物ノ怪学舎異聞録

レイフロ


『物ノ怪学舎異聞録(もののけがくしゃいぶんろく)』


【ジャンル:シリアス、狂気系】

【所要時間:30〜40分程度】


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※使用する際は必ず説明欄や詳細文などに『作品タイトル・台本URL・作者名』の明記をお願い致します。


※各作品の著作権は放棄しておりません。無断転載や自作発言等、著作権を侵害する行為はお止め下さい。もちろん無断での改編や再配布も禁止です。


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【人物紹介】

緋彩(ひいろ)♀

子供。女の子。大人びている。神隠しに遭った。


十流(とおる)不問(女性が演る場合は少年っぽくお願いします)

子供。男の子。少し臆病。神隠しに遭った。


数兎(かずと)♂

新任の先生。よく災難に遭う。


織蛇(おだ)♂

ベテランの先生。得体が知れない。



【演じる際の注意点】

・緋彩と十流が同時に返事をしたりするシーンが多々ありますが、ぴったり合わなくて構いません。



↓生声劇等でご使用の際の張り付け用

――――――――

物ノ怪学舎異聞録

作:レイフロ

♀緋彩:

不問)十流:

♂数兎:

♂織蛇:

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⚠今後のレイフロの台本の更新、新作の公開につきましては、

下記HPで行いますので、ぜひご覧ください!

https://reifuro12daihon.amebaownd.com/






以下、台本です。

――――――――――――――――


N(織蛇):

昔々、山々の間には小さな集落がいくつもあり、野山を駆け回ることが子供たちの最大の遊びだった。

外で元気に遊ぶ子供たちは、総じてどの家でも、陽が落ちる前には必ず帰るようにと言い聞かされていた。

逢魔おうまときには、人ではない者が紛れ込む。真っ黒な影にさらわれてしまうぞ』と。

世に言う、『神隠し』である。


フフ、ここからは人間どもが与り知らぬことだが、今この話を聞いている諸君らだけに教えよう…。

神隠しにあうのは偶然ではない。

才能を持った者だけが、選ばれて、神隠しにうのだ。



ここは、そんな才ある子らの“何か”を育てるための学校。神隠しにあった子供たちが通う特別な学校での、奇妙な物語。




(間)




女(緋彩):

―――橙色だいだいいろの夕焼けが差し込み ヒグラシの物悲しい鳴き声に包まれた縁側えんがわに 私は座っている


男(十流):

―――女はまばたきもせず どこか一点を見つめている 俺は少し 驚かせてみたくなった


女(緋彩):

―――突然 目の前を黒い影が 上から下へと落ちていった ボールのように丸い物だった


男(十流):

―――ドン    と 鈍い音がした


女(緋彩):

―――蝉の鳴き声が ピタリと 止んだ


男(十流):

―――“ボール”は コロコロと転がり 女の前で止まった


女(緋彩):

―――視線を ゆっくり 足元に移す


男(十流):

『ああ  会いたかった』


女(緋彩):

―――男の 首だ


男(十流):

―――女が 俺を見ている


女(緋彩):

―――生首の瞳は しっかりとひらいていた


男(十流):

―――彼女に 伝えなくては…!


女(緋彩):

―――男の薄い唇が微かに動いている 一体なんて言っているの ねぇ、 ねぇ …




(SE:パタン←本を閉じる音)




十流:

うーん、音読してみたら何かわかるかと思ったけど…二人はどんな関係なんだろうね?


緋彩:

恋人同士かしら?それとも、まだ恋人になる前かしら。


十流:

男の方が勝手に女のことを知っているだけで、面識はないのかもよ?


緋彩:

前世で深い関係があったのかも。男は最後に何て言ったと思う?


十流:

愛の告白か、もしくは呪いの言葉か。


緋彩:

蝉までもが気を使って鳴き声を止めているんですもの、愛の告白じゃないかしら。


十流:

そうかな。あまりに恐ろしい光景で、蝉は死んでしまったのかもしれないよ?


数兎:

二人とも、こんなところにいたのか。


緋彩:

数兎かずと先生。こんばんは。


数兎:

もう部屋に戻る時間だ。チャイムが鳴ったろ?


