…2ノ月29ノ日…


…2ノ月29ノ日…

 魔物が出た。

 人間の大人の倍はあるかもしれない大きさだって、村の外に出てたおじさんが言ってた。


 それは昨日の事だ。

 いつも通りの日課を熟している時、村の外へ雪解けキノコを採りに行っていたおじさんが見たんだって、大慌てで帰ってきた。

 クマみたいなやつで、でもその口はクマ以上に大きくて、人間だって一口で食べちまうかもしれないって言って。

 おじさんだけじゃなくて、一緒に行ってた人も同じモノを見たって言ってて、昨日はその話で村中が持ち切り。

 見間違いかどうか、その判断も出来なくて、それでも本当に魔物だったら、こんな小さな村は襲われてでもしたらひとたまりもなくて。

 昨日はその対策を村総出で頑張ってた。

 だから日記を付ける気力も無くて、いつの間にか眠っちゃった。


 今日も魔物対策の続き。

 村の周りに罠を仕掛けたり、何かが通ったらわかるように音のなるヤツも作った。

 元々あった村を囲うように建てられてた木の柵を補強して…、結果的に柵どころか、もう壁みたいになってる。

 男手はそれで手いっぱいだから、女手はそんな男の人達を支えるために、美味しいご飯を作ったり…、でも、やっぱり一番の疲れる原因は魔物の存在。

 いつ来るかもわからない、そもそも来ないかもしれない。

 いるかどうかも、自分で見た訳じゃないからわからない。

 わからないことだらけで、不安で不安で…、それだけで気が滅入っっちゃう。


 村長が、街の方へ魔物討伐の依頼を出しに人を送ったけど、大人の人達は不安顔だった。


 なんでか…てお母さんに聞いたら、依頼を受けてもらえないかもって。


 元々魔物は、出てすぐに各地に配属されてる騎士団の人達が討伐しているから、こんな事は滅多にないらしい。

 私も、記憶にある限り、魔物が出て、こんなに大変な思い…怖い思いをした覚えはない。

 それだけ魔物駆除の動きは、昔に比べて早くなったんだって。

 でも、この村は国の中でも隅っこにあって、ちゃんと手が回ってないって。

 私が小さい頃も、魔物が出たかも…なんて話はあったらしいけど、村の外から流れてきた噂程度で、いつの間にかそれは無くなっていたらしい。

 だから、村の近くで魔物が出たって話はあまり聞かないんだって。


 でも、じゃあなんで皆はそんな不安そうな顔をしているのだろう。

 なんで、依頼を受けてもらえないかも…なんて、お母さんは言ったんだろう。


 成人済みの人達総出で、昨日から交代で夜の見張りをする事になってる。

 これから私もその見張り番だ。

 だから今日は、日記を書くの終わり。

 眠いけど、頑張らないと。


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