異世界オリンピア運営委員会

真偽ゆらり

最高のお祭りを作るモノ

 えーと、ち、ちきゅうの皆さんはじめまして。

 わ、私は、えっと何だったっけ、そうだ異世界、異世界の人です。

 こう言えば通じるって聞いたんですけど、本当に通じてるんですかね。ちきゅうってどこの都市なんでしょうか。まあ、いいです。これも仕事、仕事。

 え、まだ記録してるんですか? 余計なとこは記録しないでください。


 おほん、私は四年に一度の祭典を運営する委員会のメンバーです。

 えっと、名前はぷらいばしー? が何とかで出しちゃダメらしいので何と呼んでもらいましょう。

 はい、スケベな異世界人? ちょ、ちょっと失礼ですね、そそそ、そんなことないですからね。あ、そうだ、それだと、他のメンバーも何人か当てはまっちゃうから他のでお願いします。

 自分で考えろと? そうですね、では筋肉愛な異世界とでも呼んでください。

 え、あ、はい、じんが抜けてる? 


 改めまして、『四年に一度の祭典』運営委員会の筋肉愛な異世界人です。長いですね。

 この四年に一度の祭典、それなりに歴史が長いんですけど正式な名称が無いんですよ。

 全裸で正々堂々と競技を行う由緒あるお祭りなんですが、大勢の人に認知されるようになってきたのがここ十年くらいのことなんです。

 知られ始めて、今年で三回目の開催ですね。

 以前はコアなファンやソッチ系の趣味な人くらいしか観にこなかったので問題なかったんですけど、何かいい名称ありませんかね。


 はい? ちきゅうではオリンピック? と言う似たようなお祭りがあるのですか。ただ、こちらと違い専用の服を着ていて、球技や格闘技も行うと。

 何故服を……何故……着る必要が。

 すいません、そらそろ会議の時間なので失礼しますね。そのオリンピックの事は会議の議題に入れておきます。ありがとうございました。

 ではまた後日お会いしましょう。




 ちきゅうの皆さんお久しぶりです。筋肉愛な異世界人です。

 え、記録上では前回のあと直ぐなんですか。

 先に言ってくださいよ。


 それはそうと、祭典の名前決まりましたよ。

 『異世界オリンピア』です。

 こっちのこと、『ちきゅう』では異世界って言うんですよね? それとオリンピックだとそのままだから、少し変えてオリンピアにしたんです。

 オリンピアは都市の名前? ちきゅうにはそんな名前の都市があるんですね。

 じゃあ、ここの都市の名前は『リンポス』で申請しときます。

 それと、次回から球技や格闘技の競技も追加することになりました。今は二、三種類しかそっちの競技ありませんでしたから。

 

 さて、今回はもうすぐ完成予定の陸上競技場を紹介します。

 選手が競技するスペースをグルリと囲むように観客席が建てられています。

 画期的なのは全体を見えるように観客席を高く階段状にしたこと。これにより、観客席の下に選手の控え室や医務室等を設置できるようになって運営がグッと楽になるんです。

 え、大したことない? ふ、ふーん……ちきゅうは進んでるんすね。

 どうしましょう、これ今回の目玉だったんですがちきゅうの方には大したことないなんて……。


 あ、はい、わかりました。それでは、各競技場に設置され魔法についてご説明します。

 それは、この祭典の知名度を高め要因となった魔法です。

 その名も対覗き魔法不自然な光です。

 これは胸や股間など見られたくない部分を不自然な光等で直視できなくする超高等魔法なんですよ。

 しかも、この魔法を作ったのは両親と一緒に温泉に入りたがった当時六歳の子ど……、このカンペ本当なんですか? 本当なんですね。

 その子が作り出した魔法を近所に住むスゴイ人が術式に落とし込んで完成したのが、この魔法なんだそうです。スゴイ人ってなんですか……。

 ちなみにその子は現在、両親の経営する旅館で温泉卵を作っているそうです。絶品だから食ってこいって……だったら給料上げてくださいよ委員長。


 おほん、話が逸れましたね。この対覗き魔法のお陰で女性競技者が増えたんです。そしたら、観戦客が一気に増えて知名度が上がったんです。

 観戦券購入時に祭典で見た魔法を口外しないように魔法契約をさせたことで、全裸を期待したままのスケベ達によって観戦客が抽選でしか購入できないくらい人気が出ました。あ、コレ秘密ですよ。

 そういえば、抽選が当たってスゴイ喜んでる女冒険者の方がいましたね。転売するためとか言ってましたが、あの顔は観戦する気満々でしたね。彼女は私と同族でしょう。縁があれば仲間に引き摺り込みます。


 そうそう、魔法で思い出しました。

 この祭典を紹介する上で忘れちゃいけない人がいました。

 売り子のお姉さんです。

 観客が観戦を心地よく楽しむ為に、観戦のお供に軽食やお酒を売り歩きます。

 一気に増えた観客に対応する為に分身して、酒樽や食料品をいくつも宙に浮かべる術を身に付けた売り子のエキスパートです。

 私が子供の頃からお姉さんですよこの人。きっと私がお婆ちゃんになってもお姉さんな気がします。

 機嫌が良いと、お酒を水龍みたく操って注いでくれるので楽しみにしておくといいです。


 そろそろ時間なんですが、最後に言っておくことですか。そうですね、裸体が目的で来るのであれば陸上競技ではない方がいいですね。防護布をつけて行う競技の方が光より布で隠してる分ギリギリですよ。まぁ、ポロリしても対覗き魔法で見えないんですけどね。


 それでは次回またお会いしましょう。

 次回って言っても記録的には直ぐかな。

 え、次回って祭典終わった後なの……。










 無事に祭典が終わりました。

 大盛況でした。

 はじめはスケベな冒険者さんだった人も終わりにはファンになって選手に声援を送ってました。

 全力で競い合った選手達はお互いの健闘を称えあっています。良いものですね。


 対覗き魔法の導入に私は反対派でした。

 でも、それは直ぐにどうでもよくなりました。

 対覗き魔法を導入した祭典は例年と比べて大きく盛り上がりました。

 その時、私は思ったのです。

 祭りを最高のお祭りにするには、運営する者、出し物をする者(競技者)だけでは足りないと。

 お祭りを楽しむ人がいて、はじめて最高のお祭りになり得るのだと。そう思ったのです。

 

 ちきゅうでも四年一度の祭典があるそうですね。

 それも開催間近だとか。

 あなた達の祭典を運営するのは役員でしょう。

 その祭典の主役は選手達でしょう。

 でも、祭典を完成させるのはそれを観て、応援して、楽しみ、盛り上がる、あなた達だと思います。

 

 もし、祭典の開催が危ぶまれているのなら、まず思い出しください。あなたは、その祭典を楽しみにしていませんでしたか? 応援したい選手がいませんでしたか? 胸に手を当て想像してください。

 なんとかしたいと思いませんか。

 あなた一人では大したことはできないかもしれません。でも、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけなら何かできることがあるかもしれません。

 ほんのちょっとでも、集まれば大きな力となるでしょう。あなたの起こした波紋が大きな波となって何かを変えるかもしれません。あるいは、沢山の波紋が混ざり合って大きな波となるかもしれません。

 


 異世界より、あなた方の祭典の開催と成功を祈ります。筋肉愛な異世界人。

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