十流:

すみません、気づきませんでした。


数兎:

お前たちは集中するとすぐそれだ。


緋彩:

ごめんなさい先生。


数兎:

でも謝るべきことはそのことじゃない。…どうして詩絵しえのお別れ会に出なかった?


緋彩:

そんな子ども騙しに出ても意味がないわ。


数兎:

十流とおるもそう思うのか?


十流:

僕は、緋彩ひいろが「持ち出し禁止図書」を読みに行くっていうから…。


数兎:

そうか…。二人で何を読んでいたんだ?


緋彩:

それが、タイトルがかすれていて読めないの。


数兎:

随分古い本のようだな。ジャンルは何だ?


緋彩:

恋愛よ。


十流:

ホラーだよ!


数兎:

どっちなんだ?


十流:

二人で音読してみたけど、よくわからなかった。


緋彩:

そうだわ!実演してみましょう!そうすれば二人の気持ちが理解出来るかも!


十流:

それはいい考えだね!ねぇ先生?


数兎:

ん?


緋彩:

―――生首の役は、得意ですか?




(SE:グチャ ←潰れるような音を入れられる人は入れて下さい。入れられない場合は十分間を取って下さい。)




数兎:

はぁぁぁぁ…ひどい目にあった…


緋彩&十流:

ごめんなさい。


数兎:

首を繋ぎ直すのは大変なんだぞ!いたた…まだ首に違和感が…。


緋彩:

道具が無かったとはいえ、十流とおるったら先生の頭を引き千切るんだもの。


十流:

ちゃんと道具を使って切らないとダメだね。断面がグチャグチャだったせいで、真っすぐ転がってくれなかったもんね。


数兎:

(ブツブツ)はぁ…。規則に 「先生の頭を引き千切ってはいけません」 と明記しておかなければ…。


十流:

先生、もう真っ暗なので部屋に戻ってもいいですか?


数兎:

(深いため息)はぁ…。早く戻れ。お前たちはどうしてこう…


織蛇:

何か問題ですかな?


数兎:

あ、織蛇おだ先生!いえ、問題という程では…。


織蛇:

そうですか?数兎かずと先生、首が少しズレていますよ。


数兎:

え?あっ!どっちに?右ですか?左ですか?!


十流:

織蛇おだ先生、詩絵しえはもう骨になりましたか?


織蛇:

あぁ。なったよ。


緋彩:

その骨が欲しいです。


織蛇:

なぜだい?


緋彩:

やっぱり詩絵しえにお別れが言いたくなって。


織蛇:

ほぉ?


緋彩:

図書館で本を読んでいて思い出したの。詩絵しえも本が好きだったわ。


十流:

最後に詩絵しえに本を読んであげるのもいいかなって。


織蛇:

それが君たちりゅうとむらいなのかい?


緋彩:

はい、そうです。


織蛇:

わかった。明日持ってくるから、今日はもう大人しく部屋で寝ると約束するかい?


緋彩&十流:

約束します。


織蛇:

イイコたちだ。


十流:

数兎かずと先生。頭をいでごめんなさい。


数兎:

やっと首の位置もしっくりきたし、もういいよ。怒ってない。


十流:

部屋に着いたので…先生方、おやすみなさい。


数兎:

あぁ、おやすみ。


織蛇:

ぐっすり眠るんだよ。


緋彩:

織蛇おだ先生、詩絵しえの骨、明日忘れないで。


織蛇:

わかっているよ。ではおやすみ。



(間)



十流:

緋彩ひいろ詩絵しえの骨を何に使うの?


緋彩:

材料に必要なの。


十流:

何の材料?


緋彩:

“何者か”を殺すジュースを作るの。


十流:

“何者か”って誰のこと?


緋彩:

先生たちのことよ。


十流:

どうして殺したいの?


緋彩:

何者か解らないからよ。


十流:

へぇ。緋彩ひいろは研究熱心だね。


緋彩:

十流とおるも手伝って。


十流:

いいけど、頭をいでも死なない人を殺せるかな?


