3●WHОは慄《おのの》き、国民は試される?
3●WHОは
これは、パラレルワールドのN国のお話です。
くどいようですが、あくまで架空のN国にまつわる、創作的妄想のシミュレーションですよ。
くれぐれもお間違えなく。
それにしても、2月26日まで何かと能天気……もとい、楽天的で“パンデミック”を全く認めていなかったWHОのT事務局長が、26日から27日にかけての一夜で発言を翻して「パンデミックの可能性」を認め、次いで28日に新型コロナによる肺炎の地域別危険性評価で、世界全体を、これまでの「高い」から「非常に高い」と最高位に引き上げたのは、いったい何があったのでしょうか?
あまりにも急な心変わりですね。そのココロはいかに?
浅学非才の筆者にはわかりかねますが、“パンデミックの可能性”を認めた2月27日の発言で「イタリアでの流行は実に驚き」とあるのが気にかかります。
流行地はイタリア北部、そこはスイスに国境を接しており、T事務局長のWHОが所在する都市ジュネーブからは、東京=名古屋間程度にしか離れておりません。
すでにT事務局長ご自身の目前に、新型疫病神が迫っていたのです。
地球の裏側のC人民共和国やK国やN国の出来事だと思っていたら、いつの間に……
こりゃ慌てるわな……と思ってしまうのですが。
ちなみに“★2月27日(木)”のネットニュース記述で、WHОが“TK五輪の大会組織委員会と緊密に連携していて”とあるのも気になります。
WHОの所在地ジュネーブはレマン湖のほとりで、IОCがあるのは同じスイス国内のレマン湖のほとり、ローザンヌ。両都市は四十キロほどしか離れていません。
そうか、ご近所さん、だったんだ……
きっと両者、ツーカーの仲なんでしょうね?
ともあれ、この“二月の五日間”の出来事……N国政府を挙げての、イベント中止や全国休校の唐突な要請が後世になって「泥縄」「付け焼刃」「丸投げ」とディスられることのないように、国民にとって有益な実効性をもって行われることを祈るばかりです。
*
そして、N国の国内を振り返れば……
マスクに始まり、消毒液、除菌ウェットティッシュ、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、果ては紙おむつに至るまでの品薄騒動と転売屋の横行は、N国の行く末を憂慮せざるを得ません。(キッチンペーパーも無いぞ!:3月2日)
経済では先進国でも、モラルは後進的に低いのでは?
感染が怖いので群衆化して殺到する暴挙にはなりえないものの、店頭から品物が消えたこと自体、ひそやかにサイレント・パニックが進行していると思われます。
一方、N国政府はマスク等の増産を約束し、デマに安易に踊らされるなと叫んでいます。
それでもパニックが進行するとしたら、国民が、政府の言うことを全く信用していないという
政府を信じていれば、パニックは起こりませんから。
これは、現在の政権が、国民が信じるに足る存在であるか否かを試されているとみることもできるでしょう。
そしてまた逆に……
N国の国民も、政権によって、じんわりと試されています。
大型イベントの自粛や全国一斉休校などの方策は、N国首相からの“要請”とされています。
ニュース番組によっては“お願い”という表現も使っていました。
あくまで、法律的な裏付けのない、国民への呼びかけ……であって、“強制ではない”はずなのです。
なんぴとも、“法律に依らなければ、強制されない”のが、法治国家の大原則です。
たとえばN国憲法でも、
第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
などの条文があります。
ホント、ありがたい憲法だとつくづく感謝します。
この一文が無かったら全国が無法地帯、誰だって堂々と犯罪を行い、警察官も堂々と犯罪を実施し、その日の気分で罪なき人を証拠なしで逮捕したり拷問したり射殺したりできる社会になってしまいます。
このように、法律に依らずに何かを“強制される”ことは、基本的人権に関わる極めて重大な問題であること、どなたでもおわかりになることですね。
ですから、このたびのN国首相の“要請”に関して、どことなく“強制的な感覚”が社会の空気に蔓延していると感じ取れたら、慎重に警戒することも大切でしょう。
あくまで、従うか否かは当事者の任意なのです。
ですから“要請”に対する疑問や不満や反論を封殺してはならないはずです。
このたびの国内の状況に、“非常時”“戦争”“我慢”“挙国一致”“国民が一丸となって”“痛みを分け合う”的な表現が被せられることもあるでしょうが、そういった翼賛的な情緒に流されて“法律なしで誰かに何かを強制する”ことを容認しないように、互いに警戒して、“異端者への排撃”を自制することが求められると思います。
※注……“痛みを分け合う”のは情緒的にそんな気分になれることを指すのでしょうが、普通の人類はテレパスではありませんから、他人の痛みを現実に“分け合う”ことはできません。美しい言葉ですが、物理的にできないことはできないのです。それを、当然にできるかのように他人に要求するようなことがあったとしたら、いかがなものかと思います。あくまで個人的な感想ですが。
とはいっても、「誠意を見せろ=カネを出せ」がまかり通る国民性ですから、「痛みを分け合え!」と命じられたら条件反射的に懐から大事なものを差し出してしまうかもしれませんね。自分をしっかり持ち、他人の言動に流されないようにしたいものです。
これは、ウイルスの脅威よりも恐ろしい、もう一つの“国難”かもしれません。
“任意という名の強制”が、隣近所の地域社会にまで独り歩きする恐ろしさ。
“国難”なのだから強制するのが当然……と主張する人もいるでしょう。
しかし“強制”するならば、国会で審議し、法律を作り、施行すればいいのです。
誰もが納得できる法案なら、国会議員が全員賛成し、数日でできることですね。
“強制するなら、国会で法律を通すことだ”
そのことを私たちは、簡単に忘れ去ってはいないか?
