11.招待




「もうだいじょうぶだよ、とおうじさまはいいました」


「……ザク、読むの下手ですのね。感情が込もってませんわ」


半眼になるお嬢は、これなら声が小さくてもカトリンの方がマシだと言う。


「なら、お嬢が読んでくれよ」


「それでは、勉強にならないでしょう」


「わかってるけど……」


微かに雨音が届く客室で、二人ソファに並んで絵本を読む。雨で泊まりになる日はこれが日課となった。事情を知っているメイドのカトリンさんも一緒にいて、俺たちが休憩するタイミングで紅茶を淹れてくれる。

俺が読むと、どうしても文字を追うので精一杯になって棒読みになる。普段、文章なんて読む機会がなくて、このときにしか練習できないのも理由だ。カッコ悪いからこっそり自習できたらいいが、本なんて高価なもの買うぐらいなら俺は植物の種や苗を買う。

お嬢の指摘を合いの手に、俺は棒読みのまま、どうにか最後まで読み切った。すると、お嬢が次の絵本を出してくる。


「次はこれですわっ」


「えー、まだ読むのかよ」


ちょっと口が疲れたと思ったら、カトリンさんが静かに淹れたての紅茶をテーブルに置いた。絶妙のタイミングに俺は感心する。メイドさんって凄い。お嬢もカトリンさんの紅茶を無下にはできない。おかげで、小休憩を挟むことができた。

あったかい紅茶で一息きながら、俺は思ったことを訊く。


「お嬢、王子が出てくる本いっぱい持ってるんだな」


「姫の呪いを解いたり、悪いドラゴンを倒してくれたり素敵じゃない」


浪漫だとうっとりするお嬢に、呪いを解くなら魔法使いでもいいし、魔物を倒すなら騎士の方が適任なんじゃ、と思ったが黙っておく。女子ってほんと王子様とか好きだな。


「金髪ばっかなのはなんで?」


金髪が趣味なんだろうか。そういえば、前世の妹が王子や姫は金髪碧眼が王道だとか言ってたな。


「それは王族の象徴だからですわ」


「王族の人って金髪なの?」


「ええ。金の髪でも輝くほどの金は純血の王族の証と言われていますの。瞳も金に近いほど王族の血が濃いとされてますわ」


「へぇ、じゃあ公爵様も?」


「お父様のお祖母ばあ様が当時の王女殿下だそうですわ」


自分の家の血統が誇らしいのだろう、公爵様の話になるとお嬢は威張るように胸を張って答える。しかし、道理で公爵様はキラキラしている訳だ。俺は納得する。

この国で描かれた絵本は王族がモデルになるから金髪が普通だと解った。きっと他の国のは違うんだろう。


「ふぅん、王族って見た目も派手なんだな。俺は、お嬢の薄い金のが眼に優しくて好きだけど」


絵本でも後光付きで描かれる王子様を見ながらぼやく。会うことがない身分でよかった。公爵様以上の眩しい金髪なんて目に痛すぎる。


「で、今度はコレを読めばいいんだよな。お嬢?」


声が返らないのを不思議に思って隣を見ると、髪を両手で握り絞めて顔を赤くしたお嬢がいた。なんかすごい悔しそう。それ、せっかくのセットが乱れないか?


「どした?」


訊くと無言で睨まれる。俺、何か気に障ることでも言ったのだろうか。それとも、練習のためとはいえ、俺の棒読みじゃ絵本が面白くないのか。


「ごめんな? 今度はもうちょい科白セリフっぽく言えるようにするから」


「……ザクは一生棒読みでいいですわ」


「なんだその呪い」


いきなり理不尽な呪詛を呟かれる。お嬢の呪いのせいか、結局二冊目の朗読も始終棒読みになった。

そんなやり取りがあって数日後、俺は相変わらず雑草抜きをしていた。太陽を浴びて精力的に緑が伸びる夏は、いくら雑草抜きをしても足りないくらいだ。夏の太陽にやられてくれたらいいが、そうなると肝心の花や雑草以外の木々の方が先に根負けするから、これぐらいがいいのかもしれない。人員追加がいるぐらいになったら、庭師ギルドに派遣要請とエルンスト家にその間の警備強化依頼をしないといけない。それは寡黙な親父も俺も面倒だ。


弟子が増えればいいんだけどな。


作業が多い時期は思ってしまう。ぶっちゃけバウムゲルトナー家は世襲制じゃない。庭師の技術とエルンスト家への忠義さえ受け継げばいいから、血は関係ない。下町では親のやっている仕事を目指す奴が多いので、世襲制っぽく見えるだけ。俺の両親は継いでほしいなんて言ったこともないし、近所の親たちもできれば継いでほしい程度だ。

庭師ギルドに行くと、もう家としてではなく最初の家の名を流派名として活動している団体をよく見る。結局世襲制っぽくなっている俺ん家の方が珍しい。

バウムゲルトナー家は、王都付近では庭師の最難関と噂されている。俺は王城が最難関と思っていたが、規模に比例して人員がいるので及第点を設けて警備を強化することで対応しているらしい。そんなに厳しいのか、俺にはよく解らない。下積み時代が雑用ばかりなんて普通だろうし。とりあえず、世間的には厳しいため今のところ俺以外の弟子がいない。


祖父じいちゃんは、絶対手伝ってくれないだろうなぁ。


まだ五十にもなっていない祖父ちゃんはバリバリ現役だ。けど、エルンスト家専属は親父に継いで引退しているので、きっぱり手伝わない宣言をされている。今は、広いアーベントロート国の方々に祖母ばあちゃんと旅行がてら、珍しい植物を仕入れてくれている。この辺りに自生していない植物をいつも土産に持って帰ってくれるので、毎回帰ってくるのを楽しみにしている。

まぁ、今ないものを気にしても仕方がないので、俺は鼻歌を歌いながら作業を続ける。前世ではカラオケやミュージックプレイヤーがあったけど、今はそんなものないから自分で歌って気分をあげる。戦国系の映画で百姓が歌いながら作業してた気持ちがよく解る。その方が楽しい。


「……その歌なんですの?」


「お嬢」


歌うのを止めて振り返ると、日傘を差したお嬢が奇妙なものを見るような眼で小首を傾げていた。


「平民ではそういう荒々しい、というか賑やかな歌が流行っていますの?」


聴いたことがない曲調にお嬢は困惑しているみたいだ。きっとクラシックとかオペラとか聴いてるんだろうな。


「なんかとりあえず戦場で歌うヤツらしい」


「平民の軍歌ですの??」


「いや、俺も見たことないからよく知らないけど戦争するより歌えばいいんじゃね?って話らしい」


「歌劇、ですの?」


「さあ? 俺も妹に教えてもらって歌ってただけだから」


前世の妹が見てないアニメなのに、曲だけは好きだからとカラオケの練習に付き合わされた。男性のは自分が歌っても意味がないと、全て俺に歌わせる始末。なのに、女性パートでもデュエットは手伝えと言うのだから、意味が解らない。まぁ、確かに普通のアーティスト並に俺も好きだけど。


「ザクは一人息子じゃ……?」


怪訝なお嬢の目線で、俺は口が滑ったことに気付いた。


「妹みたいなもん」


そうだ。もう血の繋がりはない。


「ふぅん、そういうがいるんですの……」


お嬢は日傘の持ち手をぎゅっと握って、唇を尖らせる。なんか拗ねてる?


「お嬢のが可愛いぞ?」


とりあえず前世の妹と比較した事実を言っておく。あいつがお嬢を見たら喜びそうだな。羨ましいと憎まれ口を言いながら美少女に突撃する図が容易に想像できる。お嬢が困るから、今いなくてよかった。


「べっ、別にわたくしは……っ!? というか、ザクは分かっていないのに、そういうことをポンポン言うの止めてくださいな!!」


いつもいつも、とお嬢が顔を赤くして叱ってくるが、何について叱られているのかさっぱり解らない。解らないけど、お嬢に悪いことをしたらしい。


「ごめん?」


首を傾げながらも、とりあえず謝っておく。お嬢は、まったくもう、と呟きつつもどうにか矛を収めてくれた。


「それにしても……本当に精霊が喜ぶんですのね」


「あ、お嬢はえるんだっけ」


前に音楽で精霊が喜ぶ話をしたときは半信半疑だったお嬢だが、実際に視て納得したらしい。魔力の少ない俺には、なんか雰囲気が楽しそうって感覚しか伝わってこない。


「音楽を捧げるにしても、もっと神聖なものだと思っていましたわ……」


神楽や聖歌みたいなのを想像していたらしいお嬢は、アップテンポな歌を歌ってた俺を呆れた表情で見る。


「いいんだよ、自分が好きなので」


自分が楽しんでなんぼだ、と主張する俺に、お嬢が溜め息をいた。納得したくないけど、実証しているから認めざるを得ないようだ。


「今日はどうした?」


俺は雑草抜きに戻りつつ、今日は何の報告なのか訊いた。いつもならすぐに話し出すお嬢が何故か黙っている。

しばらく待っても反応がない。日傘をしているとはいえ、陽射しが強いから熱中症にでもなったのだろうか。心配になって、作業を中断して降り返る。


「お嬢?」


倒れてはいなかったけど、なんだか難しい表情カオをして俯いている。何かを堪えるように黙り込んでいるところからすると、言いづらいことなのだろうか。

仕方がないので、作業を中断して取った軍手をポケットに入れる。お嬢のところまで行って、片膝をついて俯くお嬢と眼が合うようにした。


「どうした?」


訊くとお嬢の眉がハの字になる。両手で強く日傘の持ち手を握っているのに気付いて、外側の手をそっと剥がしてまた力を込めないように握る。


「ん?」


少しでも安心してほしくて笑いかけると、ずっと引き結んでいた唇が緩んだ。


「お……」


「うん」


「お母様から、わたくし宛の招待状をいただいたの……」


「うん」


ぽつりぽつりと話し出すお嬢にただ相槌を打つ。強張っていたさっきと違って、不安そうな表情をもう隠していない。


「一ヶ月後に第一王子の誕生を祝うパーティーがあるんですの……」


今回は王子の年齢に合わせて、昼過ぎから夕方までの子供向けパーティーらしい。だから、歳の近い子息令嬢も是非に、とお嬢にも声が掛かっている訳だ。


「王子の誕生会に呼ばれてよかったじゃん。大好きな生王子様見れるぞ」


「それどころじゃありませんわ……っ!」


敢えてお気楽なことを言うと、即座に否定的な声が返る。


「わたくし、人前に出るの初めてですのよ……!? それが、王子の誕生パーティーなんて……ダンスだって満足に踊れませんのに……」


「大丈夫だって」


「どうして大丈夫だなんて言えますの!?」


俺の言葉にお嬢は怒る。でも、その瞳は不安でいっぱいで今にも泣きそうだ。


「だって、お嬢いつも綺麗だもん」


「っ!?」


いつも見てるから判る。お稽古を頑張ってるお嬢は日に日に立ち振舞いが綺麗になってる。


「大丈夫。公爵様とオク様自慢の立派な公爵令嬢だ」


「本当、に……? お父様たちをがっかりさせません……?」


「ああ。むしろ、誇らしいと思うぞ」


「本当に、大丈夫?」


「大丈夫。お嬢はいつも通りでいればいい」


ちゃんとお嬢が信じてくれるまで大丈夫、と笑って繰り返す。


「本当に……?」


「大丈夫。お嬢はカッコいい」


「それは褒めてません」


お嬢が小さく頬を膨らませる。


「えー、すげぇ褒めてるのに」


カッコいい、は男からしたら最上級の誉め言葉だ。なんで女子は喜ばないんだろう。


「まったくザクは……」


仕様がない、とお嬢が小さく笑う。やっと笑ったお嬢を見て、俺も相好を崩す。よかった。


「うん、いつものお嬢だ」


「!!」


言われて気付いたらしいお嬢は、顔を赤くして声もなく狼狽える。きっと珍しく弱音を吐いてしまったのが恥ずかしいんだろう。それだけ緊張していたんだな。俺には王族なんて遠すぎて現実感ないけど、お嬢には現実にいる存在だから感じるプレッシャーが違うんだろう。

ピアノの発表会とかで緊張するようなものだろうか。いや、俺発表する系の習い事なんて前世でもしたことないから解らん。あ、会社の面接が一番近いかな。うん、あれは緊張しすぎていつも通りなんてできなかった。そう思うと、お嬢は大変だなぁ。

パーティーでしかも絵本で大好きな王子に会えるんだから、もっと楽しみにしてもいいだろうに。某夢の国行きと会社の面接がブッキングした感じなのかな。楽しみたいけど、楽しんでる場合じゃない的な。

でも、俺からしたら誕生会とかパーティーって楽しむものだ。お嬢も楽しんできたらいい。


「ま、楽しんで来いよ」


言うと、お嬢は握っていた手を握り返した。


「…………ザクも、ついて来て」


あ。ほんとに弱気だ。

心細げに薄い青の瞳が揺れている。できないお願いをするなんて珍しい。無理なの解ってるだろうに。


「公爵様も一緒なんだろ?」


コクリ、とお嬢が頷いた。


「なら、大丈夫だろ。最強の味方だ」


「でも……ザクがいれば……」


「お嬢」


言い募ろうとするお嬢を、呼んで止める。ちゃんと真っ直ぐに見て伝える。


「俺は貴族じゃないから無理だ」


お嬢は一瞬言い返そうとする素振りを見せたが、ぐっと言葉を飲み込んだ。


「それに……」


まだ続く言葉にお嬢は小首を傾げる。


「窮屈そうな貴族の服なんて俺には似合わない」


「……っふ、そうですわね」


俺が苦笑すると、想像したらしいお嬢が笑った。ついて来れないと解っていたから、具体的に俺が一緒に行く場合を考えていなかったらしい。


「ごめん、なさい……」


無理を言って、と一頻り笑ってからお嬢が謝る。別に迷惑じゃない俺は、首を横に振った。


「で、何がそんなに不安なんだ?」


何か自信がないことがあるから、こんなに弱気になってるんだろう。


「…………たぶん、家格から一度は第一王子と踊る機会があるの」


「ダンスに自信がないのか?」


「まだ先生から褒めてもらったことが一度もないの……だから、わたくしに王子殿下の相手が務まるか……」


とても不安なのだ、とお嬢が呟くから、俺は大丈夫だ、とまた笑いかける。


「あと一ヶ月もある。練習すればいい」


「けど、お父様たちに知られたくありませんわ」


練習量を増やして、ダンスに自信がないことを両親に知られたくない、と。でも、お嬢の口振りからして、自主練はしてもよさそうだ。

どこかいい場所ないかな。俺の自習用の庭は陽当たりが良すぎるから、この季節じゃお嬢が倒れる。ダンスって、社交ダンスだろうから床が平らな方がいいよな。


「あ」


あった。

しばらく考えてちょうどいい場所を思い出した。


「よっし、お嬢。こっそり特訓しよう」


「どう、こっそりするんですの??」


「いいトコがある」


俺はにんまり笑って、握ったままのお嬢の手を引いて西に向かう。

西には本邸から渡り廊下で繋がる離れがある。たぶん、愛人とかできた時用なんだろうけど、今のエルンスト家にそんな気配は微塵もない。たまに客室に使う程度だ。そこも充分人が来ないが、俺は渡り廊下の方に用がある。

渡り廊下は池に囲まれていて、ちょうど中腹に東屋に続く道が生えている。石造りの円錐形にドーム型の屋根の東屋は、少人数でのお茶会ができるようにそこそこの面積がある。お茶会があるときにしかテーブルなどを置かないので、今は何もない。ダンスの練習には最適だろう。

池の中にある東屋は周囲をぐるりとミニバラの花壇で囲まれて、更に睡蓮が水面に浮いている。どちらも開花時期が過ぎているから、当分お茶会に使われないだろう。


「どう? ココなら平気だろ」


「確かに、そうですわね」


東屋の中央まで案内すると、お嬢は周囲をゆっくりと確かめるように見回した。


「じゃあ、頑張れ! お嬢っ」


両手でガッツポーズを作って、俺は応援する。特訓と名がつくとスポ根っぽくて気合いが入るよな。


「い、今からですの!?」


「へ。いや、とりあえず何となく?」


いきなり踊れと言われたと思ったお嬢は驚く。俺は単に応援する気持ちを伝えたかっただけだ。


「もし、今から練習するなら俺戻る、から……?」


見られたくないだろうから作業に戻ろうと思ったら、後ろに引っ張られた。後ろに振り返ると、服の裾を掴むお嬢がいた。


「何? お嬢」


俺の服の裾を皺になるぐらい掴んで、お嬢が睨むように俺を見上げてくる。一体何なんだ。


「……応援するんですのね?」


「うん」


念押しされるのは何でだろう。お嬢が何を言う気かは判らないけど、応援してるのはほんとだから頷く。


「だったら、練習相手になって」


「え!? 俺、踊れないぞっ」


「わたくしが最低限教えますっ」


「えー」


俺が教わるなんて本末転倒じゃないか? それ、お嬢の練習になるのか? てか、親父……は、ああ無理だ。お嬢のお願いなら仕事抜けるの許されそう。


「背格好が近い相手がいた方が練習になるんです」


「うー……、わかった」


柄じゃない、とは思うけど、そんな理由で頑張ろうとしてるお嬢のお願いを断ることはできない。


「それなら、明日からな」


「どうしてですの?」


「エプロン持ってくる。お嬢の綺麗なドレス汚したくないし」


小屋に料理に使ってる俺のエプロンがあるから、お嬢に着けてもらえば汚さなくて済むはずだ。

引っ張られる感覚につられて視線をやると、さっきより更に強く裾を握られていた。


「……お嬢。別にいいけど、めっちゃ皺になってる」


「あ……っ!」


俯いていたお嬢ははっとなって、慌てて手を放した。少し頬が赤いけど、外に長く居すぎただろうか。水の傍のこの東屋なら、まだ涼しい方だと思ったんだけど。練習するときは、手拭いだけじゃなく水筒も用意しとこう。


「とりあえず戻るか」


つい手を出した。それから気付く。道が判りやすいから、よく考えれば戻りまで手を繋ぐ必要なかった。ん? お嬢がついてくればいいから、行きも繋がなくてもよかった?

余計なことしたと思っていたら、手を引っ込めるのを忘れていた。

手を引こうとする前に、お嬢の一回り小さい手が俺の掌の上に乗った。


「……なんですの?」


「んーん、何でも」


怪訝に見返す薄い青の瞳に、へらりと笑って返す。

手を繋いで戻る道すがら、俺は作業をほっぽり出して来たことを思い出す。ヤバい。明日以降のことは頼むからいいとして、今日のことは絶対親父に叱られる。

悪いのは俺だから仕方ない。とりあえず、お嬢に気付かれないようにしよう。

ちらり、とお嬢を一瞥して、俺がビビっていると気付いていないのに安堵した。そして、お嬢を見てふと思い付く。

どうせ親父に叱られるなら、もう一つ頼みごとをしてみよう。



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