大切な人
02.01 「僕だってこんなんで行きたいわけじゃないんだけどね?」
今日は高校の入学式。
父の勧めで私立
父がこの高校を勧めたのもこれが狙いだった。最悪でも特進に入ってくれと言っていたので間違いないだろう。特進は特別進学クラスの略で2組のことを指す。こっちは授業料の半額が免除となる。続く3、4組は進学クラスと呼ばれるが、授業料は普通に徴収されるみたいだ。
「そもそも、授業料が心配なら普通に公立校にすれば良かったんじゃ?」
そんな事を言っても今更なので、指定の制服に着替える。鏡に移るのは、すらりと伸びた真っ白な足。勿論素足なんだけど、これが自分の足だと思うと微妙な気分になってくる。他人(女の子限定)の足だったら、ずっと見続けていたいと思える無駄に綺麗な足だったりするのだ。
そんな剥き出しの足を気にしながらリビングへと降りていくと、両親が正装で迎えてくれる。いや、父さんはいつものスーツ姿だ。
「
「やめてよね、父さん。僕は名前を変えた覚え無いんだけど」
誰だよ、昔の女か?
「あ、ああ、そうだったな。すまん、
「僕だってこんなんで行きたいわけじゃないんだけどね?」
「ちょっと短すぎないか、スカート」
「別に短くしてるわけじゃなくてさ、最初からこんな長さなんだもん」
そう。この高校のスカートは短い。受験する時は健全な男子だったから、案内してくれたお姉さん達を見てちょっとワクワクしてたんだった。風が吹いただけでパンツ見えそうなんだもん。実際には見えなかったけど。でも、まさか自分がこれを着る事になるとはね。どうせ短くするんだからと、最初からこんな長さみたいなんだ。
ちなみに、スカート丈に関する校則はなく、これより短くしても何の問題もないみたいだけど、只でさえ見えそうなのにこれ以上短くしたいとは思わないな。
「あら、似合ってるわよ、
「そう、ですか?」
素直に喜んでいいんだろうか……
まあ、可愛いと言われて悪い気はしないんだけど。
「ええ。
うん、間違いなく可愛かったんだろうな〜、と
「あっ」
「……」
「あら、
「良かったね、お母さん。都合よく娘もいて。まさか同じ高校だったとは……」
「そう言えば言ってなかったっけ? 二人は仲良しだから知ってると思ってたんだけど」
「仲良しなんかじゃ……ないから」
仲良しじゃない、か……
この家で初めて会って以来、
入学前にオリエンテーションも有ったんだけど、別々に暮らしてたし、学校でも会わなかった、と思う。お互い変わってしまったって知らなかったからすれ違ってても気づけなかったかもしれないけど。だから、入学式当日まで、同じ高校の制服を着ているのを見るまでお互い知らなかった。
当然、
◇◇◇
まあ、そうじゃなくても掛けづらいんだけどさ。うーん、こんな筈じゃなかったんだけどなぁ……
とはいえ、ここで凹んでいるわけには行かない。ぼっちだった中学時代を払拭し、高校デビューするんだから! イメージするのは、初めて会ったときの
気合を入れたら実践あるのみっ。
「おっはよ〜」
「「「……」」」
あれ? 硬直してる?
「えーっと……」
桜は……もう散ってるか。兎に角、正門をくぐり、真新しい制服姿の男子に挨拶したんだけど……、何か変だった? 僕。
「お、おはよう」
「おはようございます」
「おは……よう」
良かったー、気合入りすぎてドン引きされたかと思ったよ。
「よろしくねっ」
「「「よろ……」」」
あれ……
そんな事が何度かあり、両親と別れて教室へと向かう。
同じ教室なんだけどな……
「おっはよ〜」
元気に教室に入ると、何人かから返事は帰ってきた。まあ、沈黙とかじゃないから良かったことにしよう。
座席は最前列中央に
◇◇◇
入学式を終え、教室に戻ってくると、僕の周りにも少しづつ人が集まってきた。
僕の周りに集まってきたのは男子と、男子っぽく見える女の子だ。うん、元々男だったんだろう。僕と同じ境遇か。大変だよね、お互い。
「ねえねえ、アドレス交換しない?」
「いいよー」
なんて、訊かれるままに連絡先を教えてしまった。
「うわっ」
「どうかした?」
「えっと、何でもないよ」
いつの間にか戻ってきてた
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