第34話 DIE WITH ZERO
「DIE WITH ZERO」。私はもう難しい本や自己啓発本の類は一切読まないように決めていた。しかし、たまたま手にした「DIE WITH ZERO」ビル・パーキンス氏の著書。その名の通り、「ゼロで死ね」。
考えさせられる本だった。お金の価値は年齢によって変わる。最初意味は全く分からなかったが、確かに、20代で100万円あげるから、何に使っても良い!ただし貯金や投資以外で!と言われたら、海外旅行に行ったり、チャレンジしたかった事にお金を使ったり、100万円を使い切る方法は、迷うほど候補があったと思う。
では、40代を過ぎた私が100万円を貰ったとしても、海外旅行は疲れるし、出かけるのは億劫、何かチャレンジしたい事も、今さらそんなに多くない。使い道があまり考えられない。
若いうちに、お金はいろいろな経験に使っておくべきものだ。私にとっては今さらかも知れないが、この本を読んだ瞬間が一番若い時なのだから、後悔の無いお金の使い方を考えるようになった。
老後の資金を考えるようになってきたら、もうその時点で老後の始まりである、という言葉を思い出した。
この本によれば、お金持ちであってもお金の不安は生きている限り持っている、私の様な庶民は尚更、お金の不安を一生持って生きることになる。お金を貯める事、それを死ぬ寸前まで繰り返し、結局は「やりたかった事」「チャレンジしなかった事」など、後悔を残して死ぬことになる。それは、幸せな生き方ではない、と。
私は、両親を看取ってから、死ぬ。これは、メンタルが狂っていた時には自分自身が今すぐ死にたい状態であったので、無かった考えだが、今はそう思う。そして、いつ、私の難病遺伝子が発動するか分からない。
5年、最長で10年。これを私の残りの人生として設定した。老後の事を心配したら、絶望しかない。政府も、NISAや確定拠出年金など、自分の老後資金は自分で投資しろ、と言っている訳だ。
私は、前職で企業型確定拠出年金を掛けていたが、そんなものはそもそもなかったと考えるようにした。もしくは、スポーツカーを買って、自損事故を起こしてお釈迦にした、と思えば何とも思わない。
今の貯金と、今後最長で10年働けたとして、どれだけの資金が得られるかは想像がつく。親孝行はしておきたい。あんな父だが、今となっては自分でなりたくてなった病気ではないし、偏屈な性格なのも、自分も頭の意識だけはっきりしていて、体も動かない、呂律も回らない、では、かなりもどかしいだろう。でも、父は強い。強靭なメンタルだ。あんな難病で不自由な生活にも拘らず、「生」に対する執着はものすごいものがある。誰に迷惑をかけても、何も感じない、そしてそこまでして長生きしたい執着は、どこから来ているのか、私にも不明だ。
かわいそうなのは、母だ。父の介護に加え、私自身も心配をかけているからだ。一回メンタルを壊したら、完治することは無い。「寛解」という人もいるが、私は、それは無いと思っている。油断したら、即、再発、そして、更なる悪化と再発を繰り返す。私は未だに、月に一回は精神科に通っている。
そして、最近は指先が痛い。整形外科にも通っているが、血液検査の結果、リウマチの様だ。父方の血統は、脊髄小脳変性症に加え、リウマチの血統でもある。今はまだ、日常の生活に支障はあまりきたしていないが、ペットボトルの蓋を開けるのが目一杯くらい、握力は落ちた。痛み止めを飲んでいるが、痛みを感じない日は無い。いつまで、パソコンのタイピングもできるのだろうか…。
最近は、何もない平らな地面で、つまずく事も多くなってきた。これは脊髄小脳変性症の予兆なのだろうが、さすがに、精神科、整形外科に加え、脳神経外科に行く勇気は、今は無い。これ以上、母に心配を掛けたくはない。
もし、母が先に亡くなってしまい、父が残ってしまったらどうなるだろう…。最近よく夢に見る。
私自身の健康ですら、残された時間があまりないのも、現実として受け止めなければならない。
「DIE WITH ZERO」。後悔無い人生を送るためにも、現実を直視しなければならない時期に、どうやら来たようだ。
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