2●“二月の五日間”、N国はしっちゃかめっちゃか?

2●“二月の五日間”、N国はしっちゃかめっちゃか?



 これは、架空の世界の“N国”のお話です。


 パラレルワールドの2月25日(火)から、架空の異世界のN国をめぐって、下記の情報がネットニュースに流れました。


※ご注意

 ……下記のお話は、ネットニュースの内容を基本にしていますが、その真偽を筆者が立証することはできません。出来事の順序は厳密に特定できず、記述の順序通りに事件が推移したとは断定できません。

 したがって、下記のお話は、あくまで“事実を参考にしたフィクション”とお考え下さい。アバウトなゲームシナリオのようなものです。

 くれぐれも申し上げます。

 あくまで架空の“創作的妄想”でありまして、実在する国家・団体とは無関係であることをご承知おき下さい。


  〈項目の種類〉

   ◆=IОC関連

   ★=WHО関連

   ●=N国政府関連




●2月25日(火)夕刻。(Nippon News Network 等)

……N国政府は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、

  「基本方針」を決定した。

……イベントの開催については“一律自粛することは要請しない”。


★2月26日(水)(ロイター 等)

……WHОのT事務局長は、新型ウイルスは引き続き抑制されており、

  「パンデミック(世界的大流行)」ではないと述べた。

……T事務局長は「パンデミックという言葉を不用意に使用することに…

  (中略)…重大なリスクがある。パンデミックは新型ウイルスをもはや

  抑制できないというシグナルにもなり得るが、それは事実ではない」

  と指摘した。【ネット配信を見たのは27日朝】


◆同日。(ニューヨーク共同 等)

……IОC委員のP氏が、TK五輪の「一年延期」の可能性に言及したと

  ロイター通信が26日、報じた。

【ネット配信を見たのは27日朝】


●同日、昼過ぎ。(NHK NEWS WEB 等)

……N国政府は新型コロナウイルスの対策本部を開いた。

……全国的なスポーツ、文化イベント等については、今後二週間は中止、延期

  もしくは規模縮小を要請する。

   →芸能イベント等の当日中止が相次ぐ。


◆同日、夜。(NHK NEWS WEB 等)

……N国衆議院予算委員会にて、五輪担当大臣は、IОC委員が東京大会を

  中止する可能性に言及したことについて、「委員の発言は公式見解

  ではない」とし、開催に向けて準備を進めると強調した。


★2月27日(木)(ロイター 等)

……WHОのT事務局長が「パンデミックの可能性がある」と認める。

……「イタリアでの流行は実に驚き」とも発言。

……WHОは、TK五輪の大会組織委員会と緊密に連携していて、

  開催の是非についてただちに決定されるとは思っていない、

  とした。(→◆2月28日参照)


●2月27日(木)夕刻(読売新聞オンライン等)

……N国政府は全国の小中学校、高校、特別支援学校を3月2日(月)から

  春休みまで臨時休校とするよう、要請することを決めた。

……N国のA首相は、「こうした措置に伴って生じる様々な課題に対しては、

  政府として責任をもって対応する」と明言した。

   →各新聞の号外版が発行される。

   →要請が突然であることに対して、省庁関係者の「走りながら考える」発言

    が報道される。


◆2月28日(金)午前(AFP=時事 等)

……IОC委員のP氏は27日、TK五輪について、“組織として中止や延期を

  検討することはない”との認識を示した。


●同日、午後。(産経新聞 等)

……N国のA首相は、全国への休校要請について「基本的な考え方として示した。各学校、地域で柔軟にご判断いただきたい」と発言。

  →学校現場サイドから、今さら柔軟に判断し直す時間はない、といった声。


★同日(ベルリン時事、毎日新聞 等)

……WHОのT事務局長がジュネーブで記者会見し、世界全体での新型コロナ

  ウイルスによる肺炎の地域別危険性評価で、これまでの「高い」から、

  最高位の「非常に高い」に引き上げたと発表した。

                   【ネット配信を見たのは29日未明】

……ただし、“パンデミックの宣言”ではないと強調。


●2月29日夕刻

……N国政府A首相が記者会見。記者の質問に答える形で、「IОC会長から、

  今回の迅速な対応に高い評価をもらっている」趣旨の発言あり。【TVより】




 なるほど、そういうことか……

 以上のとおり、2月の25日から29日までの五日間、コロナウイルスに関するWHОのT事務局長の発言と、IОC委員側の発言、そしてN国政府側の対応が激しく錯綜し、それぞれが“前言撤回”とも受け取れる変更をしていたことが浮かび上がります。


 WHОは、「パンデミックではない」→「可能性は認める」→「パンデミック宣言ではない」

 IОCの委員は、「オリンピックを一年延期?」→「組織としては延期などの検討はしない」

 N国政府は、「イベントの自粛は要請しない。(休校も要請しない)」→「延期や中止を要請する。さらに一斉休校も要請する」

 

 五日間のうちに、猫の目のように事態が急転しました。

 深刻な事態であることは事実なのですが、それとは別に、なんだか、しっちゃかめっちゃか感のカオスに彩られた週末でもあったような……。


 何があったのでしょうか?


 25日(火)の時点では、N国政府はまだ余裕を持って構えています。

 イベントの自粛は求めていません。全国休校も具体化していません。

 ところが……

 翌日、IОCのP委員から「TK五輪を一年延期?」との発言が伝えられます。

 N国政府、ギクッとします。心臓に悪いドッキンです。

 このまま黙っていたら、本当に延期させられるかも……と、不安になります。

 なにぶん、五輪のマラソン会場が、寝耳に水な鶴の一声でサッポロになっちゃったという経緯もございます。ここへきて悪夢の再来はたまりません。

 そこで行動を起こします。なぜか反応は驚くほど迅速です。

 “大規模イベントの中止・延期の要請”。

 25日に発表した“基本方針”を一夜で手のひら返し、してしまいました。

 さらに続けて、“IОCのP委員の発言は公式見解ではない”と否定し、五輪開催の決意を改めて表明します。

 しかしそこにカウンターパンチ。

 WHОの事務局長が「パンデミックの可能性を認める」と発言。

 世界的な大流行の可能性あり……、これは事実上のパンデミック宣言なのか?

 N国政府、あわてます。

 このまま黙ってはおられない。

 事態を放置すれば、WHОに“ただでさえ手ぬるいN国政府は、新型コロナウイルスを殲滅する気があるのか?”と、やる気を疑われかねません。

 そんなことを国際社会に発言されでもしたら、もちろんIОCのご機嫌を損ねます。マラソンどころか大会延期の悪夢がよぎります。

 ここは思い切って、本気を見せなくては。

 N国政府、またも迅速に反応します。

 “全国的な休校の要請”です。

 つまり“二つの決断”は両方とも、IОCとWHО、ふたつの組織に対する対外的な姿勢表明……政治的アナウンスの側面があったと思われるのです。


 “オリンピックは、やりまーす! そのために、これだけの手を打ちまーす!”

 ……ということですね。

 その結果……IОC委員のP氏はTK五輪について、今のところ“組織として中止や延期を検討することはない”との認識を示してくれました。

 ホッとするN国政府。

 張り詰めた気分が緩みます。

 「全国的な休校措置に伴って生じる様々な課題に対しては、政府として責任をもって対応する」と明言したA首相でしたが、翌日には、「(昨日の要請は)“基本的な考え方”として示した。各学校、地域で柔軟にご判断いただきたい」と、当初の“俺についてこい!”的な勢いが、なんだかトーンダウンしてしまいました。

 どこまで責任を持って対応してくれるのだろう?

 まさか現場に丸投げじゃね?

 そんな疑問が湧いてきそうですね。

 その回答は、29日夕刻のA首相の記者会見を注目するとしましょう。


 ということで……

 “二つの決断”はオリンピックに関わる外圧対応、国際社会へのアナウンスが本当の目的だったのかも?……という創作的妄想がもやもやと漂ってきた次第です。


 いや、それはそれでいいんですよ。悪いことではありません。

 決断自体は間違ったことではないのですから。

 本当の目的がどうであれ、イベント中止も休校も、いずれやらざるを得なかったでしょう。

 目的はどうあれ、手段は素晴らしい決断だと思います。


 にしても、超迅速な政策変更です。

 二つの決断ともに、急がねばなりませんでした。

 なぜならばその翌日の28日、WHОは、新型コロナウイルスの世界的な危険度に関連して、これまでの「高い」から、最高位の「非常に高い」に引き上げたのですから。

 29日の時点では、まだ世界的パンデミックは公式には認めていないと思われますが、その一歩手前といいますか、事実上の、ほぼほぼパンデミック宣言に近いものといえるかもしれません。


 この危機感が国際的に発信される前に、“手を打った”とすることが、重要であることは明らかです。発信された後に手を打ったら泥縄感満載となり、またも“言われたからやったのか”とか、“後手に回った”と評価されかねません。


 そして……

 TKオリンピックは、いまなお危機にさらされ続けているのです。


 このように、IОCやWHОの新型コロナウイルス関連の発言に、恐縮ながら振り回され翻弄されるN国政府の立場が察せられるような……

 テレビの画面に現れない、デスマーチ的なドタバタが舞台裏で展開していたのかもしれません。

 関係省庁の皆様のご苦労がしのばれます。


 そんな、実のところとても大変な“二月の五日間”だったようですね。




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