より派手過ぎまして……。売れないんですよねえ」

「へえ…………」

 店員の言葉を端に聞きながら、僕は少し考える。

 なんだろう。なにか。

 この腕時計が、重大な意味を持つ。そんな未来が。

 

「悲哀」

「なに?」

「この腕時計、買おう。僕は持ち合わせがないから出してくれ」

「…………ほう?」

 驚いたような表情をして、悲哀が僕を見る。

「どったの? その腕時計、そんなに気に入った?」

「僕がつけるわけじゃないが……ともかく、そういうのはどうでもいいんだよ。頼む」

「ふうん。まあいいよ。あんたが物をねだるなんてそうそうないし」

 持つべきものは金銭感覚のルーズな保護者だ。あるいはねだられた物を買うと親っぽいことをしているなと思える親失格の保護者か。

「ありがとうございます。では、梱包させていただいて……」

 帳の腕時計と買った腕時計は、それぞれ細長い箱に収められる。それを僕は受け取って、制服のブレザーの内ポケットに仕舞った。

「さて、目的も達成したし」

 ぐっと、悲哀が体を伸ばした。

「ご飯食べに行こう。すっかり遅くなっちゃった」

「そうだな」

 僕たちは時計店を出て、レストラン街の方へ足を運んでいく。専門店街は時間も時間だったので人はまばらだったが、レストラン街に近づくにつれ、夕飯時というのもあって人は増えていく。

 通り過ぎていく人たちを見ると、少し気になるのは、学校の制服姿の人間がちらほらと見えることだった。親御連れのようだが、さっきの女の子といい、どういうわけだか。

「ああ、今日は私立高校の一般入試が終わったのね」

 僕が疑問に思っていることには、悲哀が応えてくれる。

「一段落してお祝いって感じかな」

「お祝いには早すぎる気もするがな」

「前祝よ。それに入試が終わったら、あとはもう待つしかないんだからお祝いしてもいいじゃん」

 どういう理屈だ。

「そうだ。うちのNPOで面倒見てる連中も高校入試が近かったんじゃないのか?」

「ああ、それ? 連中って言ってもうちで面倒見てるので、高校入試があったのは東南北にしないくんだけね。それに彼、上等高校に推薦で入ったし」

「そうだったか……意外と勉強できたんだな」

「真面目なのと図体がでかいのが取り柄みたいな子だし」

 ヤクザの元跡取り息子なんだけどな、彼。ヤクザの息子が真面目ってすごいギャップだな。

「彼、入学したら弁論部に行こうかって言ってた」

「やめとけって言っとけ。彼に笹原の面倒を見させるわけにもいかない」

「笹原ちゃんが彼の面倒見る訳じゃないのね……」

 ああ、笹原で思い出した。悲哀に聞いておくべきことがあったんだったな。

「そうだ。悲哀、名探偵+αって知ってるか?」

「めい…………へ?」

 悲哀は珍しいことに僕の言葉に反応しきれずにキョトンとした。

 どうも妙な反応だ。

「名探偵+α。笹原が言うには警視庁唯一の黙認探偵、宇津木博士それ以前の名探偵だとかなんとか……。二人組で、一人の名前は分からないがもう一人の名前が七色七だとさ」

「うーん」

 少し考える様に、悲哀は頭を掻く。

「さてね。知らないや」

 どうも、その反応には取り繕ったところがあった。

「それにしてもあんたが探偵業界に興味持つなんて珍しいじゃん。やっぱり卒業が近くなると気にしはじめる感じ?」

「そういうわけじゃなくてだな……。というか本当に知らないのか、お前なんか隠してないか?」

「隠してないでーす」

 うっざ。

「それにしても名探偵以前の名探偵ねえ。今更そんな話が出てくるなんて妙なこともあるもんね」

「どうだかな。宇津木さんが亡くなって、随分騒いだが……もう騒ぎ切って別の話題を探してるのかもな」

 僕にしてはどうでもいいことだ……とは言い難いんだよなあ、

「しかし悲哀でも知らないとなると……なあ」

「咲口くんにでも聞いたら?」

「あの刑事に? 生活安全課だぞ」

 咲口刑事。僕は以前も言ったように、十八年という短い人生で山盛りの事件に巻き込まれ、しかし馴染みの刑事というのはできなかった。まあ、実のところ最近は八月の『タロット館』事件と『殺人恋文』事件の連続発生を重く見た警察から、専任の刑事をつけられてはいたのだが、馴染みという感覚には程遠いのが実情だ。

