01.02 「女の子だと思ってた、よね?」
女の子……だよね?
顔は間違いなく女の子だし、髪も長いもん。でも、何でお洒落してこないんだろう。仮装もOKってパーティーなのに。前髪で顔が隠れちゃってるし、何より、その格好はないでしょ。男装するにしてもそれじゃね……、オタク男子の仮装? それに、賑やかな立食パーティーなのに、ぽつんと隅っこってのもどうかと思うよ? 何も食べてないみたいだし。
放っておけないのよね、こういうの。だから、声をかけてみることにしたの。
「
「う...うん。中2ですけど」
「同じだねっ。私のことも
こうして仲良くなって、色々と話したっけ。いや、違うか。一方的に私が話してた気がするな。大人しいのか、警戒してるのか、自分のことはあまり話さなかったのよね、
翌年の社員旅行、私は約束通りディズニーランドを選択していた。お母さんはディズニーシーがいいと言った。予想通りだ。お酒が飲めるかどうかが重要みたいだから。
そう、お母さんとは別行動。だって折角仲良くなった
社員旅行1日目。集合場所のお母さんの会社前に着くと、白いシャツにデニムという男の子っぽい姿の
「ねえ、ちゃんとランドにしてくれた?」
「うん。父さんはシーがいいって言ったんだけど、友達と行くからって別行動にしてもらったよ」
「やったー。お母さんもシーに行くから
「そう、だね」
「なあにぃー、あんまり嬉しそうじゃないわねー」
「そんなことは……ないけど」
男の子っぽく見えるのは服装だけが原因というわけでもなくて、在るべきものというか、成長しているべきものが無かったの。私も自慢できる程じゃ無いんだけど、
「それに、何でそんな格好なのよ。ワンピースとか似合いそうなのになぁ」
「ワンピース……」
「まあ、彼氏っぽいのもいいんだけどね」
「……」
「ん? 私、何か変なこと言った?」
「いや……流石にワンピースはないかなって……」
「……」
「はぁ」
ため息も出るわよね。だって、
「女の子だと思ってた、よね?」
「えっと……うん。ごめん」
「じゃあ、明日は――」
「大丈夫、うん、大丈夫よ」
だって、約束してたんだもん。勘違いだったからって無かったことになんて出来るわけないよ。それに、一人じゃちょっと不安だったし、
最初はちょっと気まずかったけど、一緒に都内を観光して、夜のパーティーでは普通に話せるようになってたかな、彼とも。
「ねえ、それって伊達メガネ?」
「いや、昔謎の頭痛に悩まれてさ。確か遠視って言われた気がするんだけど、眼鏡かけたら頭痛も治まったんだ」
「老眼?」
「遠視だって」
「冗談、冗談。今も眼鏡無いとダメなの?」
「最近は平気だけど、何で?」
「ちょっと外してみてよ」
「まあ、いいけど」
「……」
「あの……」
「ふーん、こうなるんだ。私はこっちの方が好きかな」
今日はオフィシャルホテルに宿泊して、朝食を済ませたらいよいよディズニーだ。
社員旅行といっても2日目は完全に自由行動なの。お母さんも
男の子と二人でなんて緊張するし、
「手、繋ごうか。逸れたら困るでしょ?」
「うん」
「綺麗な手ね、
手を繋いだのはデートとかそういうのじゃなくて、逸れないようにってだけなんだから。とにかく、私が
最後に
そこで、お母さんから
「
って言われた時には、お母さんもびっくりしてたっけ。
「えっ?
だよね、お母さん。わかるよ、その反応。
その後、二人でディズニー行ったことについてあれこれ訊かれたけど、私も女の子だと思ってたんだから仕方ないもん。
そして、今日は新居への引っ越し。お母さんの仕事の都合で入学式直前なんだけど。
でも、私が生まれて直ぐに父が亡くなり、今まで一人で育ててくれた母が掴んだ幸せを台無しになんてできない。
頭では解ってるんだけど……
「久しぶりだね、
私の記憶の中の
「……」
そんな
最初はインフルエンザかと思ったんだけど、五日間も高熱が続き、解熱した時には男の子になってた。突然変わったのか、徐々に変わったのかは解らない。意識が朦朧としていたから体の変化にも気付けなかったのかも知れない。性格の変化は……副次的なものだと思う。今まで女の子として生きてきたのに突然こんな体になって……
正直困惑している。どうしたらいいのか解らない。
なのに、
まるで望んでた事のように嬉しそう。そんな人じゃないって解ってるのに、私へのあてつけのように思えてしまう。
でも、ごめん、
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