第23話 恩人と引き換えに
休職して約1年半。最初の約2か月、有給休暇はほとんど使っていなかったので、40日満タンの消化。有給休暇扱いなので給与が出ていましたが、それ以降の生活は厳しかった。その一言に尽きます。
お金を絶たれた後の、うつ症状の悪化は、急速かつ急激なものでした。会社からの説明はなく、ただただ、永遠とほったらかし状態。解雇なら解雇!と言ってくれた方が、どれだけ楽だったか…。
父親も動けない、母親も高齢。もう、一家心中しか頭に浮かばなくなっていました。主治医の先生にも、「もう、無理かもしれない…。どの薬を飲んでも、良くなりません。」毎週のように、カウンセリングや相談に行っていました。そのお金も、貯蓄の取り崩し。
将来、自分は生きていくことが出来ない。老後なんて考えられない。親を看取ったら、自分も死のう。そう思っていた。
会社で唯一、相談に乗ってくれていた恩人にも、もうダメです、最初のうちは、転職やアルバイトも考えたけど、もはや、その気力すら無い。身体も動かない。脳の誤作動とは分かっていても、やはり、この祟られた葉月家の呪縛から逃れることはできないようです…。
恩人も、さすがにこのままでは私が自死(一家心中)しかねない、と察してくれたのか、病院に入院するようにいろいろと手を尽くしてくれた。
しかし、精神病院だ。入院するとなると、それは地獄絵図のような病棟が待っているらしかった。病院からは、今の葉月氏の精神状態くらいでは、入院させることはできない。入院すると、他の患者に引っ張られて、余計おかしくなってしまうだろう…。自死を止めるために入院するのは、もっと後の状態である、と。
どれだけ、うつ病、精神病というのは、奥が深いのだろう。私のこの症状でも、まだ軽くて入院させることはできない、これ以上の辛さってなんだのだろう。もはや発狂レベルだろうか…。
恩人は、今度は会社に働きかけてくれたようだ。このままでは、アイツは死ぬ。人手不足で猫の手も借りたい状況なのに、アイツがこのまま腐っていくのは見ていられない。なんだって、アイツのできる仕事はあるじゃないか!
人事総務課に、そう言ってくれたようだ。
そして、4月の定期人事異動。
私は、復職する事が出来た。もちろん、最前線では働けない。地方拠点の、雑用兼、経理、庶務、全般をやらせてもらえるようになった。
しかし、この会社は、復職=フルタイム働く。段階的に仕事量を増やしたり、慣れるまで時間短縮勤務をするなどの、復職支援プロブラムは存在しない。
でも、これが私に残された最後のチャンスだ。どんな仕打ちやいじめを受けるかは、容易に想像は付いたが、生きるための金は稼がなければならない。
そして、4月付で、復職した。
そして、恩人は、4月付で、とても会える距離に無い遠い地方拠点に転勤となった。直接会ってお礼を言いたかったが、叶わなかった。
これは、私を復職させるように尽力してくれたことによる、制裁人事であることは明らかだった。申し訳ない気持ちでいっぱいであったが、この恩人がこの会社に居る限り、自分も何とか生き抜こう、そう決心した。
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