 一方、紫崎の雪垣である。やつは僕のことを「事件を引き寄せる体質」なんて言ってくれやがったが、やつも負けないくらいの事件誘発性体質である。小学生時分には母親が首吊り自殺して、中学生時分は一緒に新興宗教の総本山に拉致らりたりもした。そういうこともあり、なぜかあいつには馴染みの刑事という者がいる。それが咲口さんなのである。

 とはいえ彼は生活安全課。まさか名探偵+αを知っているとは思えない。宇津木さんのことすら知っているか怪しいくらいだ。

 でも咲口さん、生活安全課の癖にたまに殺人事件に出張るからな。『殺人恋文』事件の時もそうだったし、文化祭の時もそうだった。あの辺の管轄は、警察組織に疎い僕には分からない。

「他にこういうのに詳しいのは……誰だろうな」

「誰も詳しくないんじゃない?」

 すっとぼける悲哀が言う。お前が何か隠しているという線が一番濃厚なんだがな。

 悲哀の昔のことを知ってるのは、僕の周りじゃ牙城さんくらいか。今度会ったら聞いてみるか。

「ところで何食べる? せっかくのバレンタインだし、チョコレートファウンテンとか?」

「夕飯までチョコの必要はないだろう……」

 しかもチョコ食べてぶっ倒れた人がいた事件の直後に食べさせようと思うか? まあ、僕は気にしないし、それを分かってこいつも言っているんだろうけど。

「なんかその辺のファミレスに入ろう」

「そだね」

 僕たちが言い合いながら、ファミレスを目指して歩を進めていると、二人組とすれ違う。おやと思って見てみると、さっき時計店にいたあの女の子だ。父親らしい、悲哀と年のころの近しい男性と手を繋いで歩いている。

 だから何だ、という話だが、もちろん、ただすれ違っただけならこんな話はしない。

 問題は。

「……………………!」

 その男性を見た悲哀が立ち止まり。

「……………………あれ」

 悲哀を見た男性の方も立ち止まったことだ。

「ひょっとして、かい?」

 と、男性は呼び掛けた。

 なな?

「え、えーっと…………」

 悲哀は明確にきょどりはじめた。目が泳いでる。

「こんなところで会うなんて、奇遇だな。三十年ぶりくらいかい?」

「はは、ああ………………」

 どうした?

 実のところ、悲哀には男の知り合いは多い。知り合い、というほど牧歌的な関係性ではないが。

 牙城さんのような一部の例外を除き、悲哀にとって男性の知り合いとは大半が過去にしたことのある人間のことを指している。なにせこの女、僕と知り合う前は多くの男と愛人関係を結び、それをわざと露呈させることでその男の家庭を崩壊させることを楽しむ本物の悪魔だったからだ。

 別にその当時のこいつが何者だったところで、実の息子ではない僕としてはどうでもいいので放置している事実だが。しかし今この場面になってみると、そうも言っていられない。

 偶然眼の前に現れた男性が、そういう悲哀の被害者である可能性は大いにあるからだ。

 しかし、どうもその男性、いかにも紳士然としていて悲哀に対しても温和な態度を取っている。愛人を作りそうなタイプには見えないし、事実そういう悲哀と関係したふうでもなさそうだ。

 しかも三十年ぶりくらいと言っていなかったか? 当年四十二のこいつの三十年前って少女時代だろう。

 つまりこの男性は、悲哀のかなり昔を知っている。こいつがふざけて愛人時代のことは話す一方で、そういえば一切話してこなかった幼少期のことを。

 ………………それ以前に!

 今って呼ばなかったか!?

「あー、えっと……」

 悲哀はあっちを見て、こっちを見てと焦点が定まらない。僕はただ茫然として、悲哀とその男性、それから男性のつれていた女の子を見ていた。女の子の方は何を思ったのか、じっと僕の方を凝視してくる。

 そして…………。

「うわああっ!」

「うわああ?」

 混乱の極致に辿り着いたらしい悲哀の取った行動は、奇声を発してその場に屈むことだった。

 いやうわああってお前。

 これ、どうするんだよ。

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