脱出成功!
夜が明けて異世界転移2日目の朝、目が覚めればこちらへ頬を膨らませながら見つめる親友(天使)の姿が。どうやらウチが中々起きないことにご立腹のようだ。
「睦月、私何度も起こしたんだけど?」
「ごめんって、起こしてくれてありがと。おはよう葉月」
「ん、許そうじゃないか!」
謝罪をすると満足そうに葉月は頬を緩めた。
可愛い。
「昨日食事したホールに集合だってよー。
その時に今日の予定を伝えるってメイドの人が言ってたよ」
「んー、りょうかーい!」
素早く着替えて、移動を開始する。廊下にはクラスメイトがちらほらといた。挨拶をしながらぞろぞろとホールへ向かう。バカみたいに長いテーブルの上には朝食としては少々重い品々が。馬鹿か?
「葉月、ウチ食欲無くなってきた」
「睦月、分かるよ。でも、とりあえずスープだけでも食べとこう?」
「そだね」
朝は活躍しないウチの表情筋がピクピクと動いている。葉月も私と似たような表情をしていた。
「眼鏡はいいの?見えにくくない?」
「あ、つけるの忘れてた。道理で見えにくいハズだ。ありがと葉月!」
などとまったり喋っていると王様(笑)が何か言い出した。曰く、この世界についての授業を行い、武器を支給するんだとか。何でこんなとこまで来て勉強なんかしなきゃならんのだ?とは思うもののやはり知識があるのと無いのでは違う。脱出は夜頃になりそうだ。
───予定実行中───
夜が来た。軽く知識を蓄え、名品らしい剣を頂戴した。しかし、軽い。重い方がウチ的には良いと思う。ウチにはあれがあるので必要無いだろう。
葉月も剣は置いていくとのこと。食事も終了しているのでこれから脱出だ。
「よし、葉月行くよ?」
「おっけー!」
部屋のベランダから木に飛び移る。身体能力は向上しているらしい。木の枝から地上へ一気に飛び降りる。スタッ!という音と共に着地は成功した。上で此方を見る葉月にOKサインを出し、両腕を広げる。
「えいっ!」
可愛らしい声と共に葉月はウチの方へ飛び降りてきた。ぽすっ、と軽い音を立てて葉月は両腕に収まる。両腕の中の葉月をそのままにウチは走り出す。脱出は時間との勝負だ。
バレて守衛の人数が増える前に闇に紛れて王城を出る。目指すは隣国、または遠い村。
「睦月、ムリしなくていいよ!」
「大丈夫、葉月は軽いから」
それに、ちょっとした検証でもある。ステータスと言えば半透明のプレートが視界一杯に出てきたのだ。その時にランクというものがあった。その横に1の文字。これが従来のゲームと同じ意味だと考えれば鍛練や戦闘で徐々に数値が上がっていくハズだ。
人一人を遠くまで抱えて全力疾走する。これは十分に鍛練になり得ると踏み、ウチは葉月を抱えて走る事にしたのだ。葉月に負担がかからないように揺れを軽減しながら走る。
葉月はうとうとして寝てしまった。普段より幼く見えて更に可愛い。
明朝、国の端の村に到着した。脱出は成功したと言えるだろう。親友は変わらず可愛かった、寝惚け眼は最高だった。私が萌え禿げるのも時間の問題かもしれない。
親友第一ですがなにか? 夜空 @argo3208
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