2013年【西野ナツキ】43 絶対に安全なんて、世の中にあるはずがない。
紗雪は明日のやくざの会談に行くと引かなかった。
しかし、女性を裸にして土下座させるような人間と会いに行くのに、紗雪を連れて行く訳にはいかなかった。
長い話し合いの末に、紗雪が一人付き添うを指名することで話はまとまった。
その付き添いは同室の山本義男だった。
「明日? 良いよ、私も外に出る予定があったしね。付き合うよ」
夜、有が眠った後、いつものように山本のベッドのスタンドの光だけで酒盛りをしている時だった。
山本があっさりと請け負うので、ぼくが疑った目を向けた。
「なに? ナツキくん」
「分かってます? 山本さん。ぼく、明日やくざの会談から、やくざの息子を見つけ出して交渉しないといけないんですよ」
「ん? それがなんだい? 別に、やくざと喧嘩をしに行く訳じゃあないんだろ?」
「でも、絶対に安全とは言えないでしょ?」
相手は一件の事故から旅館を無茶苦茶にした後に、女将を土下座させるような連中なのだ。
更に、川島疾風との接触事故も岩田屋町周辺のやくざが、顔を突き合わせて話し合うまでこじらせている。
田宮由紀夫が厄介な人間であることは明白だった。
山本は眉をひそめた。
「ナツキくん。絶対に安全なんて、世の中にあるはずがないだろう。知っているかい? 人間は鼻毛を抜く痛みで死ぬことだってあるんだよ」
そーなの?
山本が年齢に適った人を安心させる笑みを浮かべた。
「まぁ、ほら。さっき紗雪ちゃんから電話もあって、ナツキくんが危険なことをしようとしたら、止めて下さいって言うからさ。ナツキくん自身、紗雪ちゃんの為に危険なことはしないようにね。おじさん的には、君らみたいな初々しいカップルは見ているだけで楽しいからさ」
普通なら、ここで頷いて終わりだった。
けれど、こと山本に関しては裏を疑わずにはいられなかった。
「それで、山本さん。紗雪さんにどんな条件を提示したですか?」
「ちっ。変なところで鋭くなったな、ナツキくん!」
「良いから、答えて下さい」
容認できない内容だったら、紗雪には悪いが明日は一人でいく。
「紗雪ちゃんがナース服を着て、写真を撮らせてくれるって言うからさ。な? 良い条件だろ? ナツキくんだって、紗雪ちゃんのスーツ以外の服も見たいだろ?」
不覚だった。
正直、紗雪のナース服をぼくは見たかった。
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