第25話 番外:2020年 75回目の終戦記念日を迎えて

 昭和20年8月15日。玉音放送にて、日本の敗戦が国民に伝わった。この日を、日本では、終戦の日としている。

 テレビでは、「この時期だけ」は、NHKを中心に、さまざまな戦時中の事が明らかにされたり、当時の辛さ、残酷さを取り上げる。

 NHKで、以前うっすらと観た記憶があるので、再放送だと思うが、ドイツでの「T4作戦」について放映されていた。

 T4作戦。端的に言ってしまえば、1941年、ナチスの優性思想による虐殺。戦闘力にならないと判断された人は、国家に役立たない者、として抹殺可能との命令がヒトラーより下され、ドイツ国内だけでも20万人以上が虐殺されたと言われる。これが、後のホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)と関連するとの説もある。

 T4作戦で、戦闘力にならないという理由で虐殺された人は、たくさんの障害者が含まれていたそうだ。

 1933年、ヒトラーが政権をとった年、断種法(遺伝病子孫予防法)が成立した。断種法により、約40万人の障害者や病人が断種手術を強制された。

 「価値なき者を殺す」。精神科医を中心とする医師が手を下したという事実。この時代に生まれていたら、私は、間違いなく殺戮施設に収容され、毒ガスで殺されていた事だろう。

 ドイツだけではない。日本(当時の大日本帝国)でも、戦時中は、障害者の子孫を残すことの禁止、知的障害者や精神障害者も病院に強制収容され、餓死したという。

 

 生産性がないと人間は生きる価値が無いのか。現代では、人類多様性などの言葉を使って、一応の理解を得ているように見えるが、根底には、「優性思想」という感情は、現代の日本においても、持っている方は多いと感じる。

 一昔前で言えば、石原慎太郎氏の、障害者には人権があるのか?という内容ととれれる発言など、結局人間は、弱者を見つけ、それを叩く事で、自分の存在意味、存在価値を肯定しているのではないのか?


 私がまだ小さかった頃、ガンダムというアニメが流行った。私が学生の頃は、銀河英雄伝説(小説)、高校生の頃は、エヴァンゲリオン。

 内容は、ガンダムはニュータイプと呼ばれる、宇宙に適合した強化人間・真の人類。しかし、ニュータイプの能力が一部の人間しか身に付けられなかった。

 銀河英雄伝説は、劣悪遺伝子排除法。「遺伝子が全てを決する」。先天的な障害を持って生まれた幼児は安楽死。しかし、この法律を定めたルドルフ大帝と王妃の間に生まれた息子が先天的な生涯を持つ男児が生まれ、ルドルフは母子と出産に立ち会った医師を処刑する事になってしまった、という物語のくだりがある。

 エヴァンゲリオンは、チルドレンと呼ばれる、汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン(EVA)に搭乗する限られた「適格者」が、人類を守る。


 内容は違えど、やはり、「持つ者と持たざる者」をストーリーとした話は多く、そして人気でもある。

 作品としては、「持つ者」の苦悩について描かれる事が多い気がするが、やはり根底には、遺伝子(先天的に持つ能力)に優劣をつけているように見える。優れているゆえの苦悩と葛藤。それもあるだろうが、「持たざる者」は何もできない、意味のない存在なのか?


 今では、出生前診断で、生まれてくる子がダウン症(染色体異常児)であるかが分かり、「産まない決断」が出来る。

 遺伝子操作技術も発達し、優秀な「デザイナーベビー」の誕生に繋がる。

 何が幸せなのか、どうすれば最適なのかは、分からない。しかし、ヒトゲノムの解析も終わり、遺伝子操作技術は完全ではないが発達している。もう、その先に踏み込むかどうかは、「倫理観」しか残っていない。

 

 私は、爆弾難病遺伝子の抱えて日々生きている。決してうれしい事ではない。当然、不安に苛まれ、最悪だ。でも、先祖を恨んだりはしていない。この境遇であったからこそ、何となく、健常な何不自由ない人とは違う考えを持った気もするし、何を幸せと感じるかは、その人によって違うことも、少しだけ分かったような気がする。

 

 私は、持つ者と持たざる者、という能力的な括りではなく、この世に人間として生まれた時点で、「持つ者」であると思いたい。

 やはり人間として、まず自分自身が幸せを感じる事、大切な人に幸せになってもらいたいと思う気持ち、欲を言えば、人に元気や幸せ、勇気などを持ってもらえるような人間になれば、自分自身も、最高に幸せなのではないかと思う。

 やはり人間は、人に「ありがとう」と言ってもらえたら、何よりもうれしい、と思い、そして感じることができる、唯一の動物であると、私は思っている。

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