ですから……
このたびの“要請”をきっかけに、“任意という名の強制”がまかり通る社会に堕ちていくのか、そうならないのか、N国国民も試されているはずなのです。
以上、堅苦しい話になって恐縮ですが……
新型コロナウイルスよりもはるかに危険な怪物は、モラルが果てしなく低下していることを自覚せずに“愚民化する国民”であると言えるのではないでしょうか。
病原体も含めて、地球上の生物で最も恐ろしいのは、“今ここに生きている人間”なのかもしれません。
*
なにかにつけて「これは“戦争”だ」という言葉が聞かれます。
明らかに間違いです。正しい意味で“戦争”であるはずがありません。
“防疫”と言い直してほしいものです。
もしも今の事態が本当に“戦争”だというのなら……
“我がN国は某国のウイルス兵器によって軍事的に侵略されている”状況だ、ということになってしまいます。
もしも万が一、本当にそうだとしたら大変なこと、憲法九条の問題です。
ラノベの中で戦争するのとはわけが違います。
リアル事態を軽々しく“戦争”呼ばわりすると、ろくなことがありません。
世の中に“戦争”気分が広まって起こることは、とりあえず……
トイレットペーパーの奪い合い、なのですから。
“戦争”とは、生命の奪い合いであり、生き残り競争です。
“戦争”と聞くと、N国民は速攻で“買いだめ”に走ります。
太平洋戦争の昔と同じで、“戦争=物不足”がDNAに沁みついているようです。
解決法としては、立法措置で特定の物資の流通を統制し、世帯ごとに“配給切符”を交付することで決められた分量以上に購入できないようにして、同時に、高額転売する“闇市”を摘発し処罰する……といったことが挙げられます。
あの時代の戦時中と同じ状況ですね。
なんと、進歩のないことか。
そうならずに済むように、不足品がすみやかに供給されることを願っております。
ともあれ今、N国民が直面しているのは“防疫”であり“感染対策”なのですから、くれぐれも“戦争”と間違えないようにしましょうね。
*
なのに、この期に及んで“集団感染”を“クラスター”と言い換える方便の寒々しさ。
たとえば「〇〇学園にクラスター出現!」とか。
ラノベかよ。
まるで宇宙人に侵略されているようで、悪い意味でSF的です。
ガダルカナル敗北の“撤退”を“転進”という新語をわざわざ作って言い換えた大本営みたいな……
いつのまにか言葉が言い換えられている場合は……
“本来の危険性を誤魔化して、責任を
“クラスター”という用語には、もともと意味や分野の異なる用法があるのですが、これでは“クラスター=病原体感染”のイメージが固定されかねませんね。
※注……ちなみにリアル軍事では“クラスター爆弾”という非人道的な兵器があり、そちらのイメージがダブってしまうのですが……
*
今や全国津々浦々に、リアル不気味でヘンテコな空気が流れつつあります。
ここ数か月、感染防止に努めて、事態の推移を見守るしかなさそうですが。
N国民が直面しているのは“戦争”でなく、“防疫”。
防疫には、まず“自分がうつらない、他人にうつさない”が肝心でしょうね。
注意すべきは“家族・友人・近所の人”です。
どうしても、根拠なく“大丈夫だろう”と油断しがちになるからです。
家族でも、互いに距離を置いて過ごすことが必要なのかもしれません。
ひきこもり推奨……ではありませんが。
二月の最後の五日間、なんだかパンデミックな気分の週末となりましたが……
皆様のご健闘とご健康をお祈りします!
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