緋彩:

わからない。…でも燃えるわ。


十流:

緋彩ひいろは物好きだね。




(間)




織蛇:

数兎かずと先生。


数兎:

はい。


織蛇:

生徒たちと“体を張って”遊ぶのは構いませんが、程々にお願いしますよ?


数兎:

いやぁ、やんちゃな子ばかりで困ります。


織蛇:

あまりふざけていると、私が数兎かずと先生の首を切らなければなりませんからね。


数兎:

えっと…それはクビにするという意味ですか?それともまさか、ぶ、物理的に、俺の首を…?!


織蛇:

さぁ???どちらがいですか???


数兎:

ひっ


織蛇:

知っていましたか?斬首刑というのは、人類が鋭利な刃物を使い始めた青銅器せいどうき時代にはもうあったとされているんですよ。首の切り方というのは本当に美学があります。私も過去散々試してみましたが…


数兎:

だだだ大丈夫です!あの子たちの面倒は俺がしっかりみますので!!


織蛇:

そうですか?では頼みましたよ。…それより、あの子達は図書室で何を読んでいたのですか?


数兎:

「持ち出し禁止図書」がある地下に居たんですが…何を読んでいたかまでは。


織蛇:

そう、ですか…。


数兎:

それが何か?


織蛇:

いえ別に。少し気になっただけです。


数兎:

それにしても、やっぱり詩絵しえの弔いがしたいだなんて、あの子達も素直じゃありませんね。


織蛇:

弔い、ねぇ。


数兎:

どうかしましたか?


織蛇:

ふふ。何にしても、特にあの二人には気を抜かないようにお願いしますね。


数兎:

は、はい。わかりました。




(次の日)




数兎:

さぁ皆、ちゃんと理解したかな?緋彩ひいろ、もう一度声に出して読んでみなさい。


緋彩:

はい、先生。

 『お約束  第1278条  先生の頭を引き千切ってはいけません』


数兎:

良く出来ました。では、織蛇おだ先生から皆に大切なお話があるから、よく聞くように。


織蛇:

おはようございます。皆さんは特殊な力持っています。ですが、それだけでは『特別』には成り得ない。中途半端な者は要らないのです。…この意味がわかりますか?


数兎:

そこ!よそ見をしない!生爪1枚剥がすぞ!


織蛇:

コホン、私たち「先生」は皆さんの個性を尊重します。それが才能に比例するものであるのなら。

皆さんは才能を見込まれたからこそ此処にいます。でもたまに、見込み違いの子もいるのです。

悲しいかな、それが先日亡くなった詩絵しえさんです。


数兎:

(心がこもってない感じで) うっうっ、悲しいなぁ


織蛇:

詩絵しえさんのようになりたくなければ、しっかりと己の才能を信じて伸ばし、顕現けんげんさせて下さい。

自分の力で、『特別』な存在とるのです。いいですね?…以上です。


数兎:

さぁ、授業を始めるぞ!


織蛇:

緋彩ひいろ十流とおるは廊下に来なさい。


緋彩&十流:

はい。





織蛇:

これが約束の詩絵しえさんの骨です。どうぞ。


緋彩:

ありがとうございます。織蛇おだ先生。


十流:

真っ白ですごく綺麗。


織蛇:

昨日私がこびり付いていた肉をぎ落として綺麗に磨きましたからね。


緋彩:

どうしていつもお別れ会をやるんですか?


織蛇:

どういう意味ですか?仲間が居なくなったら悲しいものでしょう?


緋彩:

先生達が殺したくせに、その死をいたむというのは腑に落ちません。


織蛇:

フフ。君たちが『特別な存在』になれるかどうかは私たちにも分からないのです。皆、素質がある。だから今ここにいる。


緋彩:

でも『特別』でないと判断されたら、私たちは殺されるんですよね?


織蛇:

―――そうです。殺されますよ?私に。


十流:

緋彩ひいろ、もう止めて!


緋彩:

……。


織蛇:

良い目だ…。緋彩ひいろさん、楽しみにしていますよ?


緋彩:

何の話ですか?


織蛇:

その骨、よぉく考えて使うといい。無駄にしては、詩絵しえさんも浮かばれない。


十流:

(ぼそっと) 自分が殺したくせに…白々しい。


緋彩:

十流とおる


十流:

ハッ!ご、ごめんなさいっ!


