第15話 青森へ…家族旅行

 うつ診断…。どうしよう。もう、どうにもならない。会社もしばらく休職。家にずっと居るのも苦痛。

 ふと、旅に出ようと思い立った。そういえば、伯父が定年退職後、青森県に単身赴任で、短期大学で教鞭をとっている事を思い出した。私は青森県に行った事はなかった。自宅関東から片道750㎞。伯父に連絡した。事情は説明しなかった。ただ、会社の有給休暇が溜まってしまって、しばらく休めるので、と。

 せっかくだから、大間のマグロを食べなよ!お父さんもお母さんも一緒に!青森も案内するよ!と言ってくださった。

 父と母か…。考えてもいなかった。そういえば、私が小学生低学年の頃以来、家族で旅行などしたことが無かった。

 せっかくだから、両親を誘ってみた。オヤジは、「俺が行っていいのか?」って言ってたけど、多少動けるうちに、車いす積んで行こう、と誘った。

 車いすで公共交通機関を利用するのは、僻地の田舎に住んでいる我が家には無理であったので、きついけど、車で行くことにした。

 道中は、運転している私だけでなく、同乗している両親も体に堪えただろう。やっと約束の青森駅に着き、当日は青森駅前のホテルに宿泊。翌日、大間に移動。

 まさに大間、下北半島の先端、本州の最北端。そこの民宿を、伯父は手配してくれた。大間の人も、大間のマグロは高くて食べられないらしいけど、一人3切ずつ振舞ってくれた。あれ以来、大間のマグロは食べた事が無い。

 翌日は下北半島を一周し、霊場・恐山も訪問した。父は車いすの関係で、父だけ入り口で待機となったが、自分たちは恐山を歩き回った。まさに、この世とは思えない風景だった。この世なのか、あの世なのか…。あの不思議な感覚は今も忘れられない。

 世界の観光地にも行った事が無いが、日本もほとんど観光地に行っていないなぁと気づかされた。恐山の風景を見て、なんか、自分の存在の小ささ、その自分の抱える悩みなんて、もっと小さいのではないかと思えた。

 その他もいろいろと立ち寄ったが、無事青森旅行を終え、自分にとってはリフレッシュとなった。両親も、まあ、おいしいものが食べられた、と喜んでいたので、それも結果的に良かったと思う。もう一度、恐山には行ってみたいと思っている。

 元気になったら、もっと旅行に行こう、それだけを楽しみにしよう、そう感じた。できれば、まだ少しでも元気なうちに、両親もつれていくことが出来たら…そう思う旅だった。

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