2013年【西野ナツキ】53 川島疾風との出会いは事故だった。
川島疾風との出会いは事故だった。
疾風が車で田宮由紀夫がバイクの接触事故だった。
事故による怪我はなかったが、田宮が乗ったバイクは壊れてしまった。
田宮はバイクの修理費を求めたが、疾風は警察を呼ばなければ保険が下りない為に無理だと言った。
しかし、田宮は警察を呼ぶと父に迷惑がかかると考え、それを却下した。
というのも、以前、同じような事故を起こして父を呼んだところ、田宮はひどく面倒なペナルティを負わされてしまったのだった。
田宮は父と警察を呼ぶことなく、川島疾風からバイクの修理費を払ってもらうつもりだったが、疾風は折れなかった。
話し合いが膠着状態に陥り、業を煮やした田宮は友人を現場に呼んだ。
その時、事故に遭ったことを伝えた為か、友人と共に田宮組の相談役でシャイニー組のヤガ・チャンも一緒だった。
チャンが間に入り、話し合いが再開された時、中谷勇次が姿を現した。
そして、当たり前みたいに啖呵を切った。
田宮たちは喧嘩を売られたと分かった瞬間に、勇次を囲んで袋叩きにしようとした。
複数人対一人。
負けるはずがない喧嘩だった。
しかし、結果だけを見れば中谷勇次は息を乱すことなく、田宮達を地面に倒し、川島疾風に文句を言い始めた。
まるで殴った相手など、どうでもいいと言わんばかりの勇次の態度は田宮の癇に障った。
田宮は彼らが去った後、倒れた仲間たちと共に報復の方法を相談した。
その時に、お前(と、田宮はぼくを指差した)が、一つ提案をした。
川島疾風と中谷勇次の共通の知人を拉致って、二人を呼び出してリンチにかけよう、という提案だった。
彼らの共通の知人として候補に挙がったのが、川島疾風の彼女にして、中谷勇次の姉にあたる中谷優子だった。
優子は町のスーパーマーケットで働いていると分かり、田宮はその日のうちに彼女を拉致し、ハメ撮り映像を撮って疾風と勇次に送りつける予定だった。
拉致自体は拍子抜けするくらい簡単に成功した。問題はその後だった。
ひと気のない場所へと車で移動している最中に、どこで話を聞きつけたのか、疾風に発見され追いかけられる羽目に陥った。
車が向かった先は走り屋が好んで走る峠で、カーチェイスを繰り広げた結果、田宮達の乗っている車がガードレールを突き破り、崖へと車ごと転落した。
崖に落ちた車から這い出た田宮は疾風と対峙した。疾風はあろうことか、田宮の顔を覚えていなかった。
つい数時間前の揉め事を自動販売機で買った缶ジュースのごとく忘れている川島疾風の立ち振る舞いに田宮は腹が立って仕方がなかった。
後で知ったことだが、川島疾風は以前やくざの運び屋をしていて、田宮組とは違う組との交流があった。
だからだろう。
疾風は尚も吠えて煽る田宮に銃を向け、躊躇なく引き金を引いた。
弾は外れることなく、田宮の股間を正確に撃ち抜いた。
その場にチャンが追い付いたことで疾風は捕えたが、チンコを使い物にできなくされた恨みは収まらなかった。
だから疾風の弟分だと言う中谷勇次を殺す――。
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