織蛇:

ははは。さ、早く授業に戻りなさい。






十流:

こ、怖かった…。「殺す」って言った時の織蛇おだ先生、見た?!黒目が蛇みたいに縦に細くなったよ!


緋彩:

あまり見ちゃダメよ。石にされてしまうかもしれないわ。


十流:

脅かすのはやめてよぉ。…でも『特別』になるって何なんだろう。僕たちは何にならなきゃいけないのかなぁ?


緋彩:

先生たちのようになることが『特別』だっていうなら…それは『化け物』だわ。




(間)




数兎:

今日の授業はここまで。消灯までは自由時間とする。…あ、十流とおる


十流:

はい、先生。


数兎:

この間の桃太郎についての論文、素晴らしかったぞ!あの織蛇おだ先生も褒めていたくらいだ!


十流:

いえ、そんな…(照れ)


緋彩:

すごいわ、十流とおる


数兎:

鬼についての考察はとても鋭いものがある。十流とおるは『可能性』があるな!


十流:

『可能性』って?


数兎:

あ、いや…可能性なんて言ったかな?はは。


緋彩:

…。数兎かずと先生。お願いがあります。


数兎:

ん?なんだい?


緋彩:

今晩、私たちの部屋に来て下さい。相談したいことがあります。


数兎:

あぁ。恋の話以外だったら何でも相談してくれ!

(声のトーンを落とす)…俺は恋ダケは、絶ッ対にダメだカラな。


十流:

…?わかりました。では夜、お待ちしてます。




緋彩:

十流とおる、早く部屋に行くわよ。


十流:

ジュースを作るんだね!…でもさっきの数兎かずと先生、なんかおかしくなかった?


緋彩:

十流とおる、知らないの?数兎かずと先生は恋人を亡くしてるのよ。前の前の恋人も。前の前の前の恋人も。


十流:

え?なにそれ。


緋彩:

そのことがキッカケで、この学校の『先生』になれたみたいよ。


十流:

緋彩ひいろ、常に僕と一緒にいるのに、いつもどうやって情報を仕入れているの?


緋彩:

…さぁ?


十流:

さぁ、って。


緋彩:

十流だって、すごく細っこいくせによく数兎かずと先生の首を手で引き千切れたわよね?


十流:

細っこいは傷つくよ!


緋彩:

ごめんなさい。じゃあ「草食系のくせに」でいい?


十流:

どっちも傷つくよ。


緋彩:

ごめんなさい。じゃあ、


十流:

もういいよ。


緋彩:

ふふふ。




(間)




(SE:ノックの音)


数兎:

来たぞー?入ってもいいかー?


緋彩:

どうぞ。ご足労ありがとうございます。


十流:

飲み物でも出しますね。


数兎:

あぁ、ありがとう。それで、話とは?


緋彩:

数兎かずと先生は、『鬼』ですね?


数兎:

……なぜそう思う?


緋彩:

鬼とひとくくりに言っても気性きしょうはそれぞれのようなので、何の鬼かはわかりませんが、愛する人を殺してしまう鬼は史実にも残っています。


数兎:

俺の過去を知っているのか?


緋彩:

先生の恋人がことごとく死んでいるという事実だけです。それから、首を引き千切っても死なない生命力は、先日の通りです。


数兎:

不死というわけではないからもう二度とやらないように!


十流:

数兎かずと先生、お詫びも兼ねてこれをどうぞ。


数兎:

なんかすごい色をした飲み物だな?なんというか…ドドメ色?


