第5話 分水嶺の男(2)

「日本では『窮鳥きゅうちょうふところに入れば猟師も殺さず』というのだろう」

 神美シェンメイが亮一りょういちに言う。

「知らん!」

 亮一は吐き捨てるように言う。

「なんだ。『太平記』は読まんのか。学のない男だ」

 神美は唇を歪ませる。

「日本人は太平記なんて読んでない。読むのはマンガだけだ」

「しばらく見ぬ間に落ちたものよな、この国も。まあいい。とにかくこの男を殺せ!」

 神美は言い、亮一の顔をじっと見た。

 半ばゾンビになった分水嶺の男は目の前の男女が拳銃を持っていることに気づき、逃げ出そうとする。

「お、お助け! たすけ、て、て…」

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Islands of the dead プラウダ・クレムニク @shirakawa-yofune

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