04.20 「びょーいん?」
「さあ、あの時の続きをしようじゃないか、マイ・プリンセス」
「キャーーーーッ」
「やめろーっ」
この後、ブラウスのボタンがはじけ飛んで、ウザ男が胸を掴んだ辺りで記憶が戻ったんだと思う。
全身に電気が流れたような感じがしたのはスタン・ブラの所為だと思うんだけど、直ぐに目眩がして……、その後は湧き上がる怒りを押さえながら紳士的に対応したんだっけ。うん、あくまでも紳士的に。警察もそれで納得してくれてるみたいだしね。
予めクラッキングしておいたお陰で、ウザ男が止めたと思ってた防犯カメラもちゃんと動かせてたし、勿論、過剰防衛っぽい所はカットしておいたからね。まあ、仮に何か起きてたとしてもそれは無理矢理思い出させるようなことをした所為だもん。全てはウザ男の自業自得なのだ。
とはいえ、ちゃんと記憶が戻ったのかどうかは正直自信がない。記憶を失ってた時の出来事は覚えてるし、その時
全部忘れちゃったのに、もう1回
「うん、全部思い出したよ……少なくとも君の名前と僕達の関係はね」
確かにあの時はそう思ったんだけど、
だったら、本人に聞いてみるしか無いよね。
「ねえ、
「どうしたの、急に」
「うーん、記憶を無くしてたのに
「そっか。私に関しては大丈夫よ?
「3回なんだけどね、記憶が正しければ」
「3回なんだ……」
「うん……」
「……そっか」
ともかく、僕と
「今回のことは二人には内緒ね。もうすぐ出産だから、余計な心配掛けたくないもん」
「私は構わないけど……、
「十分やり返したしね」
「そっか」
それより、今は期末試験に向けて集中しないと。
テスラを手放すわけにはいかないし、
うん、うん。これ、これ。
「もう学校なんか行かないでず〜っとこうしていたいね」
「出席日数気にしなくてもいいならね?」
「そうだよね〜、すりすり〜」
「もう、
「だってえ、やっと
「私がここに来てからずーーーっとそうしてるけど?」
「そうだっけ〜」
中間試験もこんな感じだったよね。だから、大丈夫。
◇◇◇
そして、その日は突然訪れた。
物音でふと目が覚め、リビングへと下りていくと、両親が出かける準備をしていた。
「
「病院って……」
「大分間隔が短くなってきたみたいだからね。楽しみに待っててね」
「僕も行くっ!」
「行ったら直ぐに生まれるって訳じゃないのよ。暫く陣痛室で待つことになるんだけど、あれを聞いちゃったら産むの怖くなっちゃうわよ、
僕は産むつもりないんだけど……
「カーテンで仕切られてるだけだからね。周りの妊婦さんの苦しそうな声が聞こえてくるわよ?」
「それに、陣痛室に付き添えるのは一人だけだ。
「だから、後で
「うん、わかった」
車で出かける両親を見送ったものの、興奮しちゃって眠るどころじゃ無かった。
コン コン コン
「
コン コン コン コン
「
「うーん、
「
「びょーいん?」
「うん、うん。生まれるよっ!
「うそっ、急がなきゃ」
「苗字に付いてるのに」って言ったら、「
◇◇◇
「
「う、うん。緊張するね」
「
「そうだけどさ」
程なくして分娩室のドアが開いた。
「おめでとうございます、元気な女の子ですよ」
そう言って出てきたのは、看護師さんだけだった。
「今綺麗にしてますからね。もうすぐ会えますよ」
「有難うございます」
「産声とか聞こえなかったね」
「そういえばさ、父さん立ち会わなくて良かったの?」
「俺は立ち会いたいって言ったんだけど……、
居ても役に立たないか……
そしていよいよ
「おまたせしましたー。お姉ちゃんかな? 抱っこしてみる?」
いや、お兄ちゃんだけどね。
「うええ、どうやって」
なんて心配は無用で、看護師さんが上手いこと抱っこさせてくれる。
「あっ、目、開いた。
「
「
「えっ、うん……、お、お姉ちゃんだよ」
「ふふっ」
「もう、じゃあ、お兄ちゃんに抱っこしてもらおうね、
「えっと、待って、どうしたら……」
看護師さんを介して
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