十流:

お疲れのようなので、色々身体に良さそうなものを混ぜ合わせた結果、身体に悪そうな色になりました。


数兎:

そうか。俺のために作ってくれたなら飲まないわけにはいかないな。


十流:

ささ、グッと。


数兎:

ズズズ(飲む)…ふむ、ドブのような喉越しの中に上品な苦味と何とも言えないこの甘みは…まるで…優し、く、胃を、溶かされて、い、るようなゲホゲホゲホ


十流:

シュワシュワ聞こえるね。鬼は胃も丈夫だって聞いたけど、成功だね、緋彩ひいろ


緋彩:

えぇそうね、十流とおる


数兎:

おまえ゛ら゛、まだ懲りてながっだのか…ぐ、ゲホゲホ


十流:

昨日、閲覧禁止図書で読んだ物語に出てくる男も、首だけになっても生きていた。あれは『鬼』だったんじゃないかって考察に至ったんです。


緋彩:

鬼ってどのくらい頑丈なのか知りたいんです。先生なら生徒の疑問には身体を張って答えてもらわないと。


数兎:

だったら、ゲホゲホ、へへ、俺じゃなくて十流とおるでも実験できるかもしれな…


織蛇:

(遮るように) 数兎かずと先生。決め付けはよくありませんよ。


十流:

ひっ…!織蛇おだ先生、いつの間に…!


織蛇:

本当に悪い子たちだ。詩絵しえさんの骨を、鬼の胃をも溶かすさんのジュースの材料にするとは…。なかなか面白い。ははは。


数兎:

ぐふ…っ織蛇おだ先生、悪い子らには、罰を…ゲホゲホ


織蛇:

何故ですか?生徒の長所を伸ばすのが我々教師の役目ですよ?


数兎:

なんでいづも俺ばっかり゛…っ


織蛇:

貴方は大人になってから鬼の才能を顕花けんかさせた極めて珍しい症例です。だから“先生”としてここで働いて頂いたのですが…なにせ頭が弱い。


数兎:

んだとぉ…!!


織蛇:

おやおや。私の指導を受けてまだ歯向かう気力があったのですか?その心意気は嫌いではありませんが…次は半死はんし半生はんしょうで留める自信はありませんよ?


数兎:

ひぃっ…すみませんっっ…


織蛇:

十流とおるくん、大丈夫ですか?顔が紙のように真っ白ですよ?


十流:

あ…あ…


緋彩:

十流とおる


織蛇:

ふむ…先ほど決め付けは良くないとは言いましたが、これはもう確定かもしれませんね?十流とおるくん、君は『鬼』になれる才能を色濃く持っているようです。


緋彩:

十流とおるが『鬼』?


織蛇:

えぇ。鬼はとてつもない怪力と銃弾も効かないはがねの丈夫さを持つため、敵はほとんどいないのですが、どうも『私』の殺気には弱いようで。ふふ。


緋彩:

織蛇おだ先生は、何なんですか…?


織蛇:

しーっ。それは知らないほうが良い。


緋彩:

十流とおる!しっかりしなさい!(頬を叩く←手を叩いて音を出して下さい)


十流:

あいたっ!…何も叩くことないのにぃ。


緋彩:

ふんっ、こんな弱っちぃののどこが鬼なんですか。


織蛇:

ふふ。まだ子供ですから。強い鬼になれるかは彼次第ですよ。


緋彩:

強くなってどうするんですか。


織蛇:

さぁ?私たちは才能のある者を育てるだけです。その後どう使うかは校長次第です。


十流:

校長先生なんて誰も見たことがないし、声すら聞いたことがない。本当にいるの?!


織蛇:

貴方がたは知らなくてもいいことです。それよりも緋彩ひいろさん?


緋彩:

はい…


織蛇:

十流とおるくんは、おそらく鬼の一種で間違いありませんが、貴女は焦った方がいいですよ?才能がなければ、詩絵しえさんと同じ末路を辿たどることになるのですから。


十流:

そ、そんな…!


織蛇:

数兎かずと先生、行きますよ。いつまで咳き込んでいるんですか。


数兎:

ゲホゲホっ、おまえらっ、早く、寝るように!いいなゲホゲホ


緋彩&十流:

はい、先生…




(間)




十流:

緋彩ひいろ、起きてる?


緋彩:

…うん。


十流:

緋彩ひいろはさ、頭もいいし、行動力もあるし…絶対すごい『何か特別な存在』だと思うよ?


緋彩:

どうかな…。どうせ根拠もなく言ってるんでしょ?


十流:

ぐっ…。お、鬼の直感だよ!


