第22話 ヒポコン、それとも…
休職は長引いた。総務人事部からも、全く音沙汰がない。給料も支払われない。しかし、会社からは、健康保険や税金の支払い督促だけは、郵送で来る。
今まで、そんなに遊んでこなかったし、多少の貯金はあるつもりだった。しかし、ここに来て、老後の資金と思って貯金していた、最後の定期預金を解約する羽目になるとは思ってもみなかった。
金。やはり金が無いと、生きていくことはできない。好きな事が出来るかできないか以前に、生死の恐怖を痛感する。お金が無くなったら、通院もできない。薬だって買えない。1円だって、他人は恵んではくれない。それに、将来の事を考えたら、余計に病状は悪化していった。
長いこと、人と話していないので、言葉が出てこなかったり、どもったり、呂律が回らない事もあった。
やはり長いこと、自宅待機が続いていたので、よろついたり、足元がおぼつかない事もあった。
これは、もしかして、自分にも「難病」が、迎えに来てしまったのではないか…?
恐怖した。不安どころの騒ぎではない、絶望だ…。もはや精神的にかなり厳しい状態に来ていたので、パソコンを操作する事も出来ない状態であったが、さすがに、インターネットで片っ端から調べてしまった。藁にも縋る思いだった。
相変わらず、何一つ、良い情報はない。脳神経外科を紹介するホームページしか見つからなかった。しかし、そのホームページを見て、症状を確認する限り、自分の今の状態と合致するところが多かった。
とうとう来たのか?Xデーが…?
不安と恐怖、そして、うつ状態、仕事もお金もない。頭は混乱を通り越して、身体に更なる誤作動を起こしはじめた。難病もうつ病も、どちらも脳の病気だ。脳ごと交換できないのか…。
精神不安からヒポコン(ヒポコンドリー性基調者)になってしまい、自分自身がこの病気なのではないか、と思い込んでいるだけなのか?全く以て、自分では分からない、知ることが出来ない。でも反面、正直なところ、知りたくもない…。
眠れない日々。うつ病による投薬治療は受けていたが、睡眠導入剤をもってしても、眠れない夜は続いた。夜は長い。そして暗い。想像以上の長時間に感じた。明るい昼間も辛ければ、暗い夜も、恐怖に値するほど、怖かった。
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