綴られゆく日記
…2ノ月25ノ日…
…2ノ月25ノ日…
今日から私は日記を付けていこうと思う。
理由は単純だ。
今日は、私にとっての分岐点だったから。
この世に生まれ落ち、生きていく中で、子供の時間は他愛ない日々が続くけど、今日はそんな日々にお別れを告げる日。
そう…、今日、今後の道を自分で決める事ができるようになる成人の儀が行われたからだ。
しかも、私の誕生日でもある。
これほど運命的な日が他にあるだろうか。
いや無いよ、断言できる。
成人、つまりは大人になる日、そしてその日を終えようとしている私は、もう子供ではなく大人だ。
大人の女性…と比較したら、体形は近くないし、誰も勝てないぐらいの完璧な体をしているという訳でもないけど…。
そんなでも、唯一誇れる事があるとすれば、同年代の中では一番身長が高いという所か…、と言っても、次に大きな子とはほんの少ししか変わらないけどね。
とにかく…とにかくだよ。
そんな成人の儀の今日、山奥の残念ながら大きくもないこんな村に、行商人が来た。
村の背にある山、その山を越えるのだとか。
それで、まだ肌寒く、運が悪ければ雪だって振るかもしれない季節、まだ山越えには危ないからって、あと少し気温が暖かくなるまで、その行商人の人がここで暮らす事になった。
そして、今まさに日記を書いているこの本も、その行商人の人から買ったものだ。
まぁ仕入れていた荷物の中に混じっていた傷物の本らしく、買い手に困ってたみたいで、買ってくれるなら安くするよ…なんて言われたから、何となく衝動的に買っちゃったんだけどね。
貯蓄の大半を飛ばす結果になったけど、でも後悔はない。
成人の儀の日に手に入れた本だから。
ちゃんとした本なんて、どれだけ働けば手に入るんだ…と思えるぐらいに高いし、それを早く手放したいからとはいえ安く売ってもらえたんだから、これはまさに運命だよ。
だから、今日は色んな意味で特別な日。
いろんな事に手を伸ばせるようになった日…、そして、手を伸ばした日…。
分岐点は特異点になる。
今日という日が、これからたくさんの幸せを手にできると…選択した日と願ってる。
だからその幸せを1つたりとも忘れないように、この日記を書き続けるよ。
誰に見せる訳でもない、自分だけの日記だけど、私は今、すっごく胸が躍ってる。
お休み、今日という素晴らしい日。
待っていて、明日という幸せを届けてくれる日。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます