第6話 青春のない学生生活

 大学生。聞こえは良いが、理系の機械工学科だ。3流大学とはいえ、かなり課題はきつかった。週に1日は絶対に徹夜をしないと課題が終わらない。普通の講義に加え、実験レポート、設計製図など、提出物がたくさんあった。

 要領の良い学生は、部活やサークルの先輩に手伝ってもらったり、友人から写させてもらったり。私は、通学に片道3時間以上かけていたので、部活やサークルといった活動に参加できなかった。ただただ、毎朝1限から授業に出席し、夕方5限までぎっしり講義を受けた。ちなみに、1限は90分だ。

 大学が終わると、地元、といっても田舎で何もないので、最寄りの塾で、中学生に数学と英語を教えた。塾の講師と言えば、高給なイメージがあるが、時給は1000円。当時の塾講師としては安い部類だ。今流行りの、個別指導の最大手塾であった。反抗期とはいえ、中学生に勉強を教えるのは、自分にとって為になる事であった。そういう視点で考えたことがない、など、若い生徒に刺激を受けた。

 そしてその時だけは、自分の境遇などすっかり忘れることができる時間であったことも確かだ。せっかくだから、英検2級まで取得した。中学生に英語を教えるには、定量的に資格を持っていた方が、何かと説明がつくし、英検を受ける中学生にアドバイスもできた。

 大学生と言えば、バイト三昧、勉学なんてろくすっぽしなくても、学校にあまり行かなくても卒業できるんでしょ?というイメージとはかけ離れていた。

 とにかく私は、朝から晩まで勉強した。そして、ノートが評判になり、友人ができ、私のノートをコピーさせる代わりに、部活に入っている友人の先輩からの過去問を入手したり、ギブアンドテイクの関係を築いていた。

 おかげで、何とか大学4年間、成績1位を死守し、学費を免除して頂いた。卑怯な手も使ったが、真面目にやっているだけでは、学費免除は受けられなかったと思っている。

 しかし、そのような毎日を暮していた。機械工学科といえば女子も居ない。周りにも女子はいないし、そんな余裕もなかったという事もあるが、やはり父が難病であり、自分もその遺伝子が組み込まれているのではないか…と思ったら、恋愛をする気にもなれなかった。

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