04.18 「お前の欲望の源を焼き切ってやるーっ」

 「伊織いおり……、何隠してる?」

 「それは……、無理に思い出させたらダメだって、ドクターが。だから……」

 「へえー、無理に思い出したらどうなるんだろうね。気にならないかい? マイ・プリンセス」

 「十六夜 いざよい……」

 「てめえじゃどう頑張っても葉月はづきに勝てねえよ。大人しく見てな、自分の女が目の前でヤられんのをよ」

 「とおる、逃げ、きゃあ」


    ドカッ


 「大人しく見てろって言ってんだろ」


 ううっ、背中が……

 とおるは……


 「伊織いおりが彼氏……、私は……」


 放心状態のとおるは抵抗すること無くコートを脱がされてしまう。

 そんな……、無理に思い出さそうとしたから……


 「そうだね。抵抗しても苦痛を伴うだけだからそれが賢明かな。でも、あんまり素直でも面白みがないからねえ。おい」

 「へっへっへ。そういうわけだから諦めな。今日は俺にも回してもらうぜ」


 事件の時、武神たけがみさんにいきなり足を折られた見張りの男。

 とおるを羽交い締めにし、股間を擦り付けながら器用にスカートをめくり上げていく。


 「さあ、あの時の続きをしようじゃないか、マイ・プリンセス」

 「キャーーーーッ」

 「やめろーっ」


 ブラウスのボタンがはじけ飛び、水色の下着が顕になった。

 私の所為でとおるが……


 「うーん。やっぱり口は塞がないほうがいいね。良い声だ」


 そして、十六夜 いざよいとおるの胸に手を伸ばした。


    バチッ

    ビビビビビビッ


 十六夜 いざよいが触れた瞬間、衝撃音を伴って青白い光がとおるの胸から放たれた。胸だけじゃない、お尻からもだ。


 「ぐあああ」

 「くっ」


 不意を突かれた十六夜 いざよいが腕を抱えて後ずさる。

 羽交い締めにしていた見張りの男はとおるから離れるとその場に倒れ込んだ。


 「何っ、だっ、これっ、張りっ、付いっ、てっ、とれっ……、兄、貴、助、け……」


    ビッ ビッ ビッ ビッ ビッ


 私を突き飛ばした男が倒れた男に駆け寄っていくも、直ぐに飛び退く。


 「うわっ、何だこれ……」

 「兄、貴、早く、取っ、て、くれ」

 「テメエら、僕の大切な人に……」


 えっ、今、僕って……


 「大丈夫? 凜愛姫りあら

 「……うん。私は平気」


 間違いない、凜愛姫りあらって……


 「つーっ、スタンガンとはねえ。まあ、触れなきゃいいだけだよね、触れなきゃ」


 十六夜いざよいは手にしていたレンジ警棒を伸ばした。


 「クソアマ、調子に乗るなーっ!」


    シューッ


 「うわっ、目が、目があああああっ、おへっ、おへっ」


 殴りかかった十六夜 いざよいとおるが何か吹き付けた。ううん、カチューシャから何かが吹き出したんだ。


 「大丈夫か、葉月はづきっ、テメエ、何しやがった」

 「テメエこそ何しやがった」


 とおるが鞄から何かを取り出す。警棒?


    バチッ バチッ バチッ


 じゃない?


 「よせ、何する気だ」

 「お前、突き飛ばした、よな、凜愛姫りあらのこと」

 「何のことだ。そんな奴、知らねえ。だから、止めろ」

 「そうだったな。今のは忘れろ。いや、忘れさせてやる。子種諸共記憶を焼き切ってなっ!」


    ババッババババババババババババババ


 「うがあああ、や、め……、ろ……」

 「兄、貴、い、い、い、い」


 男は気絶したみたいだ。でもとおるは暫く止めようとしなかった。


 「バッテリー切れか」


 そして、鞄から同じものを2本取り出す。


    バチッ バチ バチ バチ バチ


 「待たせたな、十六夜 いざよい葉月はづき。次はお前の番だ」

 「止めろ、こんなことして只で済むと思うのか」

 「はぁ? 正当防衛だろ、こんなの。 ううっ、無理矢理思い出した所為で、頭が……って事でも良いけどな?」

 「頼む、止めてくれ。何が望みだ……、いや、金だ、金なら幾らでもやる。だから、助けてくれ」

 「お前が……」


    バチッ バチッ


 「お前が邪魔しなければ、僕は凜愛姫りあらのことを忘れなかった――」


    バチッ バチッ バチッ


 「凜愛姫りあらに悲しい思いをさせることも無かった――」


    バチッ バチ バチ バチ


 「だから、お前だけは、絶対に許さないっ」


    ババババババッバババババババババババッバババババババ

    バッババババババババババババッバババババババババババ


 「うごおおおおおおおおおおっ、や、め、め、め、やめ、て、く、れ、え、え、え、え」

 「二度とこんな事出来ないように体で思い知れっ。お前の欲望の源を焼き切ってやるーっ」


 そして十六夜 いざよいも気絶した。見張りの男もいつの間にか気絶していた。


 目の前にはとおるが居る。私も痛みを堪えて立ち上がる。とおるが受けた仕打ちに比べればこんなのどうってこと無い。

 それよりも、とおるに……、とおるを……


 「待って、凜愛姫りあら。これ、外さないと感電しちゃうよ?」

 「とおる……、思い出したんだ」

 「うん、全部思い出したよ……少なくとも君の名前と僕達の関係はね」

 「とおる……」


 うん、とおるだ。


 「ただいま、凜愛姫りあら。ちょっと苦しいんだけど」

 「うん。もう離さない」

 「わかったから。もう一人にしないから。凜愛姫りあらは僕が守るからね」

 「うん。私もずっととおると一緒に……」

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