04.19 閑話:「これを着けなさい」
「会長、私、行かなきゃ」
「何を言い出すかと思えば……。そんなこと認められるわけ無いじゃないの」
「
例のカラオケ店……、先輩というのは
私が余計なことをしなければ、あんな男に付き纏われる事も無かったかも知れないし、今もこうして人質を取られるなんて事も無かったはず。
「……今日の役員会はこれまでとするわ。
「一人で来いって」
「まんまと誘い出されてレイプされる気なの?」
「でも、どうすれば」
「いいから来なさい」
迎えの車を呼ぶついでに例の試作品を持ってこさせる。
「会長、急がないと
「カラオケ店には送ってあげるわ。それに、事情を知っていて丸腰で送り出せるとでも思って?」
「それでも、私は……」
「ほら、来たわよ」
待ちきれない様子の
「これを着けなさい」
「ブラ?」
「只のブラじゃないわ。不用意に触れると感電するようになっているの。スタンガン付きブラ、スタン・ブラと言ったところね」
「わかった」
走り始めた車の中で躊躇なく服を脱ぎ去り、私の差し出した護身用ブラを身につける
そんなに必死な姿を見せられると嫉妬してしまうのだけれどね。
「これもね」
「パンツ……」
「こっちは着脱式になっているから、カラオケ店に着いてから電極部分を取り付けるといいわ。あと、スタンロッドを何本か鞄に入れて置くわね。それから、これも」
「厳ついカチューシャ……」
「オレオレジン・カプシカム内蔵よ。男性との身長差を考えれば丁度いい位置だと思うのだけど。此処から遠隔操作するから気にせず着けていればいいわ」
「で、これがカメラ付きメガネ?」
「いいえ、只の防護用よ。カメラもカチューシャに内蔵しているわ」
「……よくわからないけど、有難う、会長」
車が止まると、直ぐに飛び出していこうとする
「それから、私の判断で
「
「お初にお目にかかります。
「只の老人に見えるけど、空手の有段者よ。スタンロッドも持たせるから何かの役には立つと思うわ」
返事もしないで彼女は行ってしまった。私の言葉なんて聞こえてなかったかも知れないわね。
結局、私の杞憂に終わったみたいで、
局部にあれだけ放電されたらね……
「
「畏まりました」
◇◇◇
「会長、これ、僕までしびれちゃったんだけど」
「そう、開発部門に伝えておくわ。それより、記憶が戻った、ということでいいのかしら?」
「うんっ!」
「それは残念ね。
「「え、えー」」
「冗談よ。今日は家まで送ってあげるわ」
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