二月の五日間 …パンデミックな週末…

13●疫病神のつぶやき（10）…一年延期はＣ国のアフターコロナ戦略？

　吾輩は疫病神である。

　事態は実に目まぐるしく動く。

　３月１６日（火）現在……

　昨夜、Ｇ７の首脳会議をＴＶ方式で行ったＮ国のＡＢ首相は、オリンピック開催に関して「完全な形での実現」を強調したものの、“開催時期”については明言しなかったと伝えられる。

　これまでは「予定通り開催」だったアナウンスが、ついに沈黙となったようだ。

　で、太平洋の向こう、Ａ国のＣＤＣは、３月１５日に、「50人以上のイベントは８週間中止せよ」との勧告を出した。

　五月中旬にかけて、オリンピックに向けての予選会など諸準備がストップする。

　そしてＡ国のＴＲ大統領は１６日に、Ａ国における新型コロナウイルスの影響は「７月か８月、あるいはもっと」続くと述べた。

　Ｎ国国内のある世論調査では、オリンピックの「延期」を支持する人が６３％とか６９％だとか。

　どうみても、延期ありきの流れじゃないか。

　では１９日にＮ国のＡＢ首相が会見でどのように述べるか。

　こりゃ、「五輪延期」と「緊急事態宣言」がセットになるんじゃないかねえ。

　だってさ、「五輪延期」だけでは話題が後ろ向きで、ショボい。

　そこで「緊急事態宣言」を打ちだして、コロナと闘うプレジデントヒーローの、カッコイイ前向きなリーダーシップを印象付けるのだ、どうかなこの提案。

　それがいいのかどうだか、吾輩にはわからんがねエ。

　で、オリンピックである。

　一年延期か二年延期か。

　ここは、政治的な対立勢力が、裏側で、つばぜり合いを演じることだろう。

　在任中にオリンピックを開催したいＮ国首相や、組織委員会のＭ会長は、一年後の開催を推し進めることだろう。二年後だと、自分が今と同じポジションにいるかどうか、わからないからね。

　それら“旧体制”をこの機に一新して、次世代のリーダーの下で新風を吹き込みたいと考える勢力は、二年後の開催を主張することだろう。

　しかし吾輩の見立てでは……

　一年後、だろうなア。

　というのは、Ｃ国のことである。

　このたびのウイルスはＣ国から広まった。

　いまさらどうにもできない公然の事実である。

　で、来年以降、パンデミック騒動が収まったら、世界各国は気持ちよくコロナをコロッと忘れてＣ国と仲良くしてくれるだろうか？

　それはちょっと……だろうねえ。

　表面（おもてづら）はともかく、本音はいろいろ、ドロドロもあるさ。

　Ｃ国は、国際的に厳しい視線にさらされる。

　そりゃそうだろう。

　あのウイルスに家族や友人や恋人を殺された人々にとっては……

　これから当分は、Ｃ国に対して複雑な感情を抱かずにおれないだろう。

　そもそも誰が、死神を世界中にばらまいたのだ！　……と。

　あとから恨んでも仕方ないとはいえ、とてもフレンドリーな目出度い気分にはなれないのが、人情というものではないだろうか。

　たとえオリンピックといえども、感情的なしこりは残る。

　パンデミックをいち早く克服して元気一杯のＣ国選手が、Ｃ国発のウイルスで数百数千の犠牲者を出した欧米の国の選手に打ち勝ったとき、敗者が勝者を素直に心から祝福して抱き合えるだろうか？

　ちょっと無理だと思う。人間的に、そこまで美談を要求するのは無理だと思う。

　まァそれでも、勝ちさえすればいいサと、Ｃ国が割り切ることもできるかもしれない。

　しかしＣ国は、知らんぷりを決め込むことはできない。

　来る２０２２年２月、冬季五輪の開催地はＣ国首都のＰ京なのだ。

　冬季種目の強豪は、やはり欧米勢である。

　Ｃ国選手が勝った時、負けた欧米側観客席から「おめでとう（コングラチュレーションズ）・コロナ！」と指差しで連呼されるようなことは、あってはならないだろう。

　五輪のホスト国として、終始なごやかな平和と友好の祭典を演出し、この場でこそ過去を脱却して、“コロナ禍の禊（みそぎ）”を行いたいはずである。

　世界各国との感情的なギスギスを、冬季五輪を機に、後日に引きずることなく綺麗さっぱりと洗い流したい。

　閉会式は、欧米のコロナ被災国とともに手を取りあって、平和と繁栄を祝いたいことだろう。

　そのための事前プレゼンテーションの舞台として……

　Ｐ京冬季五輪の前、２０２１年の夏にこそ、ＴＫ五輪を持ってきてもらいたい……そう望んだとしても不思議はなかろうネ。

　一年延期でＴＫ五輪が開催されるこの時、Ｎ国のＴＫ都に、各国首脳が訪れる。

　絶好の、ロビー活動の場である。

　Ｃ国のＳ総書記も、おそらくその直前にＮ国へ国賓として招かれるのではないだろうか。

　それと引き換えに、Ｎ国は、Ｃ国に有利な国際交渉の場を、喜んで提供するであろう。

　Ｃ国のロビイストはＴＫ都のホテルに滞在する参加各国の要人に接触し、なにくれとなくサービスし、数か月後に迫った冬季五輪Ｐ京大会への、平和的かつ友好的な参加への道筋をつけようと、陰ながら活躍することが……できるんじゃね？

　おお、このような外交の舞台は、名作映画の『會議は踊る』みたいで、ラノベのネタにＧＯＯＤかもしれないねエ。

　謎の疫病で、家族が犠牲となったスポーツ選手の美少女と、疫病震源地である架空の軍事国家から来た若き外交官の悲恋、みたいな。

　そこに密かに開発されていた万能ワクチンがからむとかさ。

　それはおいといて。

　ＴＫ五輪を２０２１年夏に延期すれば、そこは……

　コロナ後の世界……アフターコロナの最初の国際的外交の大舞台となるのだ！

　ＡＣ元年である。

　新機動戦記だよ、吾輩好きだな。特にマリーメイア、最年少級の独裁者だ。

　あ、それもそっち置いといて……

　ともかく「一年延期」で２０２１年夏の開催……

　それはＣ国にとって極めて好都合で、ぜひとも必要なことであろうとご推察申し上げる次第なのである。

　だから、いまごろ舞台裏であれこれあって……

　「一年延期」で落ち着くんじゃないかねェ。