天と地獄の挾間
──翔が再び目を覚ますと、薄暗い空に大きな谷の一本道、そしてどこまで続いているのか分からないほどの大行列が目に入った。
「ここは……どこだ?たしか俺は死んだはずだが」
そう呟いた翔だが、彼自身ここがどこなのか、だいたい想像はできていた。
──恐らくここは地獄。もしくは地獄行きか天国行きかを決める段階の場所であろう。
もし後者であればこの先にかの有名な閻魔大王様がいるのは自明の理。
行列へと並ぶのが明らかに先へ続く道である。
しかし前者となると……。
彼自身、悪行を多く行った自覚があったわけではないし、そもそも罪にあたるようなことはしたことがなかったためにあまりそのような心配はしていない。
だが万が一ということがある。
もしそうなれば梅乃との約束は永遠に叶わぬこととなり……。
そう考えると恐ろしくてたまらない。
翔はそんな気持ちを振り払うように頭を振り、駆け足で行列の最後尾へと駆け寄り、遠くを眺めると巨大な影がぼんやり見えた気がした。
あれが例の閻魔大王様とかいうやつか。
とりあえずここが地獄ではないことに安堵し、ため息とともに胸をなでおろしていると、突然肩を叩かれた。
「よう!久しぶり。高校以来か?」
彼は
高校のときに特に仲の良かった友人の1人だったのでもちろん覚えている。
見た感じ高校生といった若さだったので、すぐに思い出すことが出来たのだが、この場所に来た人々は全盛期の頃に外見年齢が戻るのだろうか?
「よう。久しぶりだな。ってかお前も死んだのか?」
……自分で言うのもなんだが精神年齢も若返っているようだ。
「おう。寿命でな。今からあのデカブツに天国か地獄か裁かれるんだろ?少し怖くなってきたぜ」
「ははっ。俺が天国でお前は地獄だな!」
「馬鹿野郎。俺もお前も天国だわ」
久しぶりに再開した友人と昔のように冗談を交わしながら談笑するが、翔にとって亮太は一緒にいてとても心地の良い友人であり、彼の恋愛事情を知る数少ない友人の1人でもあるのだ。
当時のように一緒にいて心地よくなるのも精神年齢ごと若返っているのと関係があるのかもしれないが。
とりあえず彼は閻魔大王の前に到着するまでにだいぶん時間があったので友人との会話で時間を潰すことにした。
※※※
どのくらい時間がたっただろうか。
思い出話に、しりとり、それから軽い手遊びをしたり当時流行った歌を2人で熱唱してみたり。
気がつけば2人の前方には10人程度しか人が残っていなかった。
だんだんと近づいていくごとに、梅乃に会えるかもしれない期待で体が満たされていくようだったが、同時に不安も強くなってきた。
「やべっ。めっちゃ緊張してきた……」
「ほんとそれ。俺も少し不安になってきた……。まあ、あの子との約束があるお前に比べたらこれくらい、って感じだな」
「ま、まあ、そうなんだけどさ。いざ言われるとこっちも照れるからそんなこと言うなよ」
「大丈夫だって。お前は絶対天国に行けるよ。俺もついて行くがな。」
そう言って亮太は翔の不安を払拭するように軽く笑いかける。
そうこうしているうちにいよいよ翔の番に。
──さあ、運命のときだ。
天国で再び君に会う まかろーん @macarooon
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