緋彩:

なにそれ…バカじゃないの。


十流:

緋彩ひいろは処分されたりしないよ。絶対大丈夫!


緋彩:

…もしかして慰めようとしてる?十流とおるの癖に。


十流:

ふえ?!ひ、酷くない?!僕は真剣に…っ


緋彩:

バカなこと考えてないで寝なさい。私はあんな脅しにビビッてなんかないわ。むしろ燃えてる。


十流:

燃えてるって…なんでそんなに緋彩ひいろは挑戦的なんだよぉ。


緋彩:

だって悔しいじゃない。どうにかして織蛇おだ先生の正体を暴けないかなぁ。


十流:

僕は織蛇おだ先生が怖いよ…。


緋彩:

もう、結局アンタが怖いだけじゃない!しょうがないわね、少しだけなら布団近づけてもいいわよ。


十流:

ごめんね、緋彩ひいろ。ありがとう。


緋彩:

…ねぇ、十流とおる。私たち、当たり前のようにこの学校に通って寝泊まりまでしているけど、それって変じゃない?


十流:

え?どういうこと?


緋彩:

「子供」には、「親」がいるものだわ。…私たちの親はどこ?


十流:

そんなこと考えたこともなかったけど、確かにおかしいね?明日、数兎かずと先生に聞いてみる?


緋彩:

ダメ。それだと織蛇おだ先生にも筒抜けになるわ。

…そうだ!私たちで調べよう!先生たちに気付かれないように、此処ここの実態を!


十流:

調べてどうするのさ。


緋彩:

もし親がいるなら会いたくない?自分の家があるなら帰りたくない?!


十流:

そりゃあ家があるなら帰りたいよ?おとうやおかあにも…


緋彩:

ほら!その「おとう」とか「おかあ」って言い方!


十流:

今自然と口から出たよ!僕にはきっと、おとうとおかあがいるんだっ!


緋彩:

なんだか面白くなってきたわ!明日から調査よ!


十流:

うん、わかった!頑張ろうね、緋彩ひいろ


緋彩:

アンタは口が軽そうだから気をつけてよ?織蛇おだ先生にバレたら、殺されちゃうかもよ?


十流:

ひえぇっもう寝る!おやすみっ!


緋彩:

んふふ、おやすみ、十流とおる




(間)



織蛇:

数兎かずと先生、この新聞記事を見てください。


数兎:

えっと…『神隠しから帰ってきた少年が、村の子供を3人木に吊した後、自らも首を吊って自殺』

…もしかして、この学校の卒業生ですか?


織蛇:

えぇ。彼は『縊鬼くびれおに』のがありましたが、どうやら成りきれなかったようですね。


数兎:

此処ここにいた時は、よく同級生の子の首を吊らせて、先生たちを困らせていたのに…。


織蛇:

此処ここでいくら才能を開花させても、人の器に戻った時にそれを発揮出来るかは未知数です。


数兎:

なかなか難しいものですね。


織蛇:

それにどんどん時代も進化していきますから、これからは我々『異形』も頭が良くないと。


数兎:

だから織蛇おだ先生は、緋彩ひいろを気に入っているんですか?


織蛇:

ふふ。どうでしょうね?。


数兎:

使えなければ殺すだけ、ですか。


織蛇:

此処ここは、特別な『何か』を育てる学校…。特別でない者は此処ここにいる価値がありませんが、「使えなければ殺すだけ」

…は少し違いますね。


数兎:

は?


織蛇:

詩絵しえさんは十分役に立ちましたよ?

私が、美味しく頂きましたから。




(間)




N(織蛇):

如何だったでしょうか?

……なになに?これからが本番じゃないか、変なところで終わるな、ですか?

ふふふ、続きがあると思えば気になって夜も眠れないでしょう?

イイコにしていれば、いつかこの奇妙なお話の続きを聞ける日もくるでしょう。イイコにしていれば、ね?

それまではせいぜい日常を楽しんで居て下さい。

え?せめて、鬼をも震え上がらせる私の正体が知りたい?

駄目ですよ。まだ生きていたいならね。


それでは、本日はこの辺りで失礼しましょう。また逢う日まで、せいぜいお元気で。








続く…?



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