二月の五日間 …パンデミックな週末…

秋山完

1●英断を下した本当の理由は?

1●英断を下した本当の理由は?



 西暦2020年2月。

 その月末であり週末の25日(火)から29日(土)までの五日間は、二十一世紀のこの国にとって、実に特異な節目となる五日間になったことと思います。


 パンデミック……“感染爆発”の予感。


 説明するまでもなく、“新型コロナウイルス”の惨禍です。

 25日の火曜日の時点ではまるで予想できなかった、生活の変化が突然に発生しましたね。


  一、大規模イベントの中止もしくは延期の要請。

  二、全国規模の一斉休校の要請。


 いずれも青天の霹靂的な、政府からのやぶから棒な“要請”であり、しかも事実上拒否不能なほどの強制感をともなう“二つの決断”。


 しかしながら……


 あまりにも唐突でした。

 下準備も予告も根回しもない、突発的なトップダウン……だったようです。


 そこが、不思議です。

 いや確かに、新型コロナウイルスの蔓延を防ぐために、必要な施策であることはわかります。

 筆者も、反対する気は毛頭ございません。施策そのものには大賛成です。


 しかしそれでも、腑に落ちないのは……

 だってこんなこと、最初の最初から、いや国内感染が始まる前から、わかり切っていたことではありませんか。

 新型コロナでなく、従来型のインフルエンザであったとしても、地域的に流行すれば大規模イベントは開催できなくなり、休校だって当然あり得ます。

 それが局地的か全国的かという差はあるものの、毎年普通に“起こり得る”ことが想定される事態なのです。


 それならいくら何でも、事前に予測して、マニュアルくらい整備されていていいでしょう。

 いざという場合の支援体制や制度の整備などが、事前に手当てされていて当然ではないでしょうか。

 急遽イベントを中止した場合の責任の所在、主催者の損失に対する方策。

 長期休校に際して、生徒の学習補填をどうするのか、入学試験や卒業式、入学式等の対応手順。とくに卒業単位の扱いなどは、全国一律の厳格な基準が無くてはならないはず。


 それらがどうも、現場のビックリ仰天ぶりが伝わるばかりで、「承知しました、お任せ下さい」といった反応が見えてきません。

 本来そうあるべき省庁の関係者が「走りながら考える」という声がTVのニュースバラエティで連呼される始末です。


 いや別に、現政権を非難するつもりは毛頭ありません。


 ただ「唐突にして準備不足」なのは、本当だったようだ……

 と、ご推察申し上げる次第です。


 どうやら、本当に、直前まで何も準備されてなかったようですね。

 英断は英断でしょうが、国内感染が始まると仮定すれば、誰だって予想できた事態です。

 そのためにAIだかビッグデータなるものが活用されている……と認識していたのですが。

 WHО(世界保健機関)がホームページ等で中国における感染拡大の警告アナウンスを発表したのは、一月五日のことです。

 遅くとも二か月前から、それなりに準備に着手できたであろうことは、想像がつきますね。


 それが、無かったと言うならば……


 “なぜ、今、唐突に、これら二点の決断がなされねばならなかったのか?”


 素朴に、この疑問が湧いてきます。

 国民のため、学生や子供たちの生命の安全を思って、平時から想定し準備されてきたうえでの決断ならば、文字通りの英断と言えるでしょう。


 だがどうも、そのような準備はされてなかったように感じられます。

 いやもちろん、決断が間違いとは申しません。

 先に述べましたように、決断そのものには大賛成です。


 ただ、素朴な疑問はぬぐえません。

 準備なき、いきなりの決断は、その直前まで“決断するつもりはなかった”ことを意味しているのですから……

 気になりますね。


 “これら二点の決断を断行した、本当の理由って何だろう?”


 考えてみましょう。


 物事を客観化・単純化するために、この国にほぼそっくりで、ほぼ同じ状況に置かれた、パラレルワールドの異世界国家、“N国”を設定してみます。


 N国は今、海外から上陸した新型コロナウイルスの脅威にさらされています。

 国内の感染者はじわじわと広がっているはずなのですが、患者を特定するPCR検査を“しない、させない”と考えている人たちがいるようで、患者数も重篤者数も、死亡者数も、正確なところはてんでつかめません。

 検査される個体数が絶対的に少なく、検査から漏れた重篤者が通常の肺炎など他の病名で亡くなられても、それが新型ウイルスの仕業なのか、わからないのです。

 味方の損害がわからず、敵の戦力もわからず……ですね。

 いわば、“敵を知らず、己を知らず”という状態。

 太平洋戦争末期の、じり貧の日本軍みたいです。

 そんな状態で的確な対抗策を打てるのか?

 そんな疑問も湧いてくるのですが、ここでは横へ置いておきましょう。


 ここでの課題は、“大規模イベントの中止・延期、そして全国規模の休校を決断した、本当の理由は何なのか”です。


 さてN国は今、大きなお荷物……失礼、大事業を抱えています。

 “TKオリンピック”。まさに国際的な一大イベントです。

 そこに、“新型コロナウイルス”という、国際的な疫病神が襲い掛かりました。

 いわば“目に見えない怪獣”です。

 しかし困ったことに“シンゴジ”みたいな優秀で献身的な対策チームは、望むべくもなかったようです。なにしろ準備が無かったのですから。

 N国政府の前に、巨大な難問が立ちふさがります。


 オリンピック開催予定の7月までに、いや、開催の可否を判断できるとされる5月までに、いかにして新型コロナウイルスを殲滅するのか。

 ここに汎用人型決戦兵器があるならば、エヴァの手も借りたいくらいの難問です。


 今、N国はあらゆる手段を使って、TKオリンピックを開催に持ち込むために、新型コロナウイルスという“不可視の怪獣”と戦う……という、リアルゲームに挑んでいるところです。


 そこで、このゲームのルールを支配する国際的なプレイヤーが、ふたつ登場します。

 ひとつはIОC、国際オリンピック委員会。

 もう一つはWHО、世界保健機関。

 どちらもラスボス並みのパワーを持っています。

 N国政府の“新型コロナウイルス殲滅作戦”は、この二つの国際組織に、常に影響されています。

 ネルフに対するゼーレみたいなものですか。

 この二つの国際組織には、一切逆らえない関係なのです。


 しかし筆者は全くの素人ゆえ、この“二月の五日間”に、IОCとWHОとN国政府の間に、どのようなやりとりがあったのか、知ることはできません。

 そこで、ネットニュースにみられる範囲から、つらつらと想像してみることにしましょう。



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