…2ノ月27ノ日…


…2ノ月27ノ日…

 今日も今日とて、いつも通りの目覚め。

 お日様が上り始めた頃に目を覚まし、お母さんと一緒に、朝ごはんの準備をする事から始まる1日。

 ご飯を食べ終われば、その後はお昼まで家で刺繍の作業…、これは春になった後、街に出て売るための商品だ。

 街まで出なくても、商人の人がこの村に立ち寄れば、その時に買ってもらったりするんだけど、今この村に滞在してるアムールさんは、そういう手ぬぐいとか服とか、そういうモノは売らないみたい。


 家の手伝いを終え、お昼ご飯を食べ終わったら、その後の家の手伝いをお休みさせてもらって、アムールさんの所へと足を延ばす。

 昨日の約束、彼の事を教えてもらうためだ。


 アムールさんは、10年前、丁度私と同じくらいの歳の時、気づいたら王都の近くの森の中に立ってたんだって。

 不思議な話だ。

 何かの魔法を受けた被害者か、それとも、その魔法を使った魔法使い本人なのか、アムールさんにもわからないみたい。

 そもそも、それまでの記憶が無いんだって。

 気が付いたらそこに居て、そこからが全ての始まり…、怖くもあるけど不思議な話だ。

 その後で、王都直属の騎士団が、彼の事を探しに来てくれたから、もしかしたら貴族様とか、そういう位の高い人なのかも。

 でもそれなら…行商人なんてやってない…か?


 王都の騎士団に助けられたアムールさんは、自分の事がわからず、自分の事を知っている人もおらず、途方に暮れながらも、手に職を付ける意味もあって騎士団に入団。

 だからすごい体付きだし、剣も使えるんだね。


 騎士団…、なんか憧れちゃう。

 そんな事を言えば、お母さんに…あなた、また男の子みたいな事を言って…なんて、嫌な顔されちゃうんだけど…。

 だからここに自分の気持ちを書く。


 騎士ってすんごい格好良いと思うッ!


 まぁそれは置いておいて、騎士団に入ったアムールさんだけど、今はその騎士団を抜けて、行商人としてあちこちを転々としてるのはなんでなんだろうか。

 これは何回聞いても教えてくれなかった。

 興味はあるけど、あまりしつこく聞くのは悪いよね。


 明日は家の手伝いを休んだ分、いつも以上に頑張ってやらないと。

 ちょっとだけ憂鬱だけど、わがままを許してもらったんだから、頑